第一話〜出会い〜
人種差別などではありません。特別な少女ということで、このような設定にさせていただきました。この物語はフィクションです。実際の人物とは一切関係ありません。
あきれる。んだよ、人生こんなものなのか?
〜プロローグ〜
俺はしがないコンビニでアルバイトをしつつ、趣味の写真を撮り続けていた。
貧乏だったが、それなりに楽しかったさ。だが、働いていたところの店長は俺にこう言ったんだ。
「クビ!」てな。
今この不景気にそんな残酷な宣告をされた。
「なんでですか?」「ああ、うん、不景気でこの店も儲からんのさ。だからクビ」「ちょっと、今時仕事なんか見つかるわけないじゃないですか?!!」「お前はまだ若い。こんなの修行だと思え。じゃあな」「ちょ、ちょっと!」(バタン)「店長!閉め出さないでくださいよ!」
土砂降りの雨の中+地獄の宣告を受けた俺。
この出来事が一週間前のことだ。畜生!あの店長!考えただけでも腹が立つぜ。
今日はその時とは違い、大いに澄み切った晴れ。気持ちいい・・・・が。
この俺に家があり金がありカメラもあったのなら、さぞかし良い気分だったろう。
だが、今の俺には上記で挙げたものは何一つないのさ。
さぁ、勘のいいヤツならもう分かっただろうな。ああ、そうさ。
「俺はホームレスなんだ!!!」
憎い青空に向かって叫んだ。
〜第一章 突然の催し〜
俺の家と呼ぶべきものとは三日ほど前におさらばした。そんな俺の仮の住処は「公園」、「駅」、「道路」以上である。
同情はよしてくれよな。これでもホームレス仲間と知り合いなんだ。決して一人ではない。
で、問題だ。食べ物はどうしていると思う?
言っておくが、スーパーの試食コーナーではない。
・・・・時間切れだ。
「ズバリ、商店街なのである」
そこには人の優しいおじさんおばさんが居るし、1回だけご馳走をしてもらったこともある。
恩をもらいすぎているが、返すときのことは考えずにその好意に甘えさせている。
ということで、商店街へと足を運んだ。
いつものように騒がしいが、心地よいところだと思う。東京やら都会やらとは一風違った騒がしさなのさ。
今のところお腹が減っているわけではないので、そこらへんをブラブラする。
いつもと変わりなかった。そう、こうやって昼はあてもなく商店街を散歩していた。
前触れなどなかった。気がついたら、「いた」。
最初は気づかなかったのだが、怪しい人物を見かけた。
フードを目深にかぶり、全身真っ白な服装。サングラスまでかけていた。そいつは林檎の入った紙袋を抱えながら、こちらへ心もとない足取りで近づいてきた。
どくんっ どくんっ どくっっ
「バザバザバザ・・・ゴロゴロゴロロロロロ・・・ッ」
ハッとした瞬間に林檎は俺の足元や、道路を埋め尽くしていた。そいつは紙袋を落としてしまったんだな。
「スミマセン・・・ッ」
少女の涼やかな声だった。まるで風なのに甘い味がするよう。例えが変かもしれないが、そこはつっこまないといてくれ。
少女は林檎をせっせと紙袋に入れていくが、林檎はまだ無数に転がっている。
俺は、反射的に林檎を拾い、その怪しげな人物に差し出す。
その時少女は勢い良く顔を上げたものだから、サングラスが吹っ飛ん行き、フードが頭から外れ顔が見えた。
「・・・・!!」
俺は少女を見つめていた。少女も俺を見ていた。
驚きを隠せてないと思われる俺の顔に、少女が熱い視線を送る。
「!」
ふと、少女は気づいたように目を見開き、フードをかぶり直し俺の手を掴んでこう言った。
「来て」
是も非も言わないうちに少女は走り出し、俺と一緒に商店街から抜け出していた。
転がった残りの林檎を置いたまんま。
食わないんだったら俺によこしてほしいものだ。
来てと言われ、ついて行ったさきは川辺だった。まだ泳ぐのには早いぞ。というか、良い子のみんなは川遊びはしちゃダメです。
「何だ」
手を振り解き、俺はそう言った。
「見たでしょ」
少女は流れる清水を見つめながら、怒りを抑えるようにして声を発する。
「何をだ?主語を言え」
「顔」
「・・・」
そうだ、確かに顔を見た。フードが取れたとき。あれは驚きだ。
沈黙をYESと受け取ったのか、「やっぱり見たんだ・・・」と少女はため息をつく。
「?何故顔を見られたくないんだ?」
本当に分からなかった俺の質問に腹が立ったようで、
「なによ!顔見てわかんないの?!」と、フードをはずす。
そこにはさっき見たときより、肌が赤く染まっていたがそれ以外はなんら変わることなかった。
赤く染まった頬。雪のような肌。バラの花びらみたいな唇に、黄金の髪。
それと、宝石のような「赤い瞳」を吊り上げて怒っている少女の顔だった。
この顔を見ればまず、珍しいと感じるはずだろう。そして、こんな顔に自分もなりたいと思うことだろうよ。だが、少女は「この顔でいいことなんかひとつもない!」とプンスカ怒っている。
「どうしてだ?綺麗じゃないか」
正直に感想を述べた。
「みんなそう言うけど、この格好じゃ外なんか出られない」「恥ずかしいからか?」
「違う。私は色素が薄くて、肌も紫外線に弱いからすぐ皮膚癌になる可能性かあるのよ。目だって他から見ればルビーだのなんだの言うけど、昼間の日光なんか全然まともに見れない」
草の上に腰を下ろし、手の中に顔をうずめた少女。俺は少女の隣で遠くの方をを見てた。
しばらくして、涙をためた目で俺をながめ、こう発言した。
「あなたの瞳、ブラウンなのね。髪も黒くて素敵」
嫌味ではなく、羨ましがっているわけでもないこの少女は感想をもらすように、俺に笑いかけた。
天使の羽が生えているんじゃないか?ってぐらいに無茶苦茶可愛かった。
俺もつられて笑ってしまった。すると少女も微笑む。
気持ちがすぅっと青い空に飛んでいく気がした。
〜第二章 少女と〜
さて、今俺はある家の椅子に座っている。何故だろう?分かるか?
「はい、オレンジペコー」
少女が紅茶の入ったカップをテーブルに置いた。
そう、ここは少女の家だ。ではどういう経緯│{{いきさつ}}でこうなったかを説明しよう。
二人で笑いあった後のことだった。
「ねぇ、あなたどうしてそんなに汚い服を着ているの?」
「・・・汚く見えるかい?」
「えっと気を悪くしたのならごめんなさい。つい、気になったものだから」
「実はホームレスしているんだ。家ないからね」
「ええええぇぇぇぇ!!!!」
するとそこで少女は大きな声を上げた。
「だだ大丈夫なの?食べ物とか、ちゃんと食べてるの?」
心配そうにこっちを見ていた。
最初は怪しい奴と思ったが、意外と優しいんだな。
「ああ、大丈夫さ」
しばらく、風だけが聞こえてくるだけだった。
そして決意したように少女は立ち上がり、
「あの、良ければ私の家に泊まってもいいよ」
真剣な眼差し。目が赤く染まっている。ついでに頬も、朱色だ。照れているのかな?
「俺は別にありがたいと思うが、ご両親は・・・」
「ん?あ、いないよ。あたし、ずっと一人暮らしだから」
素っ気なく言い放った。よほどつらいと思うのに・・・どうみたってこの少女15〜17歳ぐらいにしか見えないぞ。無理しているのだろうか??
「え・・いいのか?」こういう場合はお言葉に甘えよう。せっかくの申し出を断る権利は俺にない。
「ええ、どうぞ」
少女は、柔らかく微笑んだ。この時、少女とならやっていけそうな気がした。
「じゃあ、頼むよ」本当に任せられる。しっかりしてそうだからな、この少女。
「OK!!」
という経緯だ。ありきたりすぎたならすまん。謝っとこう。
それにしてもこの家、一人暮らしには十分すぎるほど広すぎやしないか?もちろん、二人でもありあまるほど。
少女に聞いてみると「親が残してくれたもの」らしい。詳しくは少女に聞いてみるといい。
木造で50年前くらいに作られていそうなこの家は、外から見ると一見古めかしく見えるが中はちゃんと整えられており、少女がいかにも綺麗好きというのが分かる。
何もかもがピシッ!と整理整頓されているのだ。流石女子だな。俺の家なんかゴミ屋敷だったぜ。
今はもうその家もスッカラカンになっているんだろうな。なんて考えていると早速少女は洗濯物を干そうと大量の服を抱え階段を登ろうとしていたのだ。
「手伝うか?」そう声をかけた。
すると少女は「変態ッ!年頃の娘の着を見たいからって!」と変態扱いされてしまった。てっきり、「ありがとう」とか「優しいね」。あるいは「大丈夫だよ〜いつもやっているから」と言われるかと思ったのに。
女子とは分からんものだな。前言撤回!果たして上手くやっていけるのだろうか?さきが思いやられる。
〜第三章 一緒の〜
夕べは良く眠れた。少女がベッドメイキング、夕飯、お風呂など色々世話をしてくれた。あの少女はやはり、いい奥さんになることだろう。
今は6時半。意外と早起きしてしまった。ベッドから身を起こし着替えをする。髪をとかす。そしてトイレへ・・・・ってどこだろ。
廊下で少女を起こすか起こすまいかと悩んでいるうちに少女が姿を現した。
「ドアの前で何を考えているの?」
「トイレを・・」「あ!トイレか!場所教えてなかったね。トイレは外にあるんだッ。渡り廊下を渡って行くんだよ。こっちこっち!」
手でおいでおいでをしながら、声を発する。朝から元気だな。羨ましいぞ。
渡り廊下というものは屋根はついているが、壁がない。風が体を覆った。つくづくああ、この少女の世話になるんだと改めて思った。そこでフッと感じたことがある。それは・・「早く早くッ!」・・・感じたことが少女の声によってどこかへ飛んで行ってしまった。まぁいつか思い出すだろうよ。
昼。少女は食パンに特性ジャムをつけてくれた。不思議な色のジャム。何のジャム?と聞いた所、魔法のジャムなんて言われた。冗談だとは思うが食べてみるとこれまた美味い!マジで魔法なのかと信じてしまったくらいだ。
そんな俺はガツガツと行儀がなってない犬みたいに食べあさったのに、少女は怒りもせず赤い瞳を細め微笑んでいた。妙に可愛かった。
食器洗いの手伝い、お風呂掃除、床拭き、etc・・まるで大晦日の大掃除のように綺麗綺麗にしていた。
それからの日々は充実すぎるほど充実していた。相変わらず俺はぐうたらしていたし、少女はせっせと家事をこないしていたしな。
余裕が出来てしまうと、別の楽しみを見つけ出そうとしてしまうのが人間というものだ。そう、最近また「カメラ」を握ってみたいと思い始めていた。だが、そう簡単に手に入る代物じゃない。俺の使いたいカメラは、どっかの外国からとりよせたものを使っていた。それは売ってしまって、手元にはない。あぁもったいない事をしたなぁ。
少女に言って、「カメラを・・」と考えてもみた。だが、俺は世話になっている身なのに贅沢を言ってしまったら追い出されるのがオチだ。そんなの誰だってわかるだろうよ。
人間、面倒くさいな。我慢しようとすればするほど、どんどんほしくなってしまう。なんだ、馬鹿!偉そうに欲張るんじゃねぇ!と自分に言い聞かせても無駄だった。
そんな我慢と欲求の戦いを繰り広げていた真っ最中の食事時。
少女が作ってくれたシチューを食べながら、戦っていた。少女は思いつめたようにこう言った。
「何か、私に言いたいこと無い?」と。
超能力としか言いようのないくらい言い当てられた。まず最初はばっくれてみよう。
「ん?なんのこった」
「うそつけ。私に言いたいことあるくせに。ここ一週間ずっと眉間に皺が寄りっぱなしだよ?」
なんて表現しよう?女性は鋭い観察眼の持ち主だとは聞いたが、こんなまでにすごいのか?それとも俺の顔の作りが単純だからばれてしまったんだろうか?
「ぁあ、実をいうとな・・」「うん?何?」
暴露してしまおうと考えた。
赤い瞳は俺を見続ける。耐えられなくなった俺は目をそらした。
「なんでもない」これぐらいしか、言い訳はできなかった。つくづく、言い訳が下手だなと俺自身思う。
少女も、このイイワケには納得しておらず、口をアヒルのように尖らせながら「むぅ」と怒っていた。言うまでも無く、その顔は可愛かった。ベタ?
人種差別などではありません。特別な少女ということで、このような設定にさせていただきました。この物語はフィクションです。実際の人物とは一切関係ありません。