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第1章 エピソード2:繰り返すはずだった日常

長い期間が空いての投稿の謝罪を。

やるべきことが多い充実している年なので、計画をしっかり立てて今年を乗り切っていきたいです。

 「期待外れだ」


  加倉井 奏太は1人の読者としての感想を述べる。


 伏線が残りっぱなしで、歯がゆい終わり方をした漫画だった。


 モヤモヤした状態で家に帰るなんて、最悪だ。


 時計を見ると11時になろうとしていた。昼御飯でも買って、帰るとしよう。サンドイッチにするか。


 陳列したサンドイッチの中から、真っ先に手を伸ばして取ったのはレタスハム。


 やはりレタスハム以外は邪道。特にタマゴサンドなんて愚の骨頂。


 美しい緑色をしたレタスのあのみずみずしさとシャキシャキ食感が食欲をそそる。主張し過ぎないハムとからしソースがアクセントとして、レタスを際立たせるのだ。


 心の中で下手くそな食レポをしつつ、スープの代わりにカップ麺もカゴの中に入れて、ふと思い出す。


「そういえば野菜も取るように言われてたな……」


 サラダに手を伸ばそうとしたが、レタスを食べるから大丈夫だろうと勝手に納得して、サラダは買わなかった。


  「ありがとうぅございやしたぁ」


 店員の全く感謝のかけらもない見送り言葉と共にコンビニから出て行き、小石を蹴りながら、とぼとぼと足を運ぶ。


 このまま家に帰る。ただそれだけの行動なのになぜこうも億劫なのか。


 この後、何をしようか? 宿題は終わってしまった。買ったゲームもやり尽くした。将来のために勉強すればいいのか?そうか、ここはそういう世界だった。自分の人生を豊かに豊かに耕していく。耕して、水をあげて、肥料を与えて、また水をあげて…繰り返し、繰り返されたあげく、土壌の俺はダメになってしまった。疲れ切ってしまった。蹴っていた小石もいつのまにか消えて、歩道と車道を阻むガードレールも目に入らなくなり、目に映るのは白くなった道と、白くなった壁と、白くなっ……………白?



ーー影ひとつない、恐ろしく真っ白な空間に加倉井奏太は立っていた。


 ****


  人はあまりにも突然の奇怪に出会うと声が出ないということを聞いたことはあるのだが、まさか自分がその体験者になるとは夢にも思わなかった。


 普通なら怖がって、その場で塞ぎ込んでもおかしくない状況で、あえて前に進んでみる。


 怖いのか?と聞かれたら、少し違う。だが、冷たい汗が背中を伝うかぎり、どうやらかなり動揺しているみたいだ。


 ここはどこなんだ?どうして俺はこんなところに?じゃあ、いつから?どこで?どのタイミングで?


 浮かび上がる数々の疑問に揉まれながら、一歩また一歩と進み続ける。進むしかないのだと、なぜか体が覚えている。


 左足を前に出して、次に右足を出して、左を出して、右を出し、左、右、左、右、左、右、左、右、左、右、左、右、左、右、左、右、左、右、左、右、左、右、左、右、左、右、左、右、左、右、左、右、左、右、左、右、左、右、左、右、左…………


 どれぐらい歩いたかも忘れてしまった。疲れもなぜか感じない。徐々に視界が白い空間に慣れていき、それと同時に思考も徐々に徐々に白くぼやけていくような気さえしてくる。



「やぁ、平凡な日常はどうだったかい?」



 軽い、とても軽い重みが肩に乗った気がした。どうやら誰かの手みたいだ。曖昧になってしまった思考を戻しつつ、ゆっくりと振り返る。


 そこにはこの空間にも負けない真っ白で美しい少女が、無邪気な笑顔をこちらに向けていた。


この小説を読んでくださり、ありがとうございます。

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