思ってたより被害者が少なかった
「まあな。だから俺たちの寿命はあっちで80年生きるとすると、80×100×2〜9で16000〜72000年ってとこだ。俺が調べた中で最も長く生きた被害者は50000歳だから、恐らく伸ばされた寿命は6〜7倍程度だな」
翔の話を聞いて俺は一つの違和感に気づいた。
「へー…………………………あれ?ちょっと待って下さい。被害者の数合わなくないですか?寿命6〜7倍だと言うことは、戦国時代より前の人もこっちでは生きてることになります。あの女神が年に一、二回被害者を作ってたら千人近く居ないといけない。でも俺の神の地図には百人も表示されてません」
最初に地図で被害者の数を見た時に気付けよと言われるかもしれないが、あの時は被害者の数なんて気にも留めてなかった。
「お前の地図便利なんだな。俺も被害者の合計は知らなかった。まあ、そこには色々理由がある。一つ目は昔の人の寿命はそこまで長くないし、個人差もある。50000年生きた爺さんと会ったことがあるが、地球に居た頃から健康だったと言ってたから元々長寿の予定だったんだろう。二つ目はあの女神も毎年ミスをする訳じゃない。ある程度期間が開くときもある。それでも5年も保たないのが残念だが。三つ目は、被害者も無敵じゃない。事故で死んだり、冒険中命を落とす事もある。四つ目、永い生に耐えられなくて自殺」
なるほど。色々な理由が重なって被害者の数が百人以下なのか。そりゃそうか。きっちり寿命迎えられない人もいるよな。
だが、最後の理由が恐ろしかった。
「そう青い顔するな。俺達にとってはまだまだ先の話だ。それに自殺する奴の数は少ない」
「それも、そうですね」
「どうした。マジで怖かったのか?」
「少し」
高校に入るまでですら長く感じたのに、その千倍以上の人生。想像もつかない。
「先の事を考えるのもいいけど、向こうを見てたら足元の大切なものを忘れてしまうぞ。例えば美味しい昼食だ」
翔に言われ、窓から空を見ると太陽は真上に達していた。
「そう言えば腹減りました」
「よし、食堂に行くか」