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リンカーネーション  作者: 鹿十
第五章 ラグナロク編
130/193

双子魂

【双子魂】


【ツインソウル、チェーンソウルとも言われる】


【相性の良い魂同士のことを指す】


【魂は通常、結合することはなく魂同士が独立して存在するが、極稀に魂同士の共鳴反応が起き、相性の良い魂が癒着、結合する場合がある】


【系譜の『根源の異なる力』などが良い例であり、あの力は魂同士が同一の肉体内部に結合、重複したことで発生する現象である。そのため境界門を通り付与される魂は、自然と持ち主の魂と相性の良い『双子魂』である】


【つまり魂同士を2つ以上、重複して体に所有するには、魂同士の相性が良くなければならず、後天的、人為的な方法で無理やり結びつけた魂は、器となる体内部で片方が弾け散るか、または維持できず時間経過と共に崩壊する】


【魂の相性度は、その魂を保有する人物間の感情的コミュニケーションの相性度と相関があると言われており、端的に言えば仲の良い人物同士の魂は比較的癒着、結合し『双子魂』と化す確率が高い】



 水滴が地に落ちる音だけがやけに反響する。

 地下深くの洞窟内に作られた牢屋、その天井は大きく開けており、地上へと繋がっていた。

 その内部には、一枚の毛皮と、木皿、そして天井からは大量の黄金色の鎖が垂れ下がっており、その鎖に体を縛られている一匹の獣人がいた。


 牢屋の看守が近づき、バケツに入った水を牢屋の鉄鎖越しに浴びせる。

 鎖に繋がれていた獣人ーーガルム=ノストラードは、冷水に浴びせられ、失っていた気を取り戻した。


「……ア? ンだ……」

「起きろッ 罪人()()()ッ! 飯の時間だッ」


 そう言って、看守が一つの乾いたパンを牢屋の中に投げ入れた。

 地面を転がる小さなパンを、両手両足が鎖に繋がれているガルムは尻尾をうまく利用することで拾い、頬張った。


「相変わラずッ、かてェパンだな」

「……ノストラードファミリーの面汚し、罪人のお前に、飯が貰えるだけありがたいと思えッ!」


 看守が手にしていたムチで、ガルムの体を叩く。

 ガルムは歯ぎしりをしてなんとか痛みに耐えた。

 すると、その音を聞いていた一人の獣人が近づいた。


「そこら辺にしておきなさい」


 それはガルムや看守と同じく獣人の女性。

 しかし佇まいは可憐で穏やかであり、ガルムと同じく銀色の毛で包まれていて、額には紋章、背中には赤色の毛皮のコートを纏っていた。


「……フレキ様……」


 看守は、フレキと呼ばれる獣人の登場で緊張し、敬礼のポーズをする。


「あなたは休憩して、この子は私に任せなさい」

「はっ」


 命令され、看守はその場を後にした。

 看守がどこかにいったのを確認した後、フレキはため息を吐いて、優しげな顔をし


「全く、スコル……暫く顔を見せないと思ったら、まさかもう一度『グレイプニール』の鎖に……」

「……心配しなくてもいいぜ、フレキ様」

「その呼び方、やめて頂戴」

「……約束だろ? 俺ァノストラードファミリーから抜けた身……もうフレキ様のことを……母さんとは呼べねェ……それに……あのこともあるしな……」

「そんなこと気にしなくて良い、どんな形であろうと、私は貴方が帰ってきたことが嬉しいのよ。貴方は私の息子ですもの」

「……口休めでも、ンなこと言ってくれるの……嬉しいよ、フレキ様」


 自分のことを母親と呼ばないガルムに対し、ため息を吐いて肩を落とすフレキ。 

 自分の個人的な感情を排して、ガルムとこうして面談の機会を作った理由、その本題に入ろうとするフレキ。


「で……どうしてまたノストラードファミリーに帰ってきたの?」

「ア? 見りゃ分かるだろ、『この鎖』を引きちぎるためだ」

「もう責任を感じるのは辞めなさい。皆は過去の『あの件』から貴方をファミリーの面汚しとして忌み嫌っている……だけど……私は思うの……貴方たちだけに期待して、重圧を背負わせていた私たちにも非はあるもの」

「関係ねェよ、フレキ様。俺がここにこうして戻った理由は、汚名を返上するためじゃねェ、ダチを守るために……力が必要だと感じたからだ」


 ガルムの口から「ダチ」という言葉が出て、驚き、笑顔になるフレキ。


「そう……新しい居場所が出来たのね、スコル」

「俺ァ今はスコルじゃねェ、ガルムだ」

「そうだったわね、ガルム……後もう少しすれば、ウプサラの祭儀に呼ばれたお父様が、ノストラードファミリーに帰って来るわ……あの人は強情で頑固だから……貴方のことは許さないかもしれないけど……でも、あの人も……心の底ではスコル……いえ、ガルム、貴方を心配なさっていたのよ」

「……ゲリ=ノストラードのことなんか知らねェよ、あんなヤツ」

「ふふ……相変わらずね、安心した。ファミリーを抜けても、貴方は貴方」


 そう言って、フレキは踵を返し、牢屋から離れようとした。

 その様子を見たガルムは


「? ……もういいのか? なンかもっと……お仕置きとか……ねェのかよ」

「え? そんなことしなくてもいいでしょう?」

「……なンでだよ、俺ァ、ファミリーに酷いことをしたってのに」

「必要ないのよ、だって貴方は私との約束をしっかり守っているんだもの」


 フレキは笑顔のまま洞窟の先に消えていった。

 両手両足が黄金の鎖「グレイプニール」に繋がれ。

 体中に酷い傷が刻まれているガルムは、思いを馳せる。

 自分がこのファミリーから逃げるように、家出した時のフレキの発言に。


【約束して、スコル。どんなことがあっても、その力は、大切な者のために使うのよ】


「……ハッ、そういや、あンな約束、してたっけ……相変わらず律儀だな……()()()


 ガルムはくすりと笑う。

 



 



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