グラミー賞取る予定だったらしい
「……じゃあ、こういった場合のテンプレと言うか、マニュアルはあるんですか?」
「普通は謝罪の後、記憶を保持したまま地球の裕福な家に生まれ変わりをして頂くのですが、今回は……」
なんか含みのある言い方だな。
「今回は?何か事情があるんですか?」
「少女も偉人ですが、あなたもかなりの著名人になるはずだったんです。マニュアル通りだと功績と補填の割が合いません」
「え?俺、将来は一体何する予定だったんですか?」
「グラミー賞取ってます」
「グラミー賞!?」
どうして軽音部エンジョイ勢の俺がそんな大それた賞を取れるんだ。
「梨音さんのお友達が卒業後バンドを作ろうとあなたを無理矢理引き入れて、そのままズルズルと。大学卒業後も音楽活動を続けていくうちに売れ始めて……わぁ、すごくトントン拍子。漫画みたい」
何だその楽しそうな人生。もう手に入らないからかもしれないが、めちゃくちゃ後悔し始めた。
「あれ?てことはあいつもグラミー賞貰えるってこと?もしかして俺が死んだせいで駄目になるってことは」
「そこは大丈夫です。あなたが死んだ瞬間だけ三人の運命が揺らいだだけで、その後の変化はあまり無いので。梨音さん生涯独身だったようですし」
…………なんか傷つく。俺いらない子みたいじゃないか?
「そんなこと無いですよ。まあ、そういう訳でこれからの梨音さんが歩むはずだった人生の規模を考えると、そのままの姿で別の世界で、寿命を数倍に伸ばし何かプラスアルファの特典を与えてやっとトントンの補償となります」