自動翻訳のせいで疑われる
道に出ると、そこには新しそうな車輪と蹄の跡がいくつもあった。どうやら頻繁に使われている道のようだ。
歩いて数時間後、後ろからガタガタと馬車がやってきた。
さっき前から来たのが一台いたし、やはりこの道はよく使われているらしい。
「おーい!すみません」
「ん?どうしました?」
俺が手をふりながら声を上げると、馬車はちょうど俺の目の前で止まって商人らしき出で立ちの御者の少年が俺に聞いてきた。
御者は俺と同じくらいの歳のようだ。
「この先の街に行きたいのですが、よろしければ乗せていただけませんか?」
俺のお願いに御者は俺のことを胡乱げに見てきた。
流石に乗せては図々しいかったか?
「その、背負ってるのは武器ですか?」
俺を見ていると思ったら、背負っていたギターケースを警戒していたようだ。
この世界にはギターが無いのか。それともケースが無いのか。
「これはギターという楽器ですよ」
俺はケースを開けてギターを御者に見えやすいように持ち上げた。
「あー、リュートの様なものですか。音楽家の方ですか?」
「まあそんなもんです」
ギターを見せて多少は警戒が和らいだが、それでも御者は俺を探るような目で見てくる。
「失礼ですが同郷の方ですか?あなたの言葉は人口数百人の私の故郷でしか使わないものなのですが……」
…………あっ、警戒してたのそっちか。自動翻訳のせいで疑われてたのか。
少数民族の言葉を使われてたらそりゃ驚くわな。
数百人ってことは村人全員顔見知りみたいな感じだろうし、年が近かったら間違いなく分かるだろう。
御者的には年の近そうな故郷の言葉を使う俺を見て、あれ?こんな奴居たっけ?と思ってたはずだ。
「実は…………」
俺は正直にこれまでの事情を話した。