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リンカーネーション  作者: 鹿十
第五章 ラグナロク編
153/193

不可侵領域総力戦⑭

【スノトラの重力術式発動による脳の回路の疲弊】


【スノトラは幽霊都市で重力術式を長時間・最大出力で行使したことで脳の一部が焼き切れ1ヶ月以上の昏睡状態へと陥っていた】


【これは術式回路を持たない人間は、脳の回路がその演算機能を代用するためである】


【だが、昏睡状態の間。スノトラは無意識の内に自らの脳と脊髄に、とある『治癒術式』を回し続けていた】


【その術はスノトラの焼き切れた脳の回路を再生するだけに留まらず、昏睡状態の間、スノトラの『脳』機能全体を一新させるために機能】


【スノトラが重力術式発動による過剰な負荷にも“耐えきれるよう”無意識の内に脳自体を構築し直していたのだ】


【それはまるで、千切れた筋繊維が修復される時には、より強く強固に修復されるのと同じように】


【その結果として植物人間状態から復活した現在のスノトラは――重力術式発動による脳の著しい負荷、そのデメリットを完全に克服しており】


【実質的に、重力術式の無制限出力での使用が可能となっていた】



「がッあああああああ」


 リーヴは痛みで発狂した。

 リーヴの首元にクロス型の爪傷が加わる。

 大量の血と共に、首元の傷から豊富な神力が霊気となって噴出。


 ガルムの読み通り、オーディンが「神喰い」フェンリルにつけられた首元の古傷は、オーディンを受肉したことでリーヴ=ジギタリスにも受け継がれており。

 その古傷を再び引き裂かれたことで、リーヴの首元から受肉したオーディンの「霊体」その力が漏れ出してしまっていた。


 だが――。

 完全に仕留めるまでには至っていない。

 右手・・で「鳥葬」を放ったからか。

 傷は浅い。


 もう一撃、食らわせなければ。

 リーヴの身体からオーディンの神力を全放出させることは叶わない。


(まだだッ、あと一撃!!)


 ガルムがリーヴに向かって駆け出した。

 だがリーヴも負けじと、最後の力を振り絞り


〔『命令解除』。『主を敵から遠方へ遠ざけよ――投擲〕


 以前にグングニルに命じた「補完」の命令内容を破棄。

 そして新たな命令を付与し、槍を投擲すると。


 槍はリーヴを包み込み、そのまま遠方へと飛来していく。


「させるかよッ!」


 ガルムは逃げて体勢を立て直そうとするリーヴの後を超速で追いかけた。

 もうガルム自体も度重なる「狂凶暴虐アエーシュマ」の使用により、とっくの昔に身体は限界を迎えていた。

 だがそれでも、死力を振り絞り、壊れかけている身体を動かした。


 そして逃げるリーヴに追いつき、彼の両手首を両手で掴み拘束する。

 至近距離。

 今なら「鳥葬パールスィ」の術を喉元に発動できる。

 そうガルムが確信した瞬間。


 リーヴは敗北を悟った表情の後、決意を固め、あろうことか。

 神器にとある命令を付与し、根源のユミルに語りかける。

 

〔『契約儀式』――『完遂』の神器の所有権を破棄。代償として最後の一撃に付随する『完遂』の効力を最大限にまで高めたまへ〕


 瞬間。

 カッと、リーヴの体が光ったと同時に。

 彼の右手に光の束が集まり、グングニルの完全形態が出現。


 ガルムは投擲を阻止しようとするも。

 「狂凶暴虐アエーシュマ」状態が解除され、本来、身体を動かすことも叶わないほど疲弊している現在のガルムの身体では。

 リーヴの力に敵うことは無く。

 簡単に拘束した両手を振り切られ。


 そしてリーヴは右手の槍を掲げ。

 至近距離のガルムに向かって。

 最後の一投を放つ。


〔『獣人ガルム=ノストラード』その命に終止符を打て――投擲 〕


 ガルムの視点では。

 長く長く、ただひたすら長く、永遠に感じるほどの。

 一瞬が、何時間にも拡張されるような。

 奇妙な感覚を味わった。

 リーヴによって振るわれた最後の一投が。

 やけに鮮明に瞳の裏に映る。


 一気に、脳内に記憶が巡る。

 兄者ハティとの記憶。

 ガルムになれなかった悲劇。

 ノストラードの集落を飛び出た日。

 スノトラと出会った日、

 二人でギルド隊員として働いた毎日。

 何気ない日常。

 スノトラの枕の横に置いた花。


 ガルムは、これが何であるか知っていた。

 この奇妙な永久にも匹敵する感覚を。

 過去に味わったことがある。

 そう、あの時、ハティを亡くした時のこと。

 あの時、「僕」のことを助けてくれたのもハティだったっけ。

 そうこれは、「走馬灯」ってやつだ。


――――


 ガルムの眼の前が真っ暗になった。



 

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