第14話
「正解って……でも……」
「とりあえずこれ、渡しておくね」
再びバッグから何かを取り出し、畳の上にある百万円の包みの横に置いた。見ると、薄っぺらい白い封筒だった。
「この手紙の方が、一樹君にとってはお金よりも価値があるだろうね」
段々、事態が呑み込めてきた。
「もしかして、これって……」
「そう。姉さんからの手紙よ。一樹君に向けての」
目を丸くする俺を尻目に、叔母さんは淡々と言葉を継ぐ。
「姉さんからはね、こう頼まれてたの。一樹君が大金を必要とした時に、こういうやり方でお金を返してあげてくれって」
「か、返す?」
「ええ。これはね、君が高校生の時から、姉さんが亡くなるまでの間、家に入れ続けてきたお金。姉さんは、一円たりとも手を付けなかったのよ。奇しくも、姉さんが亡くなるまでに一樹君が家に入れたお金は、百万円ぴったりだったんだって」
うまく言葉が出ず、ただ茫然と口を半開きにすることしかできなかった。
「ホント、焦ったよ。一樹君から、お墓を建てるために百万円くらい欲しいっていう話を聞いて、じゃあこのタイミングで渡すしかない、って思ってさ。それから、慌てて準備したんだよ。パート仲間で、姉さんとも仲の良かったミドリンに、日給百万円おばさんの役を頼んだんだ。どうだった、ミドリンの演技? 日給百万円なんていう怪しいバイトを受けるかどうかの判断に影響しないように、できるだけ無表情でいてねって頼んでおいたんだけど、上手くできてた?」
ミドリン。母さんが緊急搬送された時に、俺に連絡をくれた崎本緑さんだ。あの人がにっぴゃくさん役だったのか。どおりで、どこかで聞いたことがある声だと思った。
「そういう、ことだったんですか」
やっと、言葉を発することができた。
しかし、すぐに疑問が沸く。
「でも、俺があの日にあのベンチで待つってことを、なんでわかったんですか?」
「うん。それは簡単。動くとすれば、日曜日しかないなと思ってたからだよ。だって一樹君の休み、日曜日だけだもんね。一樹君の言う『にっぴゃくさん』は、夕方にあの公園に現れるものだと思ってたでしょ? 私がそう誘導したしね。で、夕方に自由に動けるのは休日だけだと思ったから、ミドリンには、日曜日の夕方にあの公園へ行って、ってお願いしてたんだ」
パート先の若い男の子が、夕方に声を掛けられた。その話ははっきりと覚えていた。だからこそ俺も、夕方を狙った。なるほど、それも計算済みだったわけか。
「まあ、種明かしはこのへんにしてさ。とりあえず、姉さんからの手紙を読んでみてよ」
お言葉に甘え、すぐに手紙を手にした。さっきから、読みたくて仕方がなかったのだ。手紙を開けようとする手は、小刻みに震えていた。
綺麗に開こうと思っていたが、願い空しく、ビリビリに破いてしまった。とにかく、一刻も早く手紙を読みたかった。
手紙を取り出し、早速食い入るように読み始める。そこには、実に砕けた明け透けな文体で、こう記されていた。