第4章 サンディエゴへ
僕達は翌週、車でサンディエゴに向かった。車といっても自動運転のタクシーのような物で父さんに手配してもらった。費用ももちろん父さん持ちだ。ロサンゼルスからサンディエゴまでは車で1時間半位の距離なので低所得者層でも払える金額だったが、僕らハイスクールの学生のお小遣いでは足りなかった。ジュリアンのひいおじいちゃんの家はサンディエゴの郊外の乾いた野っ原の丘の上にあった。木造の平屋建ての古びた家だったがまだ扉や窓の建付けはしっかりしていた。乾いた土地のお蔭で庭にも雑草は大して生えてなく、ちょっと掃除すればすぐに暮らせそうだった。
「いい家じゃないか。ひいおじいちゃんって何してたんだ?」
「大学の教授だったって話だ。何かアジアとか海外の大衆文化を研究していたらしい」
「教授かあ。それだったらいい収入だったんだろうな」
「まあ、平均よりは上だったんだろう。でもその時代は今みたいな格差はまだなかったからな」
「そっかあ」
「この地域にも昔は会社がたくさんあって一般の人も住んでいたって聞いたけど、ベーシックインカム制度ができてから場所の効率が悪いということでさびれていったらしい」
「それで一部の富裕層の住居地区以外は荒廃したって訳か」
「じいちゃんは10年位前まではここに住んでいたけど、さびれた土地が嫌になって引っ越した」
中に入るとさすがにホコリなどの汚れがすごかったので僕達は1日かけて掃除をした。ソファや家具はしっかりしたいい物で掃除をすれば綺麗になって立派に使うことができた。リビングルームは広く大きなソファが中央にあってゆったりとした生活ができそうだった。
「いいなあこういう部屋。ここだと何かいい詩が書けそうだ」僕はソファにゆったり座りながら思わずつぶやいた。
「ホントだな、ヒット曲を頼むぞ」
「おまえこそ、作曲とアレンジをしっかりしてくれよ」
僕達はそれから一週間程その家で作詞作曲の作業をして何曲か投稿サイトにUpした。しかし結果は芳しくなかった。新しい場所で気持ちは新鮮になったので曲も今までと違う趣で作ることはできたが聴衆には受けなかった。
「俺たちには才能がないのかなあ?」ジュリアンから諦めの声が出た。
「そんなことはないさ。まだできることはある。色々やってみよう」
「気分転換に海岸地区に行ってみないか?」
「いいな、行こう」