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リンカーネーション  作者: 鹿十
第五章 ラグナロク編
165/193

ヴィーグリーズ最終決戦③

 グニャリと空間が歪んだ場所から現れたのは、フレンとアマルネの二名だった。

 転移した場所は世界樹が生える地表・謎の古代建造物の廃墟が残る「不可侵領域」内部。

 

 不可侵領域内部では凄まじい轟音が鳴り響いており。

 思わず上を向くと、世界樹に絡まりながらヌルヌルと動く大蛇「世界蛇」ヨルムンガンドの姿があった。

 フレンとアマルネはヨルムンガンドに気づかれないよう廃墟の後ろに隠れ


「ガルムとスノトラは既に治療班の元へ移動させてある。不可侵領域ではフリングニルさんやベイラ=ビアトリスさんがヨルムンガンドと交戦中だ」

「陽太たちは……?」

「シグルドさんに関しては『ヴィーグリーズの間』でリーヴと戦っている最中だ……陽太くんは分からない。転移に失敗したのか、世界樹の根のどこかに取り残されていると思う」

「じゃあ探しに行かなきゃッ」


 そう言って立ち上がろうとするフレンの右手をアマルネは掴んで止める。


「駄目だ。危険すぎる」

「でもヨータが」

「大丈夫だ。陽太くんは強くなった。彼一人でも……何とか生存出来るくらいには。今は陽太くんを信じるしかない」

「……」フレンは黙り込む。

「それより僕達は、地上でヨルムンガンドの相手をしたほうがいい。ヨルムンガンドは今、リーヴ=ジギタリスの方の味方をしている。もし不可侵領域で僕らを全員倒してしまえば、リーヴを守りに『ヴィーグリーズの間』へ向かってしまうかもしれない、だから僕達でヨルムンガンドを相手にして時間を稼ぐんだッ!」

「それだと……リーヴと戦うのはシグルドだけじゃない!」

「シグルドさんなら勝てる。一人でも」

「いくらシグルドでもッリーヴ相手じゃ……」

「僕らが加勢した所で邪魔になるだけだ。ならば僕たちはヨルムンガンドの注意を引きつけよう。それが一番得策なんだ。もしヨルムンガンドが『ヴィーグリーズの間』に行ってしまえば……シグルドさんは一人で2対の神を相手することになる。それこそ絶望的だッ!」

「……」

「大丈夫だ。僕が霊術で皆を転移し補佐する。スノトラもガルムを治療班に届けたらここへ返ってくるはず」


 二人が相談しているすぐ横に。

 ヨルムンガンドの攻撃で砕け落ちた世界樹の木の表面部分が、直ぐ側に落下した。

 フレンは思わず頭を抱える。


「……迷っている時間はない。今は陽太くんとシグルドさんを信じて、僕らは戦うしかないんだ」

「……分かった。ヨルムンガンドを相手しましょう」


 アマルネの説得を聞き、フレンはようやく意思を決め立ち上がった。

 そしてヨルムンガンドのいる遥か上空を見上げながら


「信じてるからね、シグルド、ヨータ」


 と呟く。



―ラグナロク確定の時まで残り01:08―


(立花陽太の現状の手札は……大きく2つ、まず『打我の篭手』を通した攻撃、こちらは我の肉体にも着実なダメージを与える物理攻撃、対して『魂に拡張された術式』は我の肉体は損傷させないものの、内部の『巫女の魂』を揺さぶることで重複された魂を無理やり引き剥がしてくるな)


 立ち塞がる二人の敵 陽太とシグルドの分析を絶え間なく続けるリーヴ。


(そして龍「殺し」の「霊剣」……確認出来るだけで2種の式具を吸収している……①魔剣グラムの遠隔斬撃、②ノルンの未来視……他の術式効果もストックしている可能性もある……だが……神器とはいえ式具を吸収するために何かしらの条件を満たす必要があるはずだ)


 ここでリーヴはチラリと、横目で背後数百m先の祭壇に安置されている巫女を見つめた。

 横たわる巫女の上には何重もの術式陣が多数展開されており、歯車のように巡り回っている。


(巫女の術式の完成まで残り10分弱……それまで、持ちこたえれるか?)


 分析が終わった後、再び戦闘が始まる。

 シグルドの未来視を含めた剣さばきと、リーヴの体術は拮抗。

 そこへ加わる陽太の遠隔での水術式高圧噴射。


 陽太の術を食らう事に、リーヴは身体の内部に例えようのない激痛を感じ。

 その隙に、リーヴが霊剣で攻撃を加える。

 シグルドと綺麗にスイッチ方式で入れ替わり、今度は陽太が接近戦を試みる。

 先ほどとは異なり、リーヴは陽太を警戒しているからか。

 「打我の篭手」を装着した右手での攻撃はリーヴに命中しない。


 リーヴが陽太をあしらっていると。

 その隙にシグルドは一旦霊剣を鞘にしまい直し


〔朱:魔剣グラム〕


 霊剣リジルの術式効果を「斬撃範囲の拡張」に切り替える。

 霊剣に嵌め込まれた宝石は赤色に染まり。

 シグルドが霊剣を振るい、3つの遠隔斬撃がリーヴを襲う。

 

 そのどれもが見事にリーヴに着弾。

 リーヴの体表をかまいたちのように切り裂いた。


(なッ……先ほどの考え無しの遠隔斬撃とは異なり、我の位置を的確に把握した上で斬撃を放ってきたッ! 成る程……未来視で我の動きを予想してから、術式効果を魔剣グラムに変え、斬撃を予測通りの位置に配置しているのかッ!)


 シグルドの未来視&遠隔斬撃の2種の術を応用した技。

 この方法ならばリーチを伸ばした斬撃も、リーヴに避けられずに着弾する。


 リーヴが遠隔斬撃を受け、怯んだ所に。

 陽太はすかさず「打我の篭手」での右腕での攻撃をリーヴの頭に叩きつけた。

 ゴンッと鈍い音が鳴り、リーヴの頭蓋骨に亀裂が走る。


 リーヴは一瞬脳震盪を起こし。

 クラクラと目眩を起こす。

 その隙を狙い、シグルドは距離を詰める。

 リーヴは脳震盪で苦しみながらも思考と分析を続けた。


(クソッ……だがッ……既に貴様らの手札は開示されたッ! 未来視と遠隔斬撃を応用した技も、一度見た今、完全に避けられるッ! 貴様らの攻撃は神素で強化した我に対し、決定打になるほどの威力は持たないッ! 無駄な小細工もこれまでだッ!)


 リーヴは左腕を振るった。

 シグルドは振るわれた腕を霊剣の刀身の棟で逸らすことで回避。

 そして無防備なリーヴの腹にめがけ、シグルドは霊剣での刺突を加えた。


 グサリ、と確かに霊剣はリーヴの脇腹に刺さったものの。

 神素で強化されたリーヴの肉体を貫くには至らない。

 やはりリーヴの言う通り、シグルドや陽太の攻撃は致命傷には至らない――と思われたその時。

 シグルドは静かな声で詠唱をした。


「〔トウ:神器「レーギャルン」〕」


 瞬間。

 霊剣の刀身を伝い。

 模倣した――「黒灰化現象の誘発」が発生。

 リーヴの体内中に黒灰化現象が駆け巡った。


(これはッ……神器「レーギャルン」の術式効果ッ!!!)


 神人は勇者と悪魔の前で、確かに追い詰められかけていた。

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