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リンカーネーション  作者: 鹿十
第二章 ダンジョン編
32/197

根源の異なる力

【都内、某所。一人の少女の遺体が、街並み外れた田舎の山々から発見されたことから事件は始まる】


【死因は不明。時間経過による死体の腐敗は幾らか見受けられたものの、被害者となった少女には目立った外傷が確認できない。行政解剖による調査が行われたが、その死因は謎に包まれたまま終わる。解剖を担当した法医学医数名は、「今すぐ彼女が立ち上がって動き出してもおかしくない」という謎の発言を残した。呼吸・脈拍・瞳孔、どの点を取っても全くの正常。極めて異質な変死体だった】


【検察は他殺と推測し、調査を進める。事故現場に残されていた私物や指紋から都内に住む三十一歳の会社員――須田正義が犯人候補の筆頭として挙げられた】


【彼の自宅や勤務先に警察が訪れたが、彼は見つからない。犯行に及んだ後、どこかに雲隠れをしたのだろうと、海外渡航歴を調べ、実家や地元周辺、都内の目ぼしい場所を詮索し続けた。しかし彼は一向に発見されなかった。彼の最後の目撃情報は、■■月■日、遺体が見つかった山に続く山道上にあるコンビニの監視カメラに写り込んだ須田らしき男の姿が一つ。背格好や立ち振る舞いから、検察はその人物を須田と断定。その後は、車は山に向けて走らせている映像が映るのみで、周辺の監視カメラや地域住民の目では、須田の姿は確認できなかった】


【監視カメラに写り込んだ■■月■日から、須田は一切の消息を絶っている】


【犯行現場には、構成材料が不明な大量の古紙と、千切られた彼岸花の花びらがばら撒かれており、警察は彼に指名手配をかけ、須田に関する手がかりと行方を現在も追っている】



 陽太は、酷く混沌無形な、現実味の薄い奇妙な感覚に囚われた。

 大気中から酸素がごっそり抜け落ちるような。何か決定的な因子が崩れて消えさり、この世の万物を構成しうる絶対的なエネルギーが消え失せた感覚だ。


 得体のしれない空虚感に包まれたのと同時に、彼らの周りの空間は光を灯されていく。

 一部屋ほどの大きさしかなかった終座領域内は、光に包まれて生き、何も描かれていないキャンパスみたいに、真っ白で広大な空間へと変化していった。


 周りを確認すると、陽太の右側にはフレンが、左側にはスノトラがいる。

 シグルド、アマルネ、ガルム、スノトラ、俺、フレンの順で、綺麗に横並びしていた。

 反対側には、一人、ポケットに手を突っ込んで佇むスーツ姿の男がいる。


「今回は、俺が『ボス』か、ついてないな」


 彼はあまり喜ばしくない、といった様子で呟いた。


 シグルドは未知の攻撃を受け、スーツ姿の男の危険性を見誤っていたことに反省する。

 が、人類最強の英雄は、すぐさま反省を止め、現状を俯瞰し、再び彼に攻撃を加えようと


〔『式』系統は闘素。器は『剣』――居合:神速 肆重奏カルテット


 瞬く間に跳躍し、凄まじい速度で、向こう側にいるスーツの男に斬りかかる。

 が、彼の刃がスーツの男の喉元を切りつけようとした瞬間、シグルドの位置は元の場所に戻される。

 瞬間移動だろうか。

 シグルドが意図して放った術式の効果ではなく、スーツ男が発動した謎の力、いやこの空間自体に作用している不思議な力場による効力だろう。


「いきなり切りつけてくる奴がいるか、ちゃんとコマンド指定を受けた後に動かなければ、それは実行されない。この空間はそうゆうルール・・で動いている」


〔プレイヤーサイドのターンです〕


 突然、無機質な機械音が空間内を反響する。


「ルール?」シグルドは聞き返す。

「ゲームをプレイしたことが無いか、君たちは。そりゃそうか、こちらの世界に、電子ゲームなんてものは存在しえないだろうし、当たり前だな」

「電子……ゲーム……?」


 聞き馴染のある単語だ。

 しかし、それは異世界には存在しないもの。

 陽太の世界――現実世界に存在する遊戯玩具を指し示す単語だ。


 考える陽太とは対照的に、ガルムもシグルドに次いでその場から動き、剣と爪の刃を振るう。

 が、先ほどと同様に、スーツ男に到達する前に、元の定位置に戻されてしまう。


「ンだこれッ」


 短気で落ち着きの無いガルムは二度目の強襲を行う。

 が、結果は寸分変わらず、定位置に戻され、再び陽太たちと横並びになるのみ。

 どうしてもスーツ男に接触できない。


 横で何もせず、親指の爪を噛みながら、険しい表情で傍観しているフレンに、陽太は冷や汗をかきながら問う。


「なあ、フレン。お前が前戦った時も『こう』だったのか?」

「……うん。一緒。一切こちらから動けず、近づこうとすると、元の居場所に戻っているのよ」


 陽太は疑惑を確信に変えた。


(ゲーム、スーツ姿。確定だ、こいつは俺と同じ現実世界の人間……つまり異世界転移者だ。フレンやスノトラが何も出来ていない所から推測するに、この正体不明の力は、術式によるものではなく、もっと別な異形の力だ。俺と同じで、こいつにはおそらく――)


 ルールが通用しない。


 異世界人なら当たり前に持つ内包樹素もゼロだろう。

 それが表す事実は、樹素という絶対的なエネルギー、万物の素となる必須要素から漏れている存在だということ。


(俺が自分より遥か格上のフレンを殴り倒せたように、こいつもこの異世界の因果や規則から外れている存在なんだ。故にこの力の動力源は樹素ではない、もっと別の何か、だ)


 焦りつつも、思考を続ける陽太。


(糞、何だ、この力は。意味が分からない……どうしたらいい? 一旦頭の中を整理しろ。動いて攻撃しようとしても元の定位置に戻される。しかしそれはスーツの男も同じだろう。あの男だけ俺たちに攻撃できるとしたら、もう俺たちを殺しているはずだ)


 ふと、陽太の頭の中に、スーツの男が語った「ゲーム」という言葉が反芻された。


(互いに不可侵。自由行動は不可。攻撃はターン制……?)


 そして陽太は何かに気づいたように、顔を上げ、眼を向こう側にいるスーツの男に向け直し


(そうか、これはRPGだ。RPG形式のゲームだ)


 と回答を叩き出す

 陽太の瞳の輝きに当てられたスーツ姿の男は、なにかに気づいたように不気味な笑みを浮かべた。


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