不可侵領域総力戦①
フレンの守護霊獣は「大鷲」です。たまに「大鷹」になってるのはミスです。
フレンの守護霊獣はもう原型術式「神聖なる敬虔」と共にフレンに力を渡しちゃったので消えていて、使えませんが、一応修正。
【神種『炉神』イドゥン】
【彼女は、唯一『神器』と融合した神である】
【彼女の神器は『白金の林檎』その効力は『不老不死の再現』】
【神器を起動している限り、肉体は治癒術式を施す必要もなくたちまち再生し、いかなる難病をも治療する鋼の肉体と化し、かつ肉体的な老化を停止するという“不老性”】
【死亡しても尚、『冥府』に誘われた核の情報が即座に元の持ち主に還元されるため、核を破壊され死亡したとしても即座に復活するという“不死性”】
【この両方の効力を神器所持者に与える】
【イドゥンは霊体を捨て、この神器と一体化することで『不老不死の再現』この効力を13対の神種全員に分配・拡散】
【本来、所持者である者にしか効力を発揮しない『白金の林檎』は融合したイドゥンの神素を通じて、13対の神に共有。以後、神種全員が『不老不死の再現』その効力の恩恵を得るに至った】
【イドゥンは神が神たる原動力そのものであり、その性質から『炉神』という二つ名を付けられるに至った】
【しかし400年前の樹界大戦にて『霜の巨人族』によりイドゥンは『白金の林檎』と共に破壊、以後は機能を停止し、神種は『不老不死』の恩恵を享受不可能となった】
*
世界樹の枝先に宿る、かつては金色に輝いていた巨大な果実の上に降り立ち。
リーヴ=ジギタリスは両の手でグングニルを握りしめ、その刃先で果実を貫く。
灰色に染まっていた果実は「どくん」と鼓動をして、まるで心臓のように蠢き、傷口から大量の血と果肉を流出させた。
「ギィイイアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」
瞬間。
耳をふさぎたくなるほどの甲高い轟音が果実内部から鳴り響いた。
まるで女性の悲鳴のような、とにかく耳触りな音が。
そして数秒経過すると、グングニルで貫かれた果実は「どくん」ともう一度振動した後、すっかり動かなくなって、萎れたように縮む。
その様子を確認した後、リーヴはグングニルを果実から抜き
「『炉神』の死亡確認」
…と冷たい声で呟く
するとその一連の様子を遠方から観察していた一人の少年が近づいてきた。
その少年は魔術師のような格好をしており、胡座をかきながら宙に浮遊している。
「まさか君がこんな蛮行をし始めるとはね、リーヴ君」
「『魔狂徒』ロキか。こちらから向かう手間が省けたな」
その少年の正体は神種『ロキ』。
彼は無邪気に笑いながら
「400年ぶりかな? あの時はあんなに小さくて可愛くて、素直だったのに。今じゃこんなに大きくなっちゃってさ。リーヴ君、覚えてる? 僕は昔、君に色々な魔術を教えてあげたんだけど」
「……400年も前のことだ、忘れたな」
「酷いなあ、こうやってあの時の恩を仇で返すってのかい? ……まあいいや、で、さっき『記録樹素』を通して聞いたけど、あれ本当?」
「……樹界大戦時、巨人によって『炉神』イドゥンが機能を停止させられたことで、神種の力は全盛期と比べ半分以下に減衰。その上、大半の神種が死亡・または戦闘不能状態にある……この状況では神種は原初ユミルの代行者たり得ないと判断した原初ユミルは……無意識のうちに新しい神……すなわち新たな自分の代行者を望んだ……その結果、誕生したのが我だ」
「もとより、僕らを殺すつもりだったってことか」
「そうだ」
肩を落として悲しさをアピールするロキ。
対してリーヴは冷静な様子で
〔神器武装〕
詠唱を行い、再び手にしていた「神器」グングニルに神素を注入。
眼の前のロキを殺すための戦闘態勢に入る。
そしてリーヴは、まるで死刑を宣告する裁判官のような口調で
「『魔狂徒』ロキ。貴様の愚挙は目に余る。樹界大戦では原初ユミルに反する『混沌派』に属し、その後は愉悦から人の体に受肉。その愚行のせいで、自らの神器を使用不可能になり、今ではそこらの有象無象とそう変わらない実力にまで堕ちている。更には好奇心を満たすためだけに様々な悪行に手を染め、この異世界を常に混沌に招きこんでいた。元はといえば……巨人種も、貴様が巨人界に、神器での神素の供給を行ったために生まれた種。巨人さえいなければ、少なくとも樹界大戦で神種はあのような失態を犯さなかっただろう。その贖罪のため、今ここでその命を散れ」
「嫌だね」
「はっ今更抵抗するのか?」
「……だって、つまらないじゃないか。何事も筋書き通りの世界ってのは。僕はね、もっと面白いものが見たいだけなんだ。想像もできないような、思ってもいなかったようなことが起きて、それでドタバタがあって……オーディンさんは、口ではグチグチ文句を言いながらも……僕の起こす騒動を楽しんでくれていた…………リーヴ=ジギタリスよ、お前にオーディンさんの『神器』グングニルを使う資格はないッ。ここで死ぬのは君のほうさ」
「ほう? どうやって勝つつもりか? 神器も失い、受肉もし、全盛期の5分の1程度の能力もない貴様が、全てを手にした我に? 笑わせるな餓鬼が」
「そうだね、僕……一人なら勝てないだろうね」
「……? ……ッ?! まさかッ」
リーヴは強烈な気配を感じ、真上を見た。
空間が避けるように別れ、その隙間から、大きな、それは巨大な何かが落下してくる。
その正体にリーヴが感づいた頃にはもう遅かった。
〔『式』系統は霊素ーーノタ・イゴ・エレゴ・ロトウルス〕
詠唱と共に。
空間の亀裂から、巨大な結界に包まれたーーウプサラの神殿そのものが落下。
リーヴを押しつぶしながら、枝や木々を破壊し、そのまま地表の不可侵領域内へと落下していく。
ウプサラの神殿の霊場から強引に切り離されたバーラ=アリストロメリアの結界は、条件が満たせず破壊され。
内部から出てきたのは、ウプサラの神殿内に閉じ込めたはずの。
各種族の猛者たち。
「よおッリーヴ=ジギタリスッ!!」
真っ先に巨人フリングニルは手にしていた「レーギャルン」を振るい、先制攻撃をした。
リーヴは寸での所で避けながら、舌打ちをし
「チッ、抜け出してきたか、反逆者どもめがッ」
怒りを顕にした。