能力被り?
歌が終わると、耳が痛くなるくらい大きな歓声と拍手で食堂が震えた。
アリシアが近づいてきて、俺の手を握ってきた。
「凄い!凄いよリオン。こんなに歌に感動したの生まれてはじめて」
「あ、ありがとう」
手を握られてジッと目と目が合うから照れくさくて、そっけない返事になった。
女の子とこんなに近くで話すなんてなれてないんだ。
「すっげえな。本家より本物っぽい」
「翔さんも知ってましたか」
「世代だからな。年離れてないんだからだいたい分かる。てゆーか、お前の能力そっちがメインだろ」
「リオンさんの歌と演奏はすごいですよ。ペガサスもリオンさんの歌に惹かれてテイムされてましたし、オーガーなんて楽しんで襲撃せず帰っていきましたから」
エニシがそう言うと翔は椅子から崩れ落ち、分かりやすくガックリとしたポーズを取った。
「か、翔さん!?どうしたんですか」
「能力が被っとる!」
…………そこ気にする?
「いやいやいや、俺のは確実に仲間にできるわけじゃないですし、翔さんみたいに強制的に従えてる訳じゃないんで、どんな言う事でも聞かせられるかわかりませんよ」
「お前と比べると俺の能力、悪党みたいじゃねえか!」
「確かにカケルさんの能力だとモンスターを強制的に奴隷にしてるようなものですね」
「あぁぁぁぁぁ!」
何かスイッチが入ったのか、翔は仰け反って発狂し始めた。
今まで頼りになる人って印象だったのに……ガラガラと音を立てて崩れていく。
「アリシア、これ大丈夫なのかな?」
「多分アイデンティティを脅かされてるからじゃないかな?おじいちゃんから能力取ったら何も残らないし」
孫辛辣だなぁ。