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リンカーネーション  作者: 鹿十
第五章 ラグナロク編
124/193

ウプサラの次戦

訂正

× グラ二→◯ ゲリ

ゲリ=ノストラードが獣人の本名です。グラ二って誰。

ゲリは、ガルムの集落の長です。

「あれが神器か……」


 一戦目 巨人種vs魔種の御前試合が終わると。

 観客席で観戦していた陽太が呟いた。


「巨人種に伝わる神器『レーヴァテイン』だよ。まさか実物を拝める日が来ようとは」

「でもさ」


 陽太は何か疑問を感じたのか、アマルネに聞いた。


「その『レーヴァテイン』っつー神器を持ってたのはスルトっていう神種なんだよな?」

「そうだね」

「で、スルトってのは巨人でもあるんだろ? どういうことなんだ? 巨人が神様って……巨人と神は基本的に仲が悪いんだよね?」

「それが巨人種ジャイアントが滅ぼされていない一番の理由よ」


 割って会話に入ってきたのはフレンだった。

 そしてアマルネが続ける。


「巨人スルトのあまりの強大な力に恐れた神種は、彼を正式に神種へと分類し、『炎漢』という異名を授けたの。スルトは『巨人族』を滅ぼさないことを条件にそれを承諾。以後、スルトは巨人なのに神種として数えられるようになって、後には彼専用の『神器』まで配られたんだ」

「成る程……そういうことだったのか」

「そんな約束が無かったら、神に敵対する強力な種である巨人なんて今頃とっくに殲滅されているわ」

「長話のところ悪いが、第二戦が始まるな」


 フレン、陽太、アマルネの会話を割くように。

 シグルドが忠告した。

 皆の視線は再び中央の闘技場に移る。

 

 そこには、一匹の巨大な雄々しい二足歩行型の獣人と。

 沢山の装飾品や宝石が付いた純白のワンピースを着飾った長耳の、それはそれは美しい金色の髪をした悠久の森霊種が鎮座していた。



 第二の御前試合が開始されると。

 椅子に座っていた森霊種の長寿種は緩慢かつ優雅な動作で立ち上がり


「お会いできて真に光栄です。かの有名なノストラードファミリーの長、私の名はベイラ」


 と告げワンピースのスカートの先を両手でつまんでお辞儀をした。


「こちらこそ。何万年もの時を渡り生きる森霊種エルフ……その最長寿種にお会いできるとは……思ってもいなかった」

「ふふ、そうですね。私も。人生で一度は純血の獣人族にお会いしてみたかったのです。やはり噂通り勇敢で男らしい方……」


 御前試合とはいえ今から死闘を繰り広げる相手が。

 これだけ柔らかな物腰であることに、気が削がれるノストラードファミリーの長。


(どうせなら巨人と戦いたかったものだ。それに今宵の宴にはあの「龍殺し」も参加していると聞く……彼らと手合わせ願いたいものだが……まあよい、出来る限り傷つけないようにし気絶させてしまえばいい)


「じゃあ、いくぞ」

「ええ、よろしくお願いします」


 ノストラードファミリーの長――ゲリ=ノストラードは頭をかいた後

 すぐさま四足歩行に移行し


〔鉄鎖蟬脱〕


 敢えてセーブしてある本能を解放する。それだけでは飽き足らず


堅牢牙城けんろうがじょう


 〔鉄鎖蟬脱〕状態でのみ使用が解禁される身体硬化術式を重ねて付与する。

 はち切れんばかりの巨体が更に膨れ上がり、強固に縮まる。

 そして獣人は駆け出した。

 圧倒的な身体能力に裏付けられた単純な攻撃。

 しかし、こと単騎の白兵戦において――獣人種に敵う種はいない。

 

 戦場には一対一。

 遮蔽物は無し、術者が術式を編纂する前準備も与えられない。

 単純な一騎打ち。

 よーい、ドンで始まる単純な戦いでは、小細工を要する時間などなく。

 故に前準備に比較的沢山の時間を有す魔術師――特に遠距離の安全圏から術を行使する者にとっては最悪の環境だ。

 

 つまり。

 この御前試合という形式は。

 獣人種の独壇場。

 圧倒的に有利な戦況において、ノストラードファミリーの現長 ゲリ=ノストラードは。

 試合開始と同時に一気に飛び出し、森霊種の足を狙った。

 

 それはゲリが対面している相手が神聖な森霊種でかつ女性であることへの情け。

 足を狙い傷をつけることで最低限の傷で相手の口から降伏の二文字を引き出す。

 だが――

 相手は――単なる貴女ではなく――神代時代から生き続けてきた森霊種の最長寿種。


最善なる北の天則アシャ・ワヒシュタ


 顕現する炎の霊獣。

 それは魔族フレンと同じく――大鷲。

 凄まじい射出速度で発射されたその炎獣はグラ二でも避けられず着弾。

 

(ッ……守護霊獣の顕現化! 霊獣は『大鷲』……属性は火だなッ?!)


 あまりの射出速度にゲリは一瞬怯むも。

 だが対立術式を編纂する必要もなく。

 天則により放たれた業火はゲリ=ノストラードの体表を軽く焦がす程度の火力しかない。

 ゲリの思考を許す時間も与えず次の攻撃が来る。


最善なる西の天則アシャ・ワヒシュタ


(来るかッ?! 守護霊獣の顕現! 避けるまでもないッ)


 油断していたゲリの体を貫いたのは風が纏まり生じた――雄牛の形状をした烈風の霊獣。

 直前まで大鷲の炎獣が飛び出してくると高を括っていたゲリは身の危険を感じ回避。

 だが左手に少し烈風の霊獣が辺り、左手の肉がゲリの屈強な肉体強度を無視して切り裂かれた。


(……霊獣の二体所持?! しかも霊獣ごとに属性も樹素も異なるッ……これは……)


 ここでようやくゲリ=ノストラードは森霊種ベイラの正体に気づく。


「あんた……幻術師でも、治癒術者でもなく…………『精霊使い』だな?」


森霊種エルフの最長寿種の一人 ベイラ=ビアトリス】


【森霊種は精霊と契約を結ぶことで霊素を使用する者も多い】


【森霊種と精霊の繋がりは太古の昔まで遡り、自然の神秘から生まれし精霊を崇め祀り、その対価として精霊も森霊種に霊素を供給することで共存をしていた】


【森霊種にとって精霊は信仰対象そのものであり、彼女たちの文化様式は精霊と密接に結びついている】


【その最長寿種であるベイラ=ビアトリスは精霊の中でも別格の神秘を有す『四大精霊』通称:ランドアールヴァル の全てと契約をしている】


【『東の竜』、『北の鷲 』、『西の雄牛』、『南の巨星』この4種の大精霊は、『守護霊獣』として彼女を守る】


【ベイラの持つ神話時代の幻素を注入することで彼らは霊獣として異世界に干渉し――『最善なる天則』などの霊獣顕現化術式でその力の一端を引き出される】


「いたく本気だな。大精霊様まで引き出して俺と戦うとは」

「ええそれはそう。だって今日この御前試合には大精霊様『西の雌牛』がいらっしゃっているんですもの。負けてられないの……それに」

「それに……?」


 丁寧で温和な様子とは打って変わって、ベイラは凄まじい怨念を持って話し出す。


「あのクソチビで汚らしく不潔で汚れていて自然のありがたさを全く理解できない乏しい感性しか持ち合わせておらず金ばかりを要求する図々しい守銭奴それにあの清潔感のかけらもない髭とスネ毛がうっとおしくてたまらないゴミ中のゴミ、むしろ同じ生物として数えられているのが不愉快でしかない獣、もういっそのこと絶滅して冥府にでも誘われて消えてしまえばいいと思ってしまうくらい……ええ……少し……熱狂しすぎました……その不潔な小人種もここに来やがってるんですの? あいつらの前で不足を見せたら一生の恥ですもの」

「……そ、そうか」若干ヒキつつ対応するゲリ=ノストラード。

「ということで、私と大精霊のためにもここで負けてくださる?」

「あ? そりゃあ無理な話だな、ノストラードファミリーの長として」

「ああ、そう貴方も体裁を気になさっているんですね? なら……仕方ない……どちらか死ぬまで遊べばいいこと」


〔『式』系統は幻素――最善なる東の天則アシャ・ワヒシュタ〕〔自立を許可する〕


 ベイラの膨大な内包樹素から分離し顕現するは――瀧水の水獣:四大精霊の一角「東の竜」の霊獣。

 自立許可命令を下されたことで、精霊はベイラの指揮下から外され――。

 霊獣でありながらも本物の「東の竜」の力を再現するまでに至る。


「始めに言っておきますが、これを喰らえば貴方でもただではすみませんよ? 降伏するなら今です」


 その言葉を聞いたゲリはペッと唾を吐いて、八重歯を見せて笑い


「丁度汗ばんできて、水浴びしたかった気分だ」


 瞬間、巨大な飛竜の形状をした濁流がゲリ=ノストラード向かって放たれた。









 









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