俺は死んだ
俺の名前は神楽梨音。軽音部の高校2年生だ。
両親の影響で音楽は昔から好きだったが、それは聴くことが好きだっただけで演奏するのはあまり好きじゃなかった。
だが、頼んでもないのに無節操に習わされたせいでピアノ、トランペット、ギターなどメジャーな楽器ならば人並みには扱える。
そんな俺が軽音部に入ったのは友人に巻き込まれたからだ。
そんな軽音部は、3年の先輩たちの最後の舞台である文化祭が来週に迫り、部員の皆もなかなか気合が入って練習に励んでる。
俺も彼らの熱気に当てられ、いつもは面倒でサボってる土曜練習に参加するため現在登校中だった。
しかし、気づいたら俺は真っ白な空間に居て目の前で女性が、何度も俺に頭をひたすら下げていた。
「すみませんすみません!私がドジなばっかりにすみません!」
金髪に昔のギリシャ人が着ていそうな白い布をまとった女性には、何故か目元にモザイクがあり、この空間、そして彼女が尋常な存在ではないということは誰の目にも明らかだった。
ただ、モザイクのせいでちょっと犯罪者っぽいのが少しおかしくもあった。
「すみませんすみません。謝罪の途中ですがその評価は少し傷つきました」
「心を読めるのか。もしかして神様とかそういった類の存在でしょうか?」
「はいすみません。どうか駄女神と罵ってくださいすみません」
神様なのにこの腰の低さは一体どういうことだろう。
まるで取り返しのつかないミスをしてしまった社会人みたいだ。
「まったくもって例えが正確でございますみません!」
すみませんが語尾みたいになってる。
「一体どういうことですか?」
「実はあなたは既に死んでしまってるのですみません」
「…………!!」
「横断歩道を歩いていたあなたは、信号を無視したトラックに轢かれそうになった少女を突き飛ばして助けた代わりに轢かれてしまったんですみません」
俺死んだのか…………。嘘だろ!?まだピチピチの高2だぞ!
そう言えば思い出してきた。女の子が轢かれそうだったから、思わず飛び出して突き飛ばしたんだ。あー、今日持ってたギター高かったのになぁ。
死んだのにギターの心配をしてしまった。それだけ今死んだという実感がないってことだ。
「私があなたの運命を変えてしまったのですみません」
は?てことは俺が死んだのはこの駄女神様のせい?
だからあんなに謝ってたのか。