6話 子供で大人
基本的に主人公の発言は「」で書きます。
サブキャラの発言は「「」」鍵かっこ二重で書きます。
ピッグルと仲良くなってから1週間、ネルフォード、アルフォード、ピッグルと僕の四人で話すことが多くなった。
しかし、ここで気になってくるのがディーバの存在だ。
彼女だけ仲間外れにしているようで申し訳ない。
しかも、彼女は前々から毎日挨拶をしてくれるので僕としては気になっている。
アルフォードとネルフォードの訓練も一区切りついたので、今度はディーバとの信頼関係を築こうと思う。
ディーバは朝食時にみんなに一通り挨拶をすると夕食時までは自室で過ごしていることが多い気がする。
外で見かけるのは井戸の周辺だけである。
さらには、同じ女性であるセレーネやキロク、ネルフォードと話しているところを見たことがない。
謎の多い女性である。
僕はとりあえず、今日の朝食時、挨拶だけで終わらず、その後も世間話をしようと心に決め
広間に向かった。
僕が広間に行くと、ディーバ以外のみんなはすでに着席しており、僕とディーバを待っている状態だった。
「ディーバさんは?」
「「まだ、起きてきてないわよ。珍しいわね、ローフェン君起こしてきてくれる?」」
ランカさんは僕にディーバを起こしてくるよう指示する。
僕は一度来た道をUターンし、ディーバの自室に向かう。
僕は部屋の戸をたたいた。
いくら僕でも、女性の部屋に入るときくらいノックはする。
「ディーバさん、朝だよおきて。」
僕が部屋の中に声をかけるとどたばたと物音がした後、ディーバが起きてきた。
「「おはよう、わざわざ、ありがとう。」」
「うん、どういたしまして」
彼女は挨拶をすると足早に広間へ向かった。
全員がそろうとランカさんがあいさつをする。
「「はい、みんなそろいました。では、いただきましょう。…あっ、そういえば、この後、帝都に買い物に行ってきます。なくなりかけていた塩とか石鹸もかってくるので留守番お願いします。」」
ランカさんはどうやら午後からは買い物に出かけるらしい。
午後からは子供たちだけで留守番するためあまり外には出ないほうがいいだろう。
食事を終えるとランカさんはすぐに出発した。
子供たちは今日の訓練は控え、みんな自室で過ごすことにした。
僕はディーバと仲良くなるために彼女の部屋を訪ねた。
ノックをする。しかし、部屋の中からの返答はなかった。
僕はもう一度ノックする。しかし、部屋の中からは物音ひとつしなかった。
僕は諦めて、剣の手入れのために井戸まで水を汲みに出た。
孤児院を出て井戸のほうに歩いていくと井戸のそばにはディーバがいた。
僕は水浴びでもしているのかと思い、慌てて隠れた。
しかし、しばらくすると足音が聞こえ僕の視界に彼女の顔が映った。
「やあ、さっきぶり。」
どうやら隠れたことがバレていたようで彼女のほうから近づいてきてくれたようだ。
「「どうして隠れるの?」」
「いや、水浴びでもしているのかと思って、、、」
「「なら、覗き?」」
「いやいや、違うって、、」
僕は慌てて否定する。
僕のあたふたしているさまを見て彼女は笑った。
「「あなた、面白い人ね。人族だし、魔獣や盗賊を討伐するくらい強いから怖い人かと思ってた。」」
「いや、別に普通だよ。討伐できたのは僕だけの力じゃないよ。」
「「ふ~ん、そっか。ねえ、すこし話さない?」」
僕は彼女の突然の誘いに驚いたがせっかくの機会なので誘いを受けることにした。
彼女は自室に戻るのではなくて孤児院を中心に草原を散歩しながら僕との会話を楽しんでいた。
「「ねえ、あなたはどうして孤児院にきたの?」」
ディーバはいきなり踏み込んだことを聞いてきた。
孤児にとって孤児になった理由はとても神経質な話題だ。
きっと暗い過去を持つものがほとんどだろう。
僕は彼女の考えることがわからなかった。
「「答えにくい?私のことを話したら教えてくれる?私、あなたに興味があるの。だから、知りたい。」」
彼女の瞳の強さから何かしらの強い意志があるように思えた。
僕は彼女の過去を無理に聞きたくはなかったので自分の過去を話すことにした。
両親の死と妹との突然の別れ、ジークに対する復讐の誓い、孤児になるまでの経緯をすべて話した。
彼女は僕の過去を黙って聞いてくれた。
「「大変だったのね。でも、聞けて良かった。じゃ、今度は私の過去を話すわ。あなただけ話すのはフェアじゃないもの。」」
ディーバが話し始めようとしたとき、僕は彼女の口に手を当てることでそれを阻止した。
「いいよ、僕が話したくなったから話しただけだから。それに、ディーバさんが話したくなったときに聞かせてほしいから今は聞きたくない。」
僕はそういうと彼女の口から手を離した。
「「わかった。ふふ、あなたのそういうところ好きよ。」」
ディーバはたまに子供らしからぬことをいう。
僕は彼女の行動にどきどきさせられっぱなしである。
ディーバは子供ながらに大人の女性のような色香をまとい始めている。
「「ねえ、お願いがあるのだけれど、、、私の騎士様になってくれない?私に危機が迫ったときには守ってほしいの。」」
彼女はすごく不安そうに森のほうを見つめながら言った。
僕はどうしてか、彼女のことを放っておけなくて言葉を返した。
「わかった。僕でよければディーバさんのことを守らせてほしい。」
「「ふふ、うれしい。なら、「さん」づけは不要よ。わかった?私の騎士様?」
「わかったよ、ディーバ。」
僕たちはそのあとも散歩しながら孤児院に帰った。
しかし、この時にディーバの言ったことをもっとよく考えておけばよかったと後悔した。
ここまで読んでいただき誠にありがとうございます。
これからも頑張っていきますので応援よろしくお願いします。