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リンカーネーション  作者: 鹿十
第五章 ラグナロク編
145/193

不可侵領域総力戦⑧

この5章でリーヴに瞬殺された「魔狂徒」ロキの神器は「内包樹素の制限が解除される」効力がありました。つまり神素を無限に使えるというチートな神器です。

ですが、ロキは樹界大戦後、愉悦のために受肉してしまったことで、人の体では神器から供給される無限の樹素を体に溜め込むことが不可能なので、使用が不可能になってしまいました。


あとリーヴが目標に掲げていた「11対の旧神の死滅」ですが。

実は一人だけ、見逃された(?)奴がいます。

それが冥府にいるヘルです。

彼女はまだ神器が使えますし、樹海大戦後も神力を失っていない数少ない神なのですが…。

樹海大戦後に冥府に追放され神の座から降ろされてますし、既に冥府に渡って死んでいるようなものなので、リーヴはわざわざ冥府に渡ってヘルを殺害しなくても条件を達成できました。


冥府のヘルとも戦って、ちゃんと消滅させてね~って条件だったら、リーヴはかなりキツかったと思いますし、リーヴも言っていた通り、樹海大戦後もトールが大怪我を負わずに現役バリバリだったら、この条件を達成することはほぼ不可能に近かったです。

実際、オーディン受肉後のリーヴでも全盛期のトールと戦ってたら1分も絶たずに消し炭になってました。

神の中でも強さには明確に序列があって。

トップがトール、ヨルムンガンド。

上位層が、スルト、ロキ。

最下層がブラギ。

オーディンは中の下~下の上くらいで、神の中じゃそんなに強い方ではありません。


―ラグナロク確定の時まで残り02:10―


 「ヴィーグリーズの間」に先着したのはガルムだった。

 不可侵領域に突入してから30分も経過せずして、世界樹の深層に到達。

 その圧倒的な速度と怪力だけでここまで辿り着く。


「テメェが……リーヴ!!」

「そういう貴様は……獣人……」


 眼の前に現れたガルムを注意深く観察して思考するリーヴ。


(ド・ノートルダムの娘やアリストロメリア家の魔族と同じ仲間の獣人かッ?!

だが……何だ、此奴の内に秘めし力は……神種にすら匹敵するほどの圧……以前とは比較できぬほど、急激に成長しているッ!!)


 今までノーマークだった獣人ガルムの驚異的な成長を目の当たりにして。

 リーヴは思わず身震いする。

 そしてガルムの両足、右腕に付いている鉄鎖を視界に入れると


「それは……『神喰い』を拘束した伝説の足枷『グレイプニル』……まさか……それを引きちぎってきたのか」

「そうだ、脆いお縄だったぜ」

「あり得ん……」


(だが、『パトリアルフ』の精鋭を突破してきた者だ。実力的に嘘はついていないはず!!)


「――〔グングニルよ、眼の前の獣人の息の根を止めろ――投擲〕」


 先制攻撃。

 ガルムが油断している間に、リーヴは命令を与えた槍を投擲。

 だが――投擲をした瞬間に、リーヴの視界からガルムの姿が消える。


〔鳥葬!!〕


 瞬間。

 リーヴの胸にはクロス型の引っかき傷が加わる。

 着用している服ごと切り裂き、皮膚が切られ、出血する。

 

 気づけばリーヴの後ろに四足歩行のガルムが移動しており。

 投擲された槍は、リーヴ同様にガルムの姿を見失い、未だ投擲された方角に猛スピードで進行していたが。

 ガルムの術の発動が終わった瞬間、ガルムが既に進行方向とは真逆の場所にいることに気づき、「完遂」の槍は急遽、進行方向を変更。


 大きく弧を描いて、進路を逆走し。

 移動したガルムを追尾して動く。


 だが、術の発動を終えたガルムは迫ってくるグングニルをまたもや華麗に避け。

 追尾してくるグングニルよりも速い速度で動き、翻弄。

 結果として「眼の前の獣人の息の根を止めろ」という命令を「完遂」させることが不可能だと悟った神器グングニルは、ピタリと空中で停止。

 帰還理由を失い、リーヴの手元に戻らない。


「しまったッ」


 その隙をガルムは見逃さず。

 またもや目にも止まらぬ機動力で移動し、すれ違い様にリーヴの左頬、右足、左腹部に、三撃、爪での攻撃を加える。


「ッ……」


 その後、リーヴは体勢を戻しながら、急いで自らの手で停止したグングニルを回収しに行った。

 手元にグングニルが戻ったのを確認すると、ガルムは警戒して一旦、リーヴと距離を取った。

 リーヴはひとまず安堵し思考を続ける。


(チッ……やはり曖昧な命令は駄目だな。先ほどのように、命令を『完遂』できないと判断すれば、グングニルはそこで機能を停止し、手元に帰還せず、我が自身で回収しなくてはならない。その間、我は丸腰も同然だ)


「ハッ、貫いてみろよ、その槍でよォ」


 煽るガルムに対し、リーヴは冷静なまま。


(ではどうすればいいか? 話は簡単だ。グングニルを『投擲武器』以外の手段で運用すればいい)


〔主を守るための鎧、外的を排除するための武器として形状、材質、樹素を変化せよ――『投擲』〕


 そう言って、両の手でグングニルを握り、真下の地面に穂先を突き刺す。

 すると、グングニルは瞬間的に拡張、液体のような形状となりリーヴ自身にスライムのように纏わりつき、時間を経ると、命令通り、金属の鎧となり変化した。

 これぞ「枢軸主」の兜をつけたものヒァームベリ形態である。


「ンだそりゃあ、槍の一部が鎧に変化しやがった……気持ちわりィ」


 そうして、リーヴは地面に突き刺した槍を引っこ抜き、携え。

 両者相対する。

 先に動いたのはリーヴ、だが後から行動が遅れたガルムが、リーヴよりも早い速度で地を蹴り、爪での攻撃を食らわす。

 しかし、先程とは異なりリーヴの体には傷一つついていない。

 神器グングニルの鎧のせいで、爪での攻撃が全て弾かれた。


(ッ堅ェ……俺ンの爪の攻撃が全く効かねェ。だが移動速度はこちらが何倍も上だ。更にその重そうな鎧をまとったせいで、まともに動けていないなァ。いいぜ、どれだけ堅い鎧だろうが、全部この爪でかっさいて、壊してやるよ)


 …とガルムが息巻いていたその時。

 更にリーヴは手にしていたグングニルに命令を下した後、地面に突き刺す。


「〔形態変化――馬にのって突進する者(アトリース)


 命令を受けた槍は更に分割。

 槍はゲル状に溶け出し、大きな塊となった後、細部が粘土細工のように整えられていき。

 8本の足を持った透明色の軍馬へと変形。

 それを見たガルムは気づく。


(あれは……オーディンの野郎が乗っていたっつー伝説の戦馬『スレイプニル』!!)


 甲冑を着用したまま、リーヴは馬に跨がり。

 地面に刺さっていた槍を右手で、左手で鞍の紐を握りしめる。

 そして西洋甲冑の兜の仮面を装着し、戦馬『スレイプニル』を操作しガルムに突進。


「ッ……」


 ガルムは寸での所で、体をローリングして突進を避ける。

 グレイプニルはリーヴを乗馬させ、ガルムを追いかけた。

 だがガルムもとい獣人の強みは、床、側面、天井、障害物、柱など、ありとあらゆる物体を用い縦横無尽に動く「三次元的な機動」である。

 ただ地を這って動くだけではガルムを捉えることは不可能。


 だが。


「ッだッ」


 ガルムの死角から槍が向かい、左足に刺さる。

 天井に張り付いて、地表を見ると。

 騎乗しているリーヴの周囲に、十数本の小さな槍が浮遊していた。

 その一本をリーヴが握り、投擲したのだ。


 ガルムは天井に張り付くのを止め、地上へと降りる。

 と、その瞬間、スレイプニルの突進が襲ってくる。

 その瞬間速度はガルムの機動力をも上回るほどであり。

 軍馬「スレイプニル」の頭に生えた一角が、突進でガルムの左腹部に刺さり、そのまま空高く持ち上げられた。


「がックソッ」


 ガルムは距離を取り、柱に爪を入れ、高所の安全地帯から観察、思考した。


(なるほど……俺が天井や壁にいたら分けた槍で攻撃。一本じゃなく十本以上に分けた槍はその分、威力は下がるみてェだが……それなら外したとしても、さっきみてェに、隙が出来はしない。で、天井から降りて地面にいけば、あの馬の突進を喰らっちまう。『スレイプニル』の平地での瞬間機動力は俺より上だなァ。その分、空に浮遊したりはできねェみてえだが……『スレイプニル』では対応できねェなら、あの槍で攻撃するってことか。そしてあの鎧……隙を付いて攻撃したとしても俺の爪でも弾かれちまうほどの硬度がある)


 リーヴの「完遂」の神器を存分に活用した走・攻・守が揃った形態。

 おまけに遠距離・近距離戦どちらでも完全に対応でき、槍を分割使用することで「完遂」の弱点――命令不履行時の隙をも克服している。


「獣人とは……対迫撃戦、一対一の戦闘にて無類の強さを誇る種。だが、だからこそ純粋なスペック差に弱い。単純明快な話だ。貴様の強みを全て打ち消し、我が弱点を全て補強する鎧と武具を使えば良いだけの話。それを実現できるだけの神秘が、我が神器には宿っている」


(これが『神喰い』のフェンリルの宿敵――『枢軸主』オーディンの野郎の強さか……せっかく、『スレイプニル』の枷を引きちぎって来たのによォ、神様相手にゃ、それでも力が足りねェっつーのか)


 自身を縛る枷を克服しても尚、新神たるリーヴに迫ることが出来ていない現状に、ガルムは物寂しさを感じていた。

 その表情を見たリーヴはあざ笑い


「むしろ名誉あることだぞ、獣人よ。この形態は、旧神『オーディン』が本気で戦う際に使用する秘技。それをただの獣人に過ぎぬ貴様に使わせた事。これは全くの予想外であった、誇ると良い。貴様は神種と本気で戦うに足る器なのだ」


 皮肉交じりだが惜しみない賞賛を送るリーヴに対し。

 ガルムは落胆した表情で


「それじゃあ駄目なンだよ。神をも喰らわなきゃ……俺ァ、ガルムだと言えねえ。それじゃあ……死ンだッ、ハティ・・・に顔向けできねェンだよッ」


 そう激しく熱の籠もった声で怒鳴り。

 そしてガルムは立ち上がり、四足歩行を止め、戦闘態勢を取った。

 ガルムの体が熱気で赤く染まり始め、筋肉は鼓動するように動く。

 銀色の毛が逆立ち、目の光が消え、殺意が宿る。

 

 ガルムがまたもう一段、ヒートアップする時奏でられたのは。


〔〔鉄鎖蝉脱〕『加式』系統は闘素――狂凶暴虐アエーシュマ


 戦闘本能を蘇らせ、肉体の枷を開放する獣人の十八番。

 暴君、狂乱の術であった。



 



 

 




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