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リンカーネーション  作者: 鹿十
第二章 ダンジョン編
33/197

仲間割れ

(そうか、これはRPGだ。RPG形式のゲームだ)


 と思考の末、陽太は正解を導く。

 陽太の視線の意味を察したスーツの男――須田は


「おや、そこにいる黒髪の少年は何かに気づいたようだね。その見た目、君も私と同じだな。この世界で、同郷の者と出会えるとは、感激だね」

 

 敵である須田からの好意とも取れる発言を聞き、仲間たちがざわめいた。

 仲間たちの視線が陽太に集中する。

 シグルドは声を若干荒げて


「やはり、陽太。貴様は敵かッ」

「違うッ。取りあえず皆、俺の言うことを聞いてくれ」


 陽太は必死に弁明するがシグルドは話を聞かず、鬼気迫った顔で問答をする。


「今更貴様の言う言葉を素直に聞くと思うか、陽太ッ」


 シグルドは怒りに駆られ、陽太に近づいた。

 が、二歩目の足を出した瞬間、定位置に戻される。

 どうやら、仲間同士の意味の無い接触も不可能であるようだ。


「ッ……陽太、貴様ッ」


 下唇を噛んで、陽太を睨むシグルド。

 アマルネもスノトラも同じように、口には出さないが陽太に疑惑の目をぶつけている。


「仲間割れでターンを潰すとは、全く、つまらないプレイヤーだな」


〔ターン変更 ボスサイド〕


 空間内にアナウンスのような機械的な女性の声音が再び、鳴り響く。そして須田は


「フレアでガルム=ノストラードを攻撃」


 須田の宣言通り、虚空からサッカーボール程度の火球が生成、ガルムに向かって飛ぶ。

 ガルムは己の身体能力で、その火球を回避。

 したはずだったが、確かに避けたはずであるのに、彼の体表にはフレアが直撃した火傷が発生する。


「アッツ。ンだよ、避けただろうがッ」


 ガルムは胸に負った火傷を摩りながら叫んだ。


「目に見えている攻撃は、ただの演出さ。ガルム君が避けようと、絶対に命中する」


 須田は解説を付け加えるように言った。


「おそらく、特別な式具を用いた攻撃だ。陽太とあの男、二人で術を展開し、結界を構築しているのだろう」


 シグルドは見当外れの推測を述べた。

 確実に陽太を敵と判断しているようである。


「だから俺は敵じゃ無いって。いいから取りあえず、俺の言うことを聞いてくれ。多分、この空間はRPGみてーn」


 しかし陽太が喋り切る合間も与えず、彼の言葉を遮断するようにシグルドは


「黙れ、これ以上喋るな、陽太。やはり魔の者とつるみ、特殊な式具を用いて外界樹素を操り、我らを罠に陥れようとしたのであろう?」と言い放った。


 シグルドは一向に陽太の言うことを信じておらず、アマルネとスノトラさえも陽太を疑い始めている。

 仲間割れは絶望的だ。

 ただでさえ窮地に陥っているのに、ここで、仲間内で言い争いをして内輪で揉めていれば、確実に陽太たちは死ぬ。


 しかし、陽太には弁解となる良い言い分が思いつかなかった。

 傍から見れば、陽太は体内樹素が皆無な異形の者。術式も持たずに、上級魔種イフリートであるフレンを手で殴りつけ倒したという、あり得ぬほら話をでっちあげる嘘つきだ。


 陽太が焦っていると、右隣りにいたフレンが、わざとらしく大きなため息を吐いて


「ねえ、シグルド。アンタ、自分のお仲間すらも信じられないような男なの? アンタみたいな器の小さな人間が英雄だなんて、人間も堕ちたもの、ね」

「なんだと」

「第一さ、本当に陽太が裏の黒幕で、あの変な格好をした男とお仲間だとしたら、こんな回りくどい行為をしなくても、アタシたちを簡単に殺せるでしょ?」

魔種イフリートの言葉を聞く必要はない」


 シグルドはフレンと会話を断絶するような視線を見せた。その冷たい非協力的な態度が、フレンの逆鱗に触れたらしく


「アンタね、陽太の顔を見て何か気づかないのだとしたら、英雄失格ね。アンタは、アタシに向かって『人間の愛や崇高な信念がどうたらこうたら』とか述べていたけどさ。アタシの方がアンタより、人間の感情の機微を理解しているわ、英雄って偉そうで口だけなのね」

「もう一度言ってみろ、魔族」シグルドは耐えきれず噛みついた。

「シグルドさん、今はいい。取りあえずここから抜け出す方法を」


 アマルネもシグルドを宥めるように言う。が、フレンは大声を出して


「黙りなさい、糸目。アンタは黙っていろ」


 アマルネはフレンの圧に圧され何も言わず無言で押し黙る。


「はあ、あのね、アンタたち、馬鹿なの? 陽太がそんな器用な人間に見える? 騙して口裏合わせて、あの男のお仲間として裏で繋がり、そんでアタシたちをハメて殺そうとしていると? 笑わせないで頂戴、アンタら、陽太がアタシを倒す前、こいつが何をしていたか想像できる?」

 皆、フレンを見つめ押し黙る。彼女は何も気にせず、思っていたことを率直にぶちまけた。

「アタシはこいつに『逃げてもいいよ』って助け船を出してあげたの。戦っていてもつまらなそうだしったしね。だけどこいつは、瀕死状態のガルムやスノトラを見て、『ふざけるな』と言い放ち、アタシに歯向かってきたのよ? 何も能力を持たない、ヨータが、よ」


 シグルドたちは思い直すようにハッとした顔をする。


「私を倒すときもそうよ。アタシをそのまま無言で殺せばよかったじゃない。だけどこいつは、お節介に、アタシにアドバイスと説教をかましてきたワケ。見当はずれの、ね。そんなバカみたいな男が、本当にアンタたちを裏切ってやろうと画策していると思っているの?」


「……」シグルドは黙った。


「だとしたら、ニンゲンって本当に劣等種ね。大した根拠も無く仲間に罪を被せようとしているのだから。英雄様は愚直な人間を切り捨てるような人柄をしているのね、呆れた。いいんじゃない? このままヨータを信じず仲間割れして死ぬのも。愚かな人間らしくてとても笑えるわ」


 シグルドは小さく歯ぎしりをした後、鞘から手を離し、陽太と目を反らす。

 そして


「……悪かった、陽太。失言だった。君は悪くない」と小さな声で謝罪をした。


 陽太は、少し笑いながら、横にいるフレンに向かって


「ありがとな、フレン」と顔を合わせず感謝を述べる。

「……アタシをシグルドから庇ったときの貸しよ、貸されたままなのは性に合わないわ」と目を合わせずに、腕組をしながらそっぽを向いてフレンは言い放った。


 


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