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リンカーネーション  作者: 鹿十
第五章 ラグナロク編
144/193

嵐の始まり

前回に引き続き、急に出てきた「ヘグニ」って誰やねんって思った方。

実はep.105 【手品師】にちょっと名前だけ出てきてました。

あとep.66 魔術革命、でリーヴに語られてたのも彼のことですね。


あと、「原初ユミル」は魂を重複して保有してますが「系譜」ではありません。

「系譜」は「魂を2つ以上重複して所有する者」と定義しましたが、条件はこれだけではないです。

「ユミル」以降に、異世界に招かれる「根源の異なる力」持ちの人物たちが「系譜」です。

つまり13人の系譜の中に、ユミルは該当しません。

あとソールとマーニも「系譜」ではありません。

ユミルや彼らを除いて、13人「系譜」が訪れるということです。



【ヘグニ=ウォード】


【アグネ・ド=ノートルダム率いるパーティーの一員にして真の指揮官リーダー


【400年前に人間界から魔界を経由し世界樹まで辿り着き、人類でも術式が扱えるようになった『魔術革命』、その真の立案者にして『勇者』の肩書を持つ男】


【アグネの遺した書記には、ヘグニに関して、あまり目立った活躍は記載されておらず、終始、アグネの率いるパーティーの従者的な扱いで描かれており、彼に触れた内容は極めて少ない】


【そのため後世ではほぼ世に名が知られておらず、『魔術革命』の功績はほぼアグネやアリストロメリア家の愚王に奪われてしまっており、列記とした勇者パーティーの一員であったにも関わらず、その認知度は極めて低い】


【だが一部熱狂的なファンもいるようであり、極少数の民族、地域の人々は『ヘグニこそ真の勇者だ』と語るが、それらの発言は異世界では世迷言として鼻で笑われる】


【しかし、アグネが改竄した書記ではなく、本当の歴史は『魔術革命』に通ずる道は全てヘグニから始まり、彼が主人公として活躍をした。当時、王都に使える一兵士に過ぎなかった彼を、『邪神』を倒すための『勇者』として『アリストロメリア家の愚王』が勝手に祭り上げ、ただの鉄くずに過ぎなかった剣を、勇者の剣として渡され、厄介事を押し付けられたのがヘグニである。その後、あまりの身勝手さに王家から追放された『アリストロメリア家の愚王』当人と二人で、人間界に居場所が無いから仕方なく邪神討伐に動き始めたのが、『魔術革命』の全ての始まりだった。最初は、ヘグニ達に誰もが期待などしておらず、当の本人たちも、これから自分たちが後世に伝わる偉業を成し遂げられるとは、到底考えてもいなかった】


【出発時に、ヘグニに渡されたこの鉄くずの錆びた剣は――旅の道中で小人種などに研磨されることで、今現在、王家に代々伝わる伝説の剣『魔剣グラム』として成長したのである】


【何故、一門兵に過ぎぬ、ヘグニが、邪神討伐の責務を任されたのかというと――】


【彼が“うっかりにも”『レーク碑石』に自身の名を記してしまったことがきっかけだろう】



 ガルムは凄まじい速度で地を駆ける。

 伝説の足枷「グレイプニル」の鎖を、左手以外に装着し。

 その鎖が地面と擦れ合い、摩擦熱と高音を発する。

 

 世界樹の根の最下層「審判の回廊」に到着するまでに。

 配置された門番を蹴散らして、下がること数分。

 ついに「審判の回廊」へと到着した。


 一本道のその荘厳な回廊では。

 フレンとバーラ=アリストロメリアが決死の対決をしている真っ最中であった。

 ウプサラの祭儀前に姿をくらませ、突然現れたガルムに対し。

 フレンは驚きを隠せず


「ってガルム?!」

「ぁア? フレンじゃねェかッ 助太刀が必要かッ?!」

「問題ないわ! バーラは私が食い止める。アンタは一足先に『ヴィーグリーズの間』へ行って、巫女ヴォルヴァを助けに行ってッ!!」

「巫女ゔぉるゔぁ…? ああ、あの修道服の」

「とにかく、この先に行って、助けに行って! 早くッ!」

「なンだか事情は知らねェが、了解したぜ。そこにいきゃァ~、オーディンの野郎がいるンだろッ」


 ガルムは詳しいことは聞かずに、フレンの指示通り「審判の回廊」その先を目指そうと駆け出した。

 しかしその様子を見ていたバーラが


「行かせないわ〔奔雷(アルゲース) 超速記号プレスト〕」


 電撃の原型術式に超速記号を付与した術をガルムに向かって発動。

 ガルムの左後ろ足に着弾するも。

 

「ンだッ、ピリッとしたぞッ! 邪魔だッ」


 ガルム自身は全く怯むことなく右手をバーラに向かって振るう。

 すると、その衝撃波が空間を伝ってバーラに向かい。


「ぎゃっ」


 バーラはその風圧でガルムから遠くに吹き飛ばされ尻もちをついた。

 

「な……何なの……あの獣人」


 バーラは知りもちをついて落としてしまった魔術師の帽子を被り直し。

 驚きの表情を浮かべる。


(ガルム……何をしたのかは分からないけど、以前とは比べ物にならないほど成長してる……)


 四足歩行で「審判の回廊」の先に向かっていくガルムの後ろ姿を見つめながら。

 フレンはガルムの変わり様に戦慄していた。


 そしてガルムが「審判の回廊」を進むこと3分。

 最終地点、「ヴィーグリーズの間」に繋がる何百段もの長い階段。

 その前には、階段の一段目に腰掛け、ウトウトと眠り始めている剣士グリムヒルドの姿があった。


 ガルムはその地点まで到着すると四足歩行を解く。

 ガルムが到着すると、眠りにつき始めていたグリムヒルドら「パトリアルフ」一行ははっと立ち上がり、着用していた衣服や鎧の乱れを直して。

 腰に携えた剣や杖を握り。


「なンだてめェら……」

「やっと先客が来たか……お前たち、あまりにも遅い……かれこれ40分も俺達を待たせやがって……我が名はグリムヒルド、『熾』の階級を背負う者にして精鋭部隊『パトリアルフ』の筆頭……そして次期ジギタリス家当主なのd――!!」


 長ったらしい自己紹介をしている間に。

 グリムヒルドは眼の前の獣人――ガルムの圧に驚く。


(何だこいつはッ!! 俺には分かる!! ただの獣人じゃない!! この圧……まるで……)


 グリムヒルドは思い出す。

 渓谷グニパヘリルでの痴態。

 「根源の異なる力」を持った系譜 零式――その圧倒的な強さの圧を。

 それと似たようなオーラを、眼の前の「ガルム=ノストラード」からも感じ取った。


「あ……く……だ……お前らッ本気で一斉に掛かれッ! こいつは……絶対に……リーヴ様の元へ連れて行ってはいけないッ!」


 焦り、冷や汗が流れるグリムヒルド。

 だが動揺を抑え、数名の仲間たちに指揮し。

 自らも抜刀し、そして。

 「パトリアルフ」集団で囲い込み、ガルムに刃を向ける。


 その速度はおよそ1秒以下。

 だが、そのほんの僅かな時間でガルムは両手をクロスさせ。

 肉に埋もれた爪を出し、戦闘態勢を取り。

 放つは。


空葬トリベノッ!!〕


 右手を振るうと。

 爪に沿うように、5つの風撃が飛ぶ。

 それらは「ヴィーグリーズの間」に繋がる階段ごと崩壊させ。

 今の一撃で「パトリアルフ」の面々は体に傷跡を付け出血。

 戦闘不能に陥る。

 

 だが。

 剣士グリムヒルドだけは危険を事前に察知。

 空に飛ぶことでガルムの初撃を回避。

 そして空で身を反らせ、着地と同時に剣を抜き、ガルムに死角から攻撃を仕掛けようとするも。


「邪魔くせェッ!」


 ガルムの適当に振るった左腕が。

 グリムヒルドの顔面を強打。

 そのまま勢いよく後方へ吹き飛び。

 「審判の回廊」その側面の壁に激突。


「がッあ……」


 グリムヒルドは鼻から大量の血を流しながら。

 瓦礫を背にしてダウン。


 ガルムは彼らのことを全く気にすること無く。

 何百段もある透明の階段を駆け上がり。

 巨大な両扉を体当たりで開門した。


 その先に広がっていたのは。

 厳粛な雰囲気の果てしなく巨大な空間。

 縦横共に500mはあろうか。

 その先の祭壇の上には、一人の女性が横たわっており。

 

 女性の胸元からは多重の円が重なり展開されている。

 おそらく術式に組み込まれている影響だろう。

 その女性の傍らに座っていたのは。


 銀髪の三白眼。

 長いマントを着用し。

 貫録のある雰囲気を漂わせる。

 新神「リーヴ=ジギタリス」の姿。


 彼は「旧神11体の死滅」という契約を達成し。

 今は、術式の核になっている巫女ヴォルヴァの遺体を監視していた。


 リーヴは、ガルムが「ヴィーグリーズの間」に侵入してきたのを見て、ゆっくりと立ち上がり。


〔神器召喚〕


 「完遂」の神器 グングニルを顕現させ


「さて……神聖なる『間』に侵入してきた害獣が一匹……」


 ガルムを見据え呟いた。













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