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リンカーネーション  作者: 鹿十
第五章 ラグナロク編
170/193

ヴィーグリーズ最終決戦⑧

「ッ……」


 「魂」属性で発動された「黒灰化」を含め、霊剣リジルの「橙」での攻撃を計5回食らったリーヴは。

 ついに限界が訪れようとしていた。


(駄目か……体内での神素の循環が機能しない。これでは身体を強化することも出来ない)


 度重なる「黒灰化の誘発」を受け。

 リーヴの体内に残っていた「枢軸主」オーディンの神素は全て消え。

 ここでリーヴは神素による身体強化が不可能になる。


(それに加え、『魂』属性の攻撃を食らったことで、巫女の魂が我が体内から分離して顕現しかけた……あと数回、立花陽太の術式を食らってしまえば、完全に魂が引き剥がされ、我の敗北が確定してしまう)


 「根源の異なる力」その無敵に近い力を持つリーヴも。

 陽太とシグルドの猛攻撃によって着実に手札や体力が削られていたのだ。


(そして覚醒した龍『殺し』の負の因果……あれも合奏術式ですら治癒しきれない。加えて神器所有者である龍『殺し』の覚醒を経て、霊剣リジルの威力や出力も段違いに向上している……まずいな)


 ゆっくりと現状を分析し、劣勢な状況にあると結論づけるも。

 それでもリーウは敗北する可能性など微塵も考えていなかった。

 なぜなら


(我には『根源の異なる力』がある。先程は龍『殺し』に注目しすぎて、立花陽太に一手食わされたが、依然として立花陽太は、我が第三領域の術式射程範囲内には侵入できまい。鬱陶しく目障り極まりないが、立花陽太は所詮妨害してくる虫にすぎない。龍『殺し』さえ戦闘不能にさせてしまえば我の勝利は決定したようなもの)


 リーヴは龍「殺し」を見つめながら戦略を立て続ける。


(負の因果を纏っている今、彼奴の全ての攻撃は治癒できず、我にとって致命打となる。覚醒の影響で、霊剣リジルが吸収した術式効果も飛躍的に性能が高くなっている。そして本人のフィジカルの驚異的増強……今の龍「殺し」の速度は獣人ガルム=ノストラードに匹敵するほどだ、だが!!)


 ここでリーヴは第三領域内部の結界の仕様を変更。

 30数m円形の結界を2つに分割。

 一つを自身へ、もう片方をリーヴの足元へ配置。

 そして


挽歌(エレジー)


 合奏術式を発動。

 瞬間、シグルドの挙動・速度が著しく低下する。

 

「なッ」


 シグルドが動揺している最中。


即興曲(インプロンプチュ)


 リーヴは無数の光弾をシグルドに向かって射出。

 シグルドは避けきれず、体に無数の傷を負う。


オウ


 焦ったシグルドは霊権リジルの術を鉄鎖「グレイプニル」に変更。

 その先端を遠方へ巻き付け、一気に「グレイプニル」の鉄鎖の長さを巻き取ることで、鉄鎖に引っ張られる形で高速移動を行い、リーヴの第三領域から撤退した。


 だがその行動に意味がなかったことにすぐ気づく。


「ッ!!」


 シグルドは自身の足元に目を配ると。

 そこには不定形型の結界が貼られていた。

 その結界は、まるで影のようにシグルドの動きを追尾し、必ずシグルドの足元へと現れる。


(まさか……結界術の応用……結界の分裂かッ?! 幽霊都市で樂具同が結界の形を変更し、『根源の異なる力』の射程範囲を伸ばしたように、リーヴも結界の仕様を変更してきたッ! 結界の一部が分裂し、我が常に『根源の異なる力』の術式対象内に入るようにッ!)


 その分裂した結界内部――第三領域には。

 内包樹素の循環・外界樹素の吸収・術の編纂能力・身体挙動など様々な性能をダウングレードさせる合奏術式「挽歌(エレジー)」が発動されている。

 つまり今現在のシグルドは、「根源の異なる力」の範囲内にいなくても、常にデバフの効果を受け続けることとなる。


 シグルドは赤く染まった瞳でリーヴを睨みつけた。

 リーヴはシグルドの鋭い視線を受け、ニヤリと笑いながら


(結界を2つに分断し、片方をシグルドの足元に、そしてもう片方を我の周囲に展開する。これでシグルドはいつでもどこにいても合奏術式のデバフを受けながら戦わざるをえなくなる。それに加え、我も合奏術式によって身を守り続けることができる。シグルドの方に結界を分断して配置したため、我が周囲の第三領域展開面積は半径約20数mと、小さくなってしまっているが……まあよい)


 この局面にきて、ようやく覚醒を果たしたシグルド。

 そのシグルドの潜在能力が、合奏術式によるデバフで著しく減退。

 そんな時に。


〔略式〕


 リーヴに向かって遠距離から、シルフ属性の短縮詠唱での攻撃が飛んできた。

 リーヴはその攻撃を簡単に避けると、術の発動地点へと目を向ける。

 そこには陽太の姿が


「ああ、貴様か、邪魔な虫め。龍『殺し』を殺したあと、貴様も一緒に冥土に送ってやる……だが、少し貴様のちょっかいにも飽き飽きしていた所だ、貴様には特別にこの術を使い、少しの間、大人しくしていてもらおう」


 そう言ってリーヴは結界の形状を再び変更。

 円形の結界を絞り、一直線型にすることで、結界を伸ばし約80数m先にいる陽太の足元にまで結界を伸ばし、陽太を第三領域内部に招き入れる。

 そして


黒曜を吐く鏡(テスカポリトカ)


 原生魔獣、吸血鬼の始祖アルガードが使用していた原生術式の闇が陽太を襲った。

 粘つき質量を持った闇の霧が、群体となって津波のように陽太を遅い、陽太は深淵の中に囚われ


「があああああああああああああ」


 陽太は思わず発狂をした。

 陽太という生物が死の最中に放つ断末魔が、不快な音となりシグルドに伝わる。

 シグルドはただ友が散っていく様を黙って見つめることしかできなかった。

キャラクター紹介No. 3 「アマルネ=ネリネ(アマルネ=マルカトーレ)」

種族:人類種ヒューマニティ

戦闘法:魔術、霊術

外見:ひょろっとした長身と、糸目が特徴。身長183cm。

解説:第十四区ギルド隊員。城郭都市グラズヘイムに発生した大規模ダンジョンの攻略で登場。ヨゼフ=クローネという気弱な男性と親友であり、主に式具の弓を使って遠距離から攻撃をする。陽太たちが王都へ連れ去られた後は、一時離れるが、幽霊都市での騒動を経て再び合流。以後は協力している。習得者が少ない「光属性」を使用でき、ヨゼフの死後は彼の準精霊を引き継ぎ、霊素での空間転移術を習得した。

性格:冷静で俯瞰的な視線で物事を客観視することができ、その穏やかな性格からかリーダーなどに任されることが多い。

境遇:十三神使族の一家「ネリネ家」の子である。「ネリネ家」は「ジギタリス家」の陰謀に巻き込まれ、過去に発生した幽霊都市での呪術による大量虐殺の責任を肩代わりさせられたことで没落。その後、「ネリネ家」の一家は呪術被害者による逆襲で一家もろとも惨殺されてしまった。そのため現状で「ネリネ家」の血筋を受け継ぐ唯一の人間となっている。何れはネリネ家の汚名を返上し、正当な方法で王家となり、人間界を革命していくことを夢見ている。

実力:ギルド隊員の中では随一の実力を有するが、フレンなどの格上に対しては無力。光属性への適正があるが、目立った長所はなく、あまり強くはない。だが状況の把握に長けており、皆を動かすリーダー、参謀的な立ち位置に収まることが多く、彼の真意はその統制力にあると言えよう。


 

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