さらば教会
翔は俺と肩を組んできた。
初対面なのに随分距離を縮めてくるな。
「梨音、お前泊まる場所決めてねえんだろ?俺が泊まってる宿屋を紹介してやるよ。それじゃーな、ラゴーグ」
「お世話になりました」
「え、ちょっとカケル様、リオン様…………何かお困りのことがございましたらいつでもいらっしゃってくださいねー!」
強引にだが、翔は肩を組んだまま俺を連れて行くのを、ラゴーグはあ然としてみていたが、慌てて俺へ声をかけた。
「柊さん、宿の紹介助かります。右も左も分からない状態だったので」
「翔でいいよ。………………はあ、梨音よぅ。お前はしばらく教会に近づかない方がいいぞ」
教会がみえなくなったところで、翔は組んでいた肩を解いて真面目な雰囲気でそう言った。
「理由を聞いてもいいですか?」
「あの教会の連中は大丈夫だが、他の中には俺たちのことを利用しようとする輩がいるからさ。ラゴーグの後ろにいたプリーストたちのように旅をしている奴らの中でも、自己中な奴もいるからな」
翔の言ってた事はエニシの忠告と似ていた。
やはり教会は信用ならないのだろう。
「翔さんは何かやられたんですか?」
「ん?ああ、教会の奴らに借りを作っちまってな。戦争に駆り出された」
「せ、戦争!?」
そこまでやらされるのか?俺はてっきり信仰を集める為の象徴的な扱いをさせられるだけかと思ってた。
「つってもモンスター相手の戦争だがな。断ろうと思えばできたから。承諾したのは、断ればあれよりもやばい案件を任せられないようにする為と、俺の能力的にもプラスだったからな」
「へぇ」
「だが、教会の連中は人を口車に乗せるのが上手いからな。慣れない奴だと気づいた時にはホイホイ笑顔で戦場に連れて行かれるときがある。そうならない為には極力一人で教会に行かないことだ」
そう言った翔は無表情だった。
もしかして実体験だったのだろうか。