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リンカーネーション  作者: 鹿十
最終章 帰還編
183/193

新たなる脅威

最終章にやっと到達出来ました。

ここまで見てくださった方には感謝しかありません!

泣いても転んでもこの章で物語は終わり!!

ちゃんとエタらないよう頑張ります。


【S解シリーズ】


【Schwarzschild solution mechanismを利用して作り出された兵器群を指す、一般には、これを略してS解シリーズと呼ばれる】


【21世紀後半の第三次世界大戦にて実践投入された大量殺戮兵器である】


【特殊な重力場を発生させ対象を押しつぶすことで破壊する。核兵器とは異なり被爆汚染の可能性が無く、かつ核兵器のような莫大な維持費もかからずに、核兵器よりも威力が高い兵器として、WWⅢ下では先進国を中心に戦争を有利に進めるための最終兵器として重宝された】


【WWⅢ後の22世紀では、地上に取り残された少数の民族間の紛争や、21世紀の大戦を経て、巨大複合組織ビッグコロニーの元で一つに纏まり生活を始めた人類に対しても使用されていた】


【そのためWWⅢの終結後の22世紀の後半に人類の科学体系は完全に喪失されるほどの、壊滅的な被害を受け人類は滅びている】


【人類を絶滅に追いやった最大の原因は、WWⅢの開戦のきっかけとなった『寄生樹』ではなく、その大戦のために人類の手により作り出された『S解シリーズ』という兵器であったことは皮肉な話である】


【この『S解兵器群』の核となっているのは『S解機関』と呼ばれる樹素での重力子の再現、その研究結果を元に作り出された特殊な機関であり、その開発者は『知の箱庭』計画に携わった第一人者『竜崎・R・ウィズダムシーカー』氏であるとされている】


【彼は晩年、『S解機関』を生み出した自責の念からか自室で首をつって自殺をした状態で発見された】



―ラグナロク確定の時から126421:24ー


 視界はいつになく澄み切っているように思える。

 我らの戦いが「ヴィーグリーズでの戦い」として受け継がれるようになって早1年と半年ほどが経過した。

 短い時間だったが、旧神たる13対の神と、新神たる「リーヴ=ジギタリス」が滅んでからこの異世界は大きな改革と変化を迫られていた。


 異世界の中心にそびえ立つ「世界樹」の大部分は燃えてしまい、炭化した枝と幹だけが残る。

 世界樹を取り囲む「不可侵領域」は神のいない今、どの種族でも立ち入り可能となり、「不可侵領域」内に建築されていた古代都市(陽太の言う所では、陽太が元暮らしていた世界の文明の残りらしい)には新たな魔物が住み着いている。


 4つの術式天体は原初ユミルの魂が安定化したことで必要性が無くなり、ラグナロク確定の瞬間と共に砕け散り、それら小さな球体が空で光るようになり、数々の星星の光で異世界の夜は照らされるようになった。

 空を包んだ不気味な赤色と不協和音――モンガータ現象というらしいのだが――は、ラグナロク確定時にもとに戻り、今では通常の青色の空に戻っている。


 陽太がラグナロクを確定し、世界樹を燃やしても尚、異世界は破壊されることなく存続していた。

 世界樹を燃やした影響で様々な場所に異常が頻繁したとはいえ、それでも残された八種族は懸命に日々を生きて世界を前進させている。

 

 陽太たちにもこの1年半で大きな変化があったのだが、それは長くなるので後の話にしよう。

 今は我の眼の前の仕事に注意を注がなくてはならない。


 ラグナロク確定後、どういうわけか我の力は更に飛躍的な上昇を遂げた。

 強敵であるリーヴとの死闘の経験が我を更に強くした、と自己理解しているが、だとしても自分が自分を恐ろしく思ってしまうほどに。


 少し驕り高ぶった言い方で悪いのだが、おそらく今の異世界において「我より強い者」は存在し得ないだろう。

 それは理屈ではなく、感覚的なものだった。

 尋常ならざる正体不明の力が我の奥底から湧き出て、謎の高揚感と興奮に包まれる。

 剣士としての仕事は人民を守ることなのだから、戦いに愉悦を見出すなどもっての他。

 そう自分を諌めてはいたが、それでも我が力は留まることをしらず、この力の限界を見てみたい――という薄汚い願望も自分の本心には眠っていることに嫌悪する。


 長くなったが、有り体にいえば、恐れている、自分自身を。

 そして同時に「龍殺し」である自分の止まることない力の源泉、それがいつ尽きぬのか、どこまで行くのか、試してみたい気持ちにも駆られているのだ。


 そして今日。

 やっとその機会が訪れた。

 不可侵領域内にて、ラグナロク確定の瞬間と共に滅びた「世界蛇」ヨルムンガンドの遺体を食い尽くし、この1年半で巨大なる力を手に入れた新たな怪物「空想種カテゴリーエラー」龍の超常生物「ニーズヘッグ」。

 その打倒を神使族から直々に命令されたのである。



 「龍殺し」を乗せた馬車は不可侵領域に辿り着くと止まり、中からはシグルドが出てくる。

 

「シグルド、限界が来たら我にも頼め。貴様一人ではおそらく無理だろうからな」


 馬車から降り、世界樹へ向かっていこうとするシグルドを後ろから呼び読めたのは、赤髪の「熾」剣士グリムヒルトだった。


「ああ、そうさせてもらうよ」


 シグルドは軽口を叩くようにそう言ってから、王家の刺繍が入ったマントをたなびかせ、腰には2つの剣を携帯して、先へと進んでいく。

 不可侵領域内部には獣の甲高い鳴き声のようなものが響いており、その発信源は他ならぬ討伐目的「ニーズヘッグ」のものである。

 世界樹が燃えて炭化した幹に身体を巻き付けて死んだ「世界蛇」ヨルムンガンドの遺体の殆どはもはや食い散らかされ、原形も残っていない。

 「龍殺し」と「ニーズヘッグ」の距離は数キロほど離れてはいたが、自分に敵意を向け迫ってくるシグルドの気配を感じ取り、「ニーズヘッグ」は戦闘態勢を取る。


 「ニーズヘッグ」は黄金龍「ファフニール」と並び「空想界」の食物連鎖の頂点に存在する古代龍。

 その「ニーズヘッグ」がラグナロク後、「世界蛇」ヨルムンガンドの遺体を食べたことで更に進化。

 今や神種と変わらない領域にまで成長してしまっている。

 この「ニーズヘッグ」の存在が邪魔して、世界樹付近や「神界」の探索が思うようにいかなかった。

 そのために、「ニーズヘッグ」の討伐として「龍殺し」シグルドが選ばれたわけである。


 開幕のコングは無く、強者と強者が相対した時点で自然に戦闘は開始された。

 

〔神器抜刀〕


 煌めく光と共に鞘から抜刀されたのは、霊剣リジル。

 引き出せる力は、1年半経過した今でも、八割の顕現。

 

〔朱〕


 シグルドが剣を空に向かって振るうと、その残像が光子となって空に固定され、凄まじい勢いでニーズヘッグ目掛けて射出される。

 斬撃の範囲を拡張することで生まれる零剣リジルの遠隔斬撃攻撃。

 三本の斬撃は空を伝い、数キロ先のニーズヘッグ本体にまで届く。


 だが斬撃がニーズヘッグに到達する前に、ニーズヘッグはその大きな肺に空気を溜め込み、喉の奥から光線を放ち、遠隔斬撃ごと大地を焼いた。

 

 ニーズヘッグは得意げになって喉をカラカラと鳴らし、数キロ先にいるシグルドを煽ってみせた。

 しかしニーズヘッグはここで気づく、先程まで感じていたシグルドの気配が無い。


「グゥッ!!」


 理解より先に痛みが来た。

 気づけば、自分の前足が切断され血を吹き出している。

 そこにいたのは「龍殺し」シグルドの冷徹な姿。


 先ほど放たれた遠隔斬撃はニーズヘッグへの攻撃を目的としたものではなく、シグルドがここまで接近するための時間稼ぎ・目眩ましだったことに、ニーズヘッグは気づいた。

 倒すべき敵は既に自身の懐に入っていたのだ。


 ニーズヘッグは切られていない方の前足の爪でシグルドに反撃しようとするも。


〔蒼〕


 未来予知で攻撃を予測できるシグルド相手には華麗に避けられてしまい、カウンターで空いた顔面に零剣リジルでの攻撃を喰らってしまう。


 そのままシグルドは間髪入れずに、まるでまな板に乗せた魚を捌くかのようにして、無駄のない動きでニーズヘッグを切り刻んでいく。

 十分に接近されてしまった今、ちょこまかと蝿のように自分の辺りを動くシグルド相手に、ニーズヘッグは翻弄されていた。

 だが――。

 傷口から血と共に噴出する謎の液体に触れ、優勢だったシグルドの動きは止まる。

 その液体に触れたシグルドの肌は、グリルで焼かれる肉のような熱された音を発しながら溶けていくのだ。


(これは強酸!! 『世界蛇』ヨルムンガンドと同じ!!)


 流れ出る酸は、ニーズヘッグの足下にある古代廃墟をも安安と溶かすほどに強力であった。

 辺り一面が溢れ出した酸でゆっくりと溶けていき、戦場自体が鉄板のような音を発する。


(損傷と共に体内の酸が爆発するように周りに弾ける……ニーズヘッグの攻撃を掻い潜りながら酸に当たらずして攻撃を加えるのはほぼ不可能だな)


 廃墟の上に立ち、ある程度距離を取り現状を分析するシグルドに向け、ニーズヘッグは己の身体から正体不明の何かを放つ。

 その正体はニーズヘッグ自体の「鱗」だった。

 「鱗」は意思を持つかのように動きながら、シグルドに迫り十分近づくと、酸を放ちながら爆発する。


「ッ……」


 そんな「鱗」が何千枚も、とめどなくシグルドを囲い襲った。

 いくら「蒼」により未来予知が可能でも、限度量を超えうる攻撃を喰らっては対処のしようがない。

 数分も経てば、防御や回避に綻びが生じ、その隙を狙われ、鱗から放たれる酸を顔面に浴びてしまった。

 ジュウ、と音を経てながらシグルドの顔面の皮が溶けていく。


「ぐ……」


 シグルドは歯を食いしばり酸の痛みに耐える。

 強引に右掌で目元についた酸を拭い取り、なんとか視界を確保すると――大量の鱗が眼前にあった。


(この鱗、無尽蔵か……尽きる気配がない。このままではニーズヘッグに接近も出来ずしてやられてしまう)


 シグルドが命の危機を感じている間、ニーズヘッグは喉の奥をゴロゴロと鳴らして、絶体絶命のシグルドを嘲笑ってみせた。


【救えなかった命のことを考えたことはある?】


 そんな窮地の最中、シグルドの頭の中にはアザミの言葉が反芻された。

 このままでは死ねない、そんな決意が固まると、シグルドの身体は不協和音を発しながら黒い稲妻を纏う。

 この姿は「ヴィーグリーズの間」でかつてリーヴ=ジギタリスと対決した時にも生じた現象。

 

 雷鳴と共に、シグルドの身体が再び覚醒する。











 



【本編にあまり関係ない話】

今回登場したS解兵器。

スノトラの重力術式と原理は同じです。


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