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リンカーネーション  作者: 鹿十
第五章 ラグナロク編
174/193

ヴィーグリーズ最終決戦⑫

最終話のためにタイトル変更しました。

読み方は変わらず「リンカーネーション」です。

 魂を乱す雷撃とミョルニルによる殴打。

 既にオーディンの神素は底をついた状態で、身体強化術も保護術式も纏えないリーヴ。

 かつ万能の治癒術式「幻想曲」の術を解いている状態のリーヴにとっては。

 その攻撃だけで、死する理由には十分であった。


 リーヴは白目を向いてバタリと倒れる。

 やけにあっけない終わり方を見て、陽太は思わず唖然とした。

 だが――その数秒後。


「!!」


 リーヴの死体が灰状に砕け散り、焦げた紙のように宙を舞い分解されると。

 自己世界領域の中心に円形の魔術陣が出現。

 ガコンと、歯車のように回転した後。

 無傷のままのリーヴが再び出現した。


 復活したリーヴは首もとに手をおきながら、首を回した後。

 何食わぬ素振りで


「ふん……少々見くびったか。貴様のような凡夫ごときに一度でも殺されるとは。『至上』の神器まで装備しているとは思わなかったな」


 と当たり前のように呟く。


 陽太は一瞬で異変を感じ取り、思わず後退。

 リーヴの自己世界領域から脱出するため距離をって観察した。


(今のは……死からの復活?! 死体が『黒灰化』した後、一瞬で無傷のリーヴが再構築された?! そんな馬鹿な……あれは……まるで……)


 陽太はリーヴの復活の種について覚えがあった。

 そう、それは、「ヴィーグリーズの間」に突入する前に大月桂樹から聞いた――巫女ヴォルヴァに絡まった「死の螺旋」。


「……復活の巫術……」


 陽太は思わず呟く。

 と、リーヴがその独り言に反応して見せる。


「ほう、知っているのか。巫女の魂だけが行使可能な輪廻転生術『回旋曲リンカーネーション』。魂を呪縛し永遠に生き続けるための術」

「それを何故、リ―ヴ、お前が使える?!」

「ふん、少し考えれば分かることだろう? 我は今、巫女ヴォルヴァの魂を保有しているからな。実質、我自身が巫女の権能を受け継いでいるといっても過言ではない。そして我が持つこの『レーク碑石』を活用することで、巫女の巫術を完全に再現した。つまり今の我は殺されてもその度に復活するということだ。分かるか? 完全なイタチごっこだな。貴様がいくら努力して研鑽を積み強くなろうと、我が復活してしまうのならば意味のないことだな」


 リーヴはここで嘘の情報を交えることで、陽太の動揺を誘う。

 だが陽太はリーヴの能力を注意深く観察することで、その弱点を看破していた。


(殺されても復活するから無敵? そんなはずはないだろ。リーヴ、お前は巫術を使用出来ていると言ったが、それは間違いだ。正しく言うならば“『根源の異なる力』を用いて巫術を再現している”に過ぎない。リーヴの使用する術は全て『根源の異なる力』を基盤にして作動している。だからこそ、リーヴの『根源の異なる力』さえ使用不可能になってしまえば、巫術の輪廻転生術も解除されるはず!)


 陽太の推論は的中している。

 リーヴは神術を除き、自身で術を発動しているわけではなく、『根源の異なる力』の能力として術式を作動させているに過ぎない。

 そのため『根源の異なる力』さえ解除できれば――無限復活も解ける。


(そのために考えられる方法は2つ…①『魂』属性の術を浴びせ巫女の魂を取り出し奪うこと。『根源の異なる力』は魂が2つ以上ないと機能しないから、巫女の魂を奪えれば力が崩壊するに違いない。そして2つ目の方法は、②神器『ミョルニル』を使い、自己世界領域の結界全てを破壊尽くすこと!!)


 陽太は自分がすべきことを直感。

 すると戦闘態勢に入る。


〔『式』系統は魔素――奔雷アルゲース・テヌート〕


 なんと陽太は。

 原形術式「奔雷アルゲース」に付与記号を入れ発動。

 陽太の身体には雷撃が纏う。

 電撃を纏い、神器「ミョルニル」を片手に持つその姿はまるで――『雷帝』トールのよう。


(……『原形術式』を付与記号で発動。それも『外界樹素』のみで、だ。そんな芸当が出来る魔術師は……王家直属の魔術師集団の中でも……片手で数えられるほどもいない……明らかに……)


 陽太は雷撃を身にまとうことで、更に拘束で移動。

 右手の「打我の篭手」の右拳でリーヴの顔面を叩き、よろけた隙に。

 左手に持っていた「ミョルニル」で自己世界領域の結界を砕く。


 リーヴは陽太の狙い、神器「ミョルニル」による結界の破壊に直ぐ様気付くと。

 再び結界の仕様を変更。結界を格子状に分割


〔『ウッド』〕

  

 属性を拡張させ再現した『木』属性での攻撃を発動。

 分割された結界から無数の鋭い木が出現し、まるで生きているかのようにうねりながら高速で陽太に接近。

 陽太は迫りくる木々の何本かは「ミョルニル」で打ち砕いたものの。

 その物量に対応しきれず、両肩や右腕、左足、背中などを木の先端で貫かれ、その場に固定された。


「うッ」


 そして陽太が動けなくなった隙に。

 陽太の足元に結界を移動させ


聖譚曲オラトリオ


 浄化の術式で陽太を焼き切ろうとした。

 結界から光の柱が出現、内部にいる陽太は熱量で焦がされ、強い浄化作用を食らう。

 だが陽太は必死にミョルニルを振り回すことで木々の拘束を解き、足下の結界を殴打。

 自己世界領域が破壊されるとともに「聖譚曲オラトリオ」の術が解除される、が。


 光の柱の向こう側から、見えた陽太の姿は既に重症だった。

 陽太が編み出した「土」属性と治癒術式の合わせ技による肉体の再生方法も、既に追い付かず。

 身体は長い戦闘を受け、既にボロボロになっている。


(立花陽太は、明らかに術師として成長している。それは認めよう。だがその身体では……)


 リーヴは心の中で陽太を観察した。


【立花陽太の術師としての素質は高い】


【まず『外界樹素』を身体に取り入れ、それのみで術を編纂する時点で、並の術師ではかなり手こずる。『外界樹素』は『内包樹素』に比べ取り扱いが悪く、想定通り作動しないからである】


【その『外界樹素』のみで『原形術式』に付与記号を付けて発動している、今の立花陽太は、術師として以前よりも数倍も数十倍も成長していることは明らか】


【その驚異的な成長速度は『ナンナ』や『アマルネ』『フレン』『スノトラ』といった優秀な術者が傍にいたことも要因として大きいだろう】


「何度、私を殺した所で、意味がない……それなのに、なぜ……」


 リーヴは心の中で謎の違和感を感じ取っていた。

 眼の前の凡夫に過ぎない異世界転移者如きが、なぜこれまで自身の心を乱すのか。

 似たような苛立ちを、過去に感じたことがあった。


(そんな経験はない……)


 だが、リーヴの記憶の範疇にはそのような体験は回目見当たらない。

 しかし、記憶の奥底で何かが輝いている。

 その「何か」をリーヴは手当たりで掻き出す。

 違和感の正体を突き止めるために――。


(これは……我の記憶ではない?! ……そうか、『枢軸主』の……!! 受肉した『枢軸主』オーディンの記憶かッ!!)


 ガルム=ノストラードの正体が転生した「フェンリル」であることに本能で瞬時に気づけたのは。

 リーヴが受肉したオーディンの神素や記憶が、ガルムに反応をしていたからだった。

 

(つまり……我の内部に微かに残るオーディンの記憶が……こいつを……立花陽太を危険視しているというのか? だからこそ……我は立花陽太を殺す一歩を踏み込めないと……?)


 自分が転移者モドキの立花陽太に恐怖している――その事実が受け止められないリーヴ。

 だが、重なる。

 重なる、重なる、陽太の姿がぼやけ、重なる。

 かつて樹界大戦時代、異世界を混沌に陥れた、名もなき門兵……。

 金髪の少年、「勇者」の肩書を持った、あの男と。

 そしてリーヴは一瞬で理解する。

 この立花陽太に対する謎の恐怖感情、その正体を。


「まさか、貴様……『ヘグニ=ウォード』の……()()()()()なのか?」


 リーヴの熟考のうえ、不意に口から飛び出た一言は。

 発言者であるリーヴすらも驚かせる内容であった。




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