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リンカーネーション  作者: 鹿十
最終章 帰還編
188/193

ラボ②

完結まで残り20数話くらい!!


〈指紋など生体認証デ、コロニー番号を指定してクダサイ〉


 ドローンとやらに搭載されているスピーカーからは、いかにも人口音声らしい声が鳴る。


「コロニー番号?」


 聞き慣れない言葉を思わず聞き返す僕。


〈検索機能を用イル場合は 「検索したい任意の単語」+「検索」 と言ってくだサイ〉


 僕の問いかけに答えるドローン。

 僕はわざとらしく咳払いをしてから


「『コロニー番号』検索」


 と恐る恐る声を出す。

 ピッという機械音が鳴ると内部で演算処理する機械音が聞こえ

 ドローンのレンズから光が照射され、その光が空間上に平面型の液晶となって現れる。

 よくSF映画などで見る超技術だ。


 そこには大きなドーム型の建物が映し出されていた。


〈『コロニー番号』トハ、WWⅢ終結後に都市群を失った人々が集い生活するために作られた『コロニー』その登録番号いわば戸籍である。『コロニー』で生活を営む人類は例外なくこの番号を割り振られて管理されてイル。不法移民ではナイことを証明するために自身のコロニー番号を生体認証で指定してクダサい〉


「……」


 よく分からないが、この超技術は僕の暮らす現実世界にはまだ存在しないものだ。

 そして僕は樂具同の件から「異世界転移の瞬間、時間軸がずれる」可能性を知っていた。

 つまり、この「ドローン」とやらは、僕が生まれる更に未来の時間に生み出されたもの。


 どうやら未来の人間は「コロニー」と呼ばれる場所に集まって暮らしているようだ。

 ということは、この「ドローン」の所有者である大月は、どうやら未来人だったらしい。


「コロニー番号とやらは僕に割り振られてない。僕はもっと過去から来た人間だ」


〈――了解しまシタ。以後、アナタをゲストとして登録。ゲストモードで利用できマス。ようこそゲスト様〉


 話しが通じたみたいだ。

 

「早速、起きたばかりで悪いんだけど、現実世界に戻るための方法を教えてほしい」


〈異界→物質界への転移。アモル機構のデータを参照しマス――記録庫カラ参考文献特定。時間軸の指定のタメ「アンカー」が必須。ゲスト様のいた年代に向け「アンカー」を射出し指定、指向性ナノマシンを通じて因果律を操作、彼岸花の媒質にシテ境界門を開き転移を行ってくだサイ。なお、成功率は68%。ゲスト様の身に危険が及ぶ可能性がありますノデ、専門機関の補助無しでの転移はおすすめ出来マセン〉


「いいんだ。それより『アンカー』ってなんだ?」


〈位相移動の場合、時間軸と空間の指定のために対象の時空を指定する必要がアリマス。そのために『アンカー』を使用しマス。これは指向性ナノマシン3世代目以降(2064年性以降)ならば本体にあらかじめ組み込まれてイマス。それ以前の世代ではバージョンアップの必要がアリマスが、異界では電波を受信できないタメ、バージョンアップが不可能であり、転移は出来マセン。ゲスト様に配布された『ナノマシン』のデバイス環境をご確認くだサイ〉


「取り敢えず、ナノマシンとやらを探せってことか」


 確か拳銃型の注入器みたいなやつだったよな。

 そう思って探すこと10分、棚と棚の間に落っこちているのを発見。

 埃をはたき、確認する。

 確かに銃の部分が注射器のようなものになっている、引き金を引くと内部のナノマシン? とやらが注入されるという要領だろう。


〈ナノマシン注入器を額に当てたまま引き金を引くか、又は鼻の中にノズルを入れ噴射してくだサイ。数分でナノマシンが大脳へと行き着きマス〉


「分かったけど、これ……脳に異物を注入するわけだよな? 大丈夫なのか? 頭がおかしくなったりとか……」


〈そのナノマシンは第四世代のものデス。改良型なので心配はアリマセン。止血剤や鎮静剤も入っていますカラ、ただ麻酔無しでの注入は激痛を伴いマス。適合すれば痛みは消えるので問題アリマセン〉


「激痛??!! 問題ありだろ!!」


 ドローンとやらは黙り込む。

 どうやら激痛は免れないらしい。

 まあでもこれ以外方法は無いだろうし……。


 僕は深呼吸して覚悟を決めると鼻の奥にノズルの先を突っ込み、勢いよく引き金を引いた。

 瞬間、何かもぞもぞとした……まるでクモみたいな小さな生物が鼻の上を登っていく気持ちの悪い感触と、鼻の中に大量の水を入れてしまったかのような痛みに悶える。


「いっ! いてえええええええええええ……ああああああああああ」


 数分頭を抱えて苦しむと、次第に違和感や痛みが引いていった。

 額の内側が何かモゾモゾと動く奇妙な感覚だけが残る。


〈適合を確認シマシタ〉


「それは良かったけど……さ……このナノマシンを入れる意味はなんだよ」


〈ナノマシンを媒介することで「因果律の操作」「樹素の行使」が可能になりマス。ただ「因果律操作」のためには特殊なプログラムの導入が必要でアリ、こちらは権限上位者のみしかアクセス出来マセン〉


〈ただこれにてゲスト様の転移準備が完了しました。あとは『彼岸花』が必要です。異界の中心部に群生している箇所を発見、座標を送りますか?〉


「いいや、いい、彼岸花の方は目星がついてる。わざわざ探しに行く必要はないよ」


〈そうでスカ。では最も近い時期ではあと2ヶ月後、異界に『空間の裂け目』が出現しマス。その日が転移実行の日としてスケジュールに登録してよろしいデショウカ?〉


「今から2ヶ月後……か、ちなみにその次の機会はいつだ?」


〈暦による計算によると、その機会を逃すト次の機会は7年後になりマス〉


「7年後?! 随分と先だな…………じゃあ、2ヶ月後のその日でいいよ」


〈分かりマシタ。2ヶ月後を転移実行日にシマショウ。それまでに健康的な生活を維持しまショウ。ハードランニングスケジュールがおすすめです。こちらを日課としてセットしまスカ?〉


「いや、……いいよ……2ヶ月間は自分で過ごすことにする」


〈了解致しマシタ〉


「それより……検索機能を使えば、君は何でも教えてくれるのか?」


〈上位者権限が必要な情報以外ナラバ〉


「じゃあ色々と聞きたいことがあるんだ、少し話しに付き合ってくれないかな?」


 そう僕は色々聞きたいことがあったんだ。

 吟遊詩神ブラキの言っていた、僕の時代の更に「未来」に起きたことについて――。





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