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第1章 エピソード1:退屈な1日の始まり

自分の力量として、1500文字くらいを目安に書いていこうと思います。書けるならもっと書く。話を濃厚に濃厚に。

 ぼんやりと目が覚めて、少しシミが入った天井とにらめっこを繰り返し、今日がまた始まるとため息を吐いた。


 「さっきまで異世界だったのに……夢だけど」

 

 スマホの画面を覗いてみると、猫の画像の上に8時43分と現在の時刻が書いてある。


 休みだというのに早起きをしてしまったという倦怠感に駆られながらも、上体を起こして再びため息を吐いた。


 無機質な床に足をつき、鏡台で自分の姿を見る。


 寝癖のついた頭頂部、男だというのにサラついた黒髪、良くもなく悪くもない顔のパーツ、少しだけ特徴があるとすれば、癖っ毛のせいでちょうど真ん中で分かれてしまう前髪。


 今日も変化なし。期待外れの自分の姿がそこにあった。


 寝起きのまま自分の部屋を出てリビングに向かったが、薄暗くて静かだ。家族はどうやら全員外出したらしい。休みなのにご苦労なことだ。


 テーブルの上に紙がある。字の形を見る限り母さんだろう。


『奏太へ 今日は遅くなるので、コンビニで昼御飯と晩御飯を買ってください。野菜もしっかり食べること!』


 余計なお節介が添えられた手紙を読み終え、一緒に挟んであった諭吉を受け取り、腹も減ったことだし、早めに近くのエイトトゥエルブに行っておこう。


 少しダボついた寝間着のジャージから、パーカーから下のズボンまで全てプニクロ一式である普段着に着替え、俺は見慣れた鈍く輝いているドアノブを回し、いつもと変わらない無色の世界に飛び出した。


****


 今日は休みなのか人も車も多いようだ。うるさいし、鬱陶しい。仕方ない、イヤホンでもつけるか。


 忙しなく走る車を横に、絶賛歩きスマホをしながら今日のニュースを読んでいた。


 国の財政状況、他国との外交的解決に向けて、エンタメの方は人気女優が結婚、つまらない一発芸で大ブレイク中のピン芸人、アニメ、ゲームその他諸々。


 ここ日本はいつになっても何も変わらない。いや、変わろうとしない。この平和で退屈な毎日を常に継続していこうと努めている。


 もちろん平和は素晴らしいと思う。平和万歳だ。しかし、そこから何も進展しないじゃないか。


 国がデカイことをおっぱじめないせいで、より高みの世界に行けなくなってしまった。腐った平和至上主義のせいでな。


 おかげで学生という身分である俺は、毎日同じ通学路を歩き、見慣れた校舎の中でどこで使うか分からない勉学に励み、つまらないことで友達と笑い合い、また同じ通学路を歩いて行く。この繰り返しだ。


 道行く人々も、店内で働く人も、はしゃぎ回る子供も、全ての人間が私は僕はこのつまらない毎日が幸せですとほざいているようだ。


 「反吐がでる。気持ち悪くて仕方がない。」


 つまらない世界の中で閉じこもり、さも自分が世界一幸せ者だと自負し、さらなる進化を求めず、停滞し、ただただ滞っていく。


 全国民がせっせと国の家畜として働いている。まるで豚だな。現にこの俺も示されたルートに歩かされている一匹の豚だ。


 例えば異世界に飛ばされるとか、自分の身に想像を絶することが起こってくれないだろうかと、くだらない期待ばかりをかけてしまう。


「はぁ……退屈だ……」



――退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈 退屈――



 自身の情けなさと世界の不変さに呆れて出た独り言が、より自分を苦しめているのだと気づかない。



――自分の存在自体もつまらないものだとも気づかない。



 そうだ、今日発売される漫画雑誌パンデーを買わないと。母さんには秘密で。


 コンビニに近づくにつれ、漫画の最新話に期待が高まっていく。

 どうかこの味の無い期待だけは裏切らないでくれと。



――加倉井 奏太は、今日も退屈な一日を過ごしていた。


 

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