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リンカーネーション  作者: 鹿十
第五章 ラグナロク編
172/193

ヴィーグリーズ最終決戦⑩

●修正

リーヴの「根源の異なる力」の展開面積は半径三十m→☓

展開面積は半径五十m→◯


「馬鹿なッ!」


 血潮が舞う中、リーヴは困惑していた。

 

(龍『殺し』が完全に消滅したッ?! その後現れた際には既に我の体は切り裂かれていたッ! 速度が早かったわけではないッ! 舞曲ジークの術を食らってないことから、正真正銘、時空を超えていたッ! 今のは……虚数領域への侵入かッ!)


 魂を持つ者のみの、個々個人のパーソナリティスペースに有する「虚数領域」。

 それは此岸、彼岸、異世界の三世界を渡る橋となる場所。

 魂を持つはずのないシグルドがその領域に至れたことへの疑問よりも、リーヴは今自分が置かれた絶望的な状況を俯瞰する。


 肩から脇にかけての強烈な一撃、大きな深手。

 シグルドがついに完成させた「因果を逸脱した一閃」は。

 シグルドの体と同様に「負の因果律」即ち「カルマ」を宿しており。

 合奏術式であっても治癒することが不可能だった。


 体が崩れ、よろけ、その場に倒れる最中。

 リーヴはぐっと膝に力を込め、すんでの所で体勢を維持する。

 

 その様子を見てシグルドは、我らの勝ちだ、と。

 そう宣告しようとした時、シグルドは己の過ちに気付く。

 眼の前の敵、リーヴの執念と勝利への異様とも捉えられる固執に。

 その怨念に、気づいていなかったのだと。


〔――魔眼〕


 顔面を包み込んでいた左手の平、その人差し指と中指の隙間から、リーヴの目が薄気味悪く発光した時には既に、シグルドの体は完全に硬直していた。


(なッ……これはメデューサのッ!!)


 原生魔獣ゴルゴンの特異体質「魔眼」。

 その術式を再現した光が、シグルドの体の自由を一時的に奪う。

 相手は系譜とはいえ既に治癒不可な致命傷を負っている身。

 そのため反撃はしてこないと高を括っていたシグルドは、魔眼の直撃を食らう。


 シグルドはすぐさま体内で対立術式を編纂し、硬化を解除しようとした。

 一度受けた術であるため編纂は容易、それにゴルゴンの魔眼は即効性は恐ろしいものの、その石化能力はそこまで高くない。

 そのため2秒もかからず石化は解けるが――。

 その2秒の石化状態という完全無防備時間は、リーヴを相手にする前では致命的な敗因となる。


 リーヴは2秒の間で己の周囲に展開していた自己世界領域の全てをシグルドの元へ移動。

 そして最大出力で放つ――合奏術式。

 シグルドを倒すために彼が選んだ術は、「神食い」のフェンリルと並んで神の喉元にまで達した超異界魔種。

 七代目邪神の生み出した秘術。


揺籃歌ベルスーズ


 絶対の合奏術式。

 フレンにのみ受け継がれていたと思われた七代目邪神の呪術であった。

 ルーン文字が使用されていないその呪術を解呪できるのは今やフレン=アリストロメリアのみ。


 その術を食らった瞬間、シグルドはかつて城郭都市ブレイザブリクの大規模ダンジョンでのたうち回った苦しみを再び味わう。

 体には歪な刻印の数々が刻まれ体が引き裂かれるような激痛と、猛烈な吐き気、目眩に襲われた。


 リーヴは血反吐を吐きながら笑い


「そのままのたうち回っていればいい。この術をユミルの『記録樹素』から探し出すのに少々時間がかかった……解呪は不可能。運が良ければ、生き残れるかもしれないが、その時には既に遅い」


 呪術の作用により完全に戦闘不能状態になったシグルド。

 だがリーヴとて「因果を逸脱した一閃」による治癒不可の致命傷を負っており、絶命は時間の問題と思われた。

 だが――。


 リーヴはここで着ているタキシードの胸元から、とある小さな石板を取り出した。

 その石板には謎の言語体系が羅列されている。


()()()()()の所有権は既に『ヘグニ=ウォード』から我に移っている」


 そう独り言を呟いた上で。

 シグルドの足元に展開されていた自己世界領域の結界を全て自分に移し。

 術式発動対象を自分にした上で、最後にとある合奏術式を発動した。


回旋曲リンカーネーション


 カッと自己世界領域全体が発光したかと思うと、何事も起きず。

 リーヴはその後、怪我による血反吐を撒き散らし、限界が訪れたのか、その場に倒れ絶命した。

 と…思いきや。


 リーヴの死体の頭上に無数の重なった巨大な魔法陣が出現。

 その魔法陣一つ一つが歯車のように回転し、星々のように相互作用を受け循環し合っている。

 瞬間――死亡していたリーヴは何事もなかったかのように起き上がった。

 「因果を逸脱した一閃」による傷も完全に完治され息を吹き返し蘇生。


 死から蘇ったリーヴは、そのことを予期していたかのように、驚きもせず


「ふん……龍『殺し』残念だったな、一歩届かずといった所か。即死させていれば、貴様の勝利だったものを……ん?」


 未だ呪術の作用を受け苦しみ失神して倒れているシグルドを見下ろし、独り言を呟く。

 すると、その遥か遠方から、誰かの気配がした。

 リーヴは思わずその方角に視線を移すと


「ああ、そういえば貴様が残っていたな。“立花陽太”」

「はあ……はあ……」


 原生魔術「黒曜を吐く鏡テスカトリポカ」による精神汚染攻撃をくらっても尚。

 この最終決戦場「ヴィーグリーズの間」でリーヴに立ち向かう最後の砦「立花陽太」の姿があった。


―ラグナロク確定の時まで残り00:33ー

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