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リンカーネーション  作者: 鹿十
第五章 ラグナロク編
135/193

不可侵領域総力戦⑤

「一番の好機だな、樹界対戦の顛末も……今の状況を見ると悪くなかったと思える。『雷帝』貴様の無様な醜態を見るとな……」


 世界樹の根の深く。

 樹界対戦にてヨルムンガンドと戦い、再起不能状態に陥り。

 その後は死亡はしていないものの、万全の状態に回復するために世界樹の根の奥底で、原初ユミルから神力を供給され、約400年間、今日に至るまで休眠状態にあった『雷帝』トール。


 まるで赤子のように丸まり空洞の中に収まっていて、しかし皮膚は老婆のように爛れ、シワだらけになっている。

 かつては異世界最強とまで評された『雷帝』の、無様な現状を確認しリーヴは


〔『雷帝』の命に終止符を打て――投擲 〕


 グングニルを投擲し『雷帝』の命を奪う。

 トールは断末魔や悲鳴すらあげることなく、無言でグングニルに貫かれそのまま絶命した。


「……もし、貴様が全盛ならば……我に新神の座など巡ってこなかったろう……あの忌々しき樹界対戦は巡り巡って……我を新神の座に昇格するための手助けとなっている……これも運命か。これで根絶すべき神種はあと一対……『魔狂徒』ロキのみ、それが終われば……」


 リーヴは握りしめた拳を見つめる。


(それが終われば、きっと……貴様の『理想』は……永遠のものとなるだろう…………なあ、ユミルよ……)


 心の中で呟き。

 意思を固め、ロキの元へ出向くリーヴ。



 場面は変わり、シグルドを置いて別行動をするアマルネ、陽太、フレンの三人。

 彼らだけはアマルネの霊術で、フリングニルたちと別れ。

 先に巫女を回収しに周る作戦を企てていた。


「巫女はおそらく、『ヴィーグリーズの間』にいるだろうな」


 小人種(ドワーフ)「イーヴァルディ」が霊剣「リジル」を解析している最中にふと呟いた言葉。

 どうやら巫女ヴォルヴァの体は仮死状態で、世界樹の根の最奥。

 根源空間「座」に繋がる、「ヴィーグリーズの間」という空間に安置されているらしい。

 それを知った陽太たちは、リーヴが神種を殺害しに回っている間に、仮死状態の巫女ヴォルヴァの体を回収し救助することに決めた。


 そうして計画通り、アマルネ、陽太、フレンの三名が「ヴィーグリーズの間」に繋がる「審判の回廊」に転移。

 直接「ヴィーグリーズの間」に転移はできない。

 いかに霊術といえど、「ヴィーグリーズの間」から最奥のユミルの魂が位置する「座」にかけては「記録樹素レコード」が満ちており、これに妨げられ、空間転移することが不可能であるからだ。


 こうして三名は、先に「審判の回廊」へと転移し到着する――が。

 そこへ待ち構えていたのは、総勢13名の剣士と魔術師の集団だった。


「やっぱりここに来ると思った、あら、スノトラのやつがいないじゃない」


 その中の一人、フレンと似た容姿の金髪のボブの髪色をした魔術師の少女が、喋りだした。

 アマルネは彼女らの胸元のマークを見て、察する。


「……王家直下の精鋭部隊『パトリアルフ』かッ?!」

「せいか~い。アンタたち、この先の『ヴィーグリーズの間』に行って、巫女ヴォルヴァを救出するつもりでしょ? 困るのよね~巫女ヴォルヴァはもう、術式の構成要素だから、彼女を連れて行かれちゃうと……リーヴ様の作戦が破綻しちゃうもの」

「ねえ、アマルネ、『パトリアルフ』って……」


 フレンが生唾を飲みながらアマルネに質問しようとすると


「それは俺から説明しよう」


 割って入ってきたのは短髪の赤髪に、顔には一線の古傷が目立つ剣士グリムヒルト。


「我ら『パトリアルフ』は十三神使族に代々仕えし精鋭中の精鋭。剣士や魔術師の中でも一際優れ、各自が十三神使族のそれぞれの家系に直接、仕えている。我らに課されし仕事は『当主の護衛』。一人が剣士の軍勢一個旅団に匹敵すると判断された者しか、『パトリアルフ』には徴収されない。文字通り人間界のトップ中のトップ……頂点に位置する者たち……それが我ら『パトリアルフ』なのだ。そして我、グリムヒルト=エギザンダスは、そんな精鋭部隊『パトリアルフ』の筆頭!!」


「「「……」」」


 急に自分語りを始めたグリムヒルトという剣士を前に黙り込むフレンたち。

 

「アタシはバーラ=アリストロメリア。よろしくぅ~♪」


 対して、軽いノリのバーラという魔術師。

 

「あ、ワタシ以外の奴らは皆、先に行ってていいよ、コイツらは私だけで対処するから~」

「そんな勝手が許されると思うのか? バーラ」

「うっさいグリム、見りゃ分かるでしょ、こいつらワタシだけで十分だって。それより、『龍殺し』がいない、警戒すべきはアイツよ。ここは素直にワタシに任せてどっかいってよ、ていうか普通に邪魔だし」

「……」


 龍殺し、という単語が出てきて、顔の色が変わるグリムヒルト。

 少し悩んでから


「分かった。こいつらはお前に任せる。いくぞ」


 他の「パトリアルフ」メンバーを連れ、「審判の回廊」の先へと向かっていく。


「さ~て、ようやく敵さんがきてくれたわけだし、やっと自由に出来るわね~、ね? アリストロメリアの魔族さん?」

「!! ……アタシを知ってるの? アンタ」


 フレンに語りかけるバーラ。


「勿論。一応親戚なわけだし? 七代目邪神と愚王の混血……その実力がどれだけのものか……試してみたかったわけ、ワタシ、強い魔術師を見ると打ち負かしてやりたくなっちゃうのよね、負けず嫌い? というか、弱いくせに肩書だけ偉そうな奴らには虫唾が走るから」

「そう……じゃあ、返り討ちにしてやるわ」


 フレンとバーラが互いに戦闘態勢に入る。

 するとフレンの左横にいたアマルネが小さな声でフレンに呟いた。


「気をつけろ……フレン……」

「大丈夫でしょ、内包樹素量だってアタシより低いし、優れた魔術師っていったって、所詮人間だわ、幽霊都市で戦った原生魔獣に比べれば型落ちも良いところよ」

「そういう意味じゃない」

「?」

「……彼女は、バーラ=アリストロメリアは君が今まで戦ってきたタイプの術者じゃない」

「どういう意味よ」

「彼女の真名は……『術者殺し(マジックキャンセラー)』……対術師に特化した……稀代の天才だ」


 バーラの青色の眼光は、好機を見るように、フレンに向けられていた。


 

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