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異世界転生・転移ではない話

トンネル、異世界、もれなく冒険者

作者: よぎそーと
掲載日:2017/11/15

「こんちわー」

 ぞんざいな挨拶をしながら店に入っていく。

 見た目は粗末なものだが、その実頑強な作り建物の中にあるそこは、商品がぎっしりと詰まっていた。

 最新型とはいかないが、実用にたえる銃器の数々。

 地球の治安の良い場所であればそう滅多にお目にかかれない程の品揃えである。

 それでもここでは日常的に用いるものでもあり、客足は絶えない。

 閉店時間以外は誰かしらが店の中にいる。

 今も同業者達が陳列されてる商品を見ながら頭の中で銭勘定をしていた。

 そんな者達の間を縫って、新たに入ってきた者は店員の所へと向かう。

「小口径ライフル弾を300発。

 弾倉を10個」

 必要な物を口にすれば、すぐにそれらが彼の前に並べられていく。

 この近隣で作られてる粗悪な模造品ではない。

 地球の向上で作られた本家本元の純正品である。

 値段はその分高くなるが、確実に撃ち出されるという信頼性があった。

 この世界では、武器がまともに動作するかどうかで生存確率が変わってくる。

 収入と懐具合と相談してからになるが、出来るだけよりよい物を揃えるのが生き残る為の手段となる。

 金を惜しんで命を失ったら元も子もない。

 幸いな事に彼は、今日のこの日まで生き残り、必要な物品に金を払えるようになっていた。

「あと、手榴弾もあれば」

「何個?」

「20」

「ちょっと待ってな」

 そう言って店員は一旦店の奥へと下がっていく。

 さほど待つ事なく戻ってきた時には、腕に段ボール箱を抱えていた。

「ほらよ」

「はいよ」

 箱を受け取り、中身を確かめる。

 確かに20個の手榴弾が中に入っていた。

 それを見て男は、懐から財布を取り出す。

 この場所にクレジットカードなどという便利なものを取り扱ってる店などない。

 いつでもどこでも現金払いが基本であった。

 まだ社会基盤がそれほど普及してない事と、即座に使える現金が必要な場面が多いからだ。

 何より、何時どこで誰が死ぬのか分からない状況である。

 クレジットカードを使えるほどの信用を持つものなどほとんどいない。

 今日は生きてるが、明日は死体になってるなんて珍しくもない。

 そんな者達に与信を与えるような会社などまず存在しない。

 ここで弾丸と手榴弾を買い込んだ男とて同じである。

 それでも彼は金を支払って武器を買い込む。

 明日も危険な場所に潜り込み、稼ぎを得る為に。

 用を済ませて店を出て行く男に、店員は「まいど」と素っ気なく言葉をかける。

 常連ではあるが明日もまた来るかは分からない。

 その為、関係性がどうしても薄くなってしまう。

 接客としては落第、しかしこの辺りでは比較的ましな対応を受けた男は、特に何も言わずに店を出て行った。



「明日からだな」

 舗装されてない道に停まった車の前。

 おそらく仲間同士であろう数人の男達が話し合っている。

「二週間だから、大分楽だな」

「けど、最前線だぞ」

「しょうがないだろ、他に仕事もないし」

 そういって一人がため息を吐く。

 危険を考えると仕事にありついたとて安心は出来ない。

 むしろ、これからが本番となる。

 気を抜いて死ぬわけにはいかなかった。

「暫くは寝床と飯付きなんだからまだいいけどよ」

「きついよな」

「他に仕事がありゃあいいけど、そうもいかねえし」

 分かってるからこそ嘆きたくもなる。

 このあたりでは比較的楽して稼げる仕事なのだが、やはりきついことに変わりはない。

「まあ、いいじゃねえか。

 モンスターの襲撃に震えるだけのお仕事だ。

 それで日当と飯が出るんだし」

「おまけに交代で寝る事も出来るってな」

「最高だな、本当に」

 本心からそうは思ってない口調でそう言うと、男はやけっぱちな調子の笑みを浮かべた。

「ま、明日までは自由だ。

 それまでは好きにしておこうぜ」

「はいよ」

「じゃあ、また後で」

 そんな事を言いながら彼等は散らばっていく。

 何人かは自分の足で、何人かは車に乗って。

 彼等がどこに行くのかは分からないが、仕事に入るまでの時間をめいいっぱい楽しむのだろう。

 懐にあるなけなしの金を使って。



「いらっしゃーい」

 そういって出迎える女は、席についていく客の前にお冷やを置いていく。

 そのまま立ち去ろうとした彼女に、客は「ビール」とだけ告げる。

 注文をとった女給はカウンターへと向かい、注文を口にした。

「ビール」

 すぐに店員の一人がコップと500ミリリットルの缶を渡してくる。

 それを受け取った女給は注文を出した客にそれを持っていった。

 この場所ではこんな調子の商売が普通である。

 客も文句を言わずに缶を開けてコップに注いでいく。

 多少なりとも冷えてるだけマシというものであった。

 酒のつまみや小料理などが手作りであるのは救いであろう。

 味の方は決して美味ではないが、まずいと言える程でもないので、この付近では評判が良い。

 その程度の店であるが、このくらいの質すらままならない場所なので、ある意味高級店という扱いにもなっていた。

 もっとも、客層の柄の悪さが品位を損なってるとはいえる。

 それでも、店の中で暴れ回ったりするような馬鹿がいないだけマシである。

 誰もがこの貴重な店を保つ為に、様々な不文律を作り出していったおかげであった。

 店の方も、客の金払いの良さのおかげでそこそこ繁盛している。

 宵越しの銭は持たない連中が多く、財布の中身を一晩で散財するなんてのも日常の一こまである。

 おかげで売り上げは割と多いと言えるだろう。

 もっとも、次回以降の来店の可能性が低いため、一人当たりの支払いが大きくてもその合計はそれほど多くはない。

 どうしても一定数以上に増えない客の数が売り上げの上限となってしまっていた。

 それでも店は今日も気っぷの良い客のおかげで順調に黒字を書き連ねていく。

 そんな店の中で、客の一人が女給と話合っている。

 注文を出してるだけではあるが、その中身が違う。

 酒や飯ではない、この店の出してる別の歓待についてであった。

 何度か言葉を交わした後で女給は一旦カウンターへと戻っていく。

 それから店員と幾つか言葉を交わして状況を確かめ、再び客の所へと戻っていく。

 手に鍵を持って。

 それを見て客も席から立ち上がる。

 二人はそのまま二階へと上がっていき、いくつかある寝室の中に入っていった。

 飲む物と食う物以外にも欲求を満たす事を生業としてるこの店は、こうして今日も更なる売り上げを達成した。

 人間の三大欲求である、食・寝・色の三つを提供するこの店は、こうして様々な欲を満たしていく。



 そんな町に航空機が到着する。

 旅客機なんて気の利いたものではない。

 荷物を運ぶ為だけの無骨な輸送機である。

 週に一回やってくるこの飛行機は、取り急ぎ必要な物資や、割だかな運送費を払える者達が求めた物を運んでいる。

 この日もそうした物資を運びこみ、そしてここで取れた物資を腹に入れて飛び立っていく。

 そうしてやってきた荷物は、必要な所に運び出されていく。

 受取人に直接渡される事もあれば、一旦倉庫に保管される事もある。

 そうした中には、物ではなく人も混じっていた。

 快適とは決して言えない輸送機で運ばれてきた者達は、必要な手続きを経てからそれぞれの用のある場所へと向かっていく。

 役人や軍人、仕事でやってきた者達がほとんど……というわけでもない。

 むしろここまでやってくる者達で最も大きな比率をほこってるのが、行く当てのない者だった。

 そんな者が今回もやってきて、そのまま決まった場所へと向かっていく。

 テーブルを並べただけの受付口に並ぶ者達は、パスポートも身分証明書もない。

 それらを所持しているような者ならばもっと別の受付窓口があるが、そんな上等な人種がこんな所を訪れるのは希である。

 そして、そんな彼等を前にして、係官達もさして動じたりはしない。

 無機質に淡々と作業をこなしていく。

 並んだ連中にこの場所における身分を証明するプラスチック製のカードを渡していく。

 それから左肩を出させて、そこに圧着型の入れ墨刻印機を押し当てる。

 身分をはっきりさせるための最も簡単な手段である。

 国によっては人権侵害などと言われかねない措置であるだろう。

 だが、ここでそんな事を言う奴はいない。

 人権などという何の価値もない理論で治まるような上等な場所ではない。

 そもそもとして身元が分からない連中ばかりなのである。

 こういう形で誰なのかをはっきりさせない事には収拾が付かなくなる。

 そうやって刺青という刻印を刻まれた事で、この町の住人であるという証明にするしかないのだ。

 また、こういう形でようやく身元不明の人物達にも、多少なりとも存在証明がなされる事になる。

 それから彼等は写真をとられ、指紋を採取され、血液を確かめられ、遺伝子登録をされていく。

 それらが終わってから彼等の名前やら年齢やらといった個人情報が求められていった。

 もちろん、彼等が申告するそれらが本物であるかは分からない。

 分からないがここで彼等が申告した情報がこれからの彼等の素性となる。

 それを彼等自身に紐付けさせるために、個人情報と本人を結び付けるためにはっきりと分かる印が必要であった。

 刺青とは、その為の手段であった。

 登録された個人情報と、刻印を受けた者を結び付けるための。

 こうして彼等はそれまでの経歴を捨てて新たな人間として生きる事になる。

 もっとも、ここからの余生がそれ程長いというわけでもなかったが。



「並べー!」

 集まった者達が一塊になっていく。

 並べと言われたのに列を作るというわけでもない。

 そんな事が出来るような規律など持ち合わせてないのだから当然であろうが。

 それでも声に従うだけ分別がある方だ。

 言っても聞かないような連中だっているのだから。

 そんな者達に呼びつけた男が説明をしていく。

「これからトンネル内部に向かう。

 飛行機で二時間。

 中で喧嘩なんかすんじゃねえぞ」

 そう言って男は、すぐ脇に停車してたピックアップトラックを顎で示す。

「さっさと乗れ。

 飛行機まで送っていく。

 乗り切れない奴らは歩いていけ。

 途中で戻ってきた車がお前らを連れて行く」

 それだけ言うと説明は終わりとなる。

 言われた者達のほとんどもそれ以上の説明を必要としない。

 もう何度か経験してるので、あらためて聞くまでもない。

 本日やってきたばかりの新米もいるが、それらも周りの動きを見てなんとなく真似ていく。

 そうやって何度かに分かれて飛行機まで連れていかれた者達は、待機していた輸送機に乗り込んでいった。

 荷物同様に詰め込まれた者達は、そのまま空へと飛び上がり、トンネルと呼ばれた場所へと向かっていく。

 銃器で武装した物騒な連中の集まりを抱えた輸送機は、やがて見えてきた直径10キロはある地面の大穴へと飛び込んでいく。

 中にいた者達は機体の傾きからそれを察し、手近にある何かに掴まった。

 すぐに上下の感覚は元に戻るのだが、それまでは幾らか傾斜した状態が続く。

 それを凌ぐため、体を何かに固定してなければならない。

 何度もやってる経験者達は雑作もなくこなしていくが、やってきたばかりの者はそうはいかない。

 ここでは恒例となっているが、慌てふためき、機内を転がっていく新米を見て周りの者達が笑っていく。

 それはこの仕事における通過儀礼のようなものだった。

「しっかりしろよ、新米」

 少しばかり気の利く男が声をかける。

「すぐに上下は元に戻る。

 それまで踏ん張りな」

 それを聞いた周りの者が、また少しだけ笑った。



 輸送機が飛び込んだ大穴の内部では重力の働く方向は変わる。

 地面に対して垂直になってる大穴の壁面は、中に入ってほどなく地面となる。

 壁に向かって重力が働き、そこに立つ事が出来るようになるからだ。

 このため、大穴はそのまま長大な横穴となり、巨大なトンネルに変わる。

 その中を輸送機は進み、やがて目的地にたどり着く。

 地面を均しただけの簡素な飛行場。

 そこに着陸し、中から人を吐き出していく。

 すぐにやってきた車が、到着した者達を乗せていく。

 彼等はそれから到着後の手続きをし、荷物を置いてから作業に放り込まれていく。

「急げ急げ!

 遅れたらお前らの命もないからなあ!」

 怒声が響き渡る。

 それに反発する事もなく到着した者達は割り当てられた場所へと放り込まれていった。

 塹壕、防壁の上の監視等、巡回当番の詰め所。

 それらの中で、自分の仕事をこなしてく。

「何かに気づいたら報告しろ。

 襲ってくるなら迷わず撃て。

 死にたくないなら死なないようにしろ」

 彼等の背中に指示とは言えないような乱雑な言葉が投げかけられていく。

「相手はモンスターだ。

 躊躇ったりするな。

 迷ったりするな。

 少しの遅れがお前の命と、この基地の崩壊に繋がるからな!」

 いまだ通り抜けてない大穴の最前線。

 奥地に向かうための出発点になる基地の中で、新たに配置についた者達が防衛に当たっていく。

 押し寄せるモンスター達を防ぐ最前線にて、彼等の仕事が始まっていった。

「分かったな冒険者ども!」

 叫び声に返事はない。

 だが、言われるまでもなく誰もが目の前の薄い暗がりに目を凝らしていった。



 世界にあいた大穴は、異世界に通じていた。

 直径10キロを超えるそれらは、数万キロの長さを持ち、地球と別の世界をつないでいる。

 それらは新たな居住地と開墾地、資源をもたらした。

 同時に、様々なモンスターとの接触も始まった。

 伝説や伝承にあったものから、全くの未知なる存在まで様々な存在があらわれ、戦いに発展していく。

 予期せぬ出来事は想定外の事態を引き連れ、人類に多少の動揺と混乱を与えた。

 だが、人の欲はそれらを上回った。

 人口問題に食糧問題、資源の枯渇に環境問題などを解決するために、少なくとも課題の先送りのために人は新天地を求めた。

 世界各地に開いた穴は、そのままトンネルとして異世界に向かう手段となり、血みどろの開拓を促している。

 送り込まれた異世界で人は居場所を作り、探索をし、遭遇する脅威と戦っていった。

 地球では失われた冒険は、異世界にて復活を果たした。

 そして見つかった資源や快適な居住地を求め、人は更に足を伸ばしていく。

 そんな異世界で、更に別の異世界に向かう大穴を発見し、人類は自分達に果てしない大地が与えられたと感じた。

 どこまで続いてるのか分からない大地の先へと向かうため、今日も数多くの冒険者達が異世界へと渡っていく。

 とりあえず、こういうのを考えてるというのが伝われば良いかな。

 実際に話を作るとなるとかなり大変ですが。

 しかし、あれこれ悩んでるだけで表に出さなければ意味が無い。

 そう思って、とりあえずこういう形で出してみることにした。

 現代にファンタジーやRPG的な要素をぶち込んでみたい。

 それと、この話にも魔法や超能力といた要素はあります。

 文中に出てきてないだけで。



 他にも短編はあるので、よろしかったらどうぞ。


「ふたつの国のお話」

https://ncode.syosetu.com/n2330ej/


「その恨み、はらします」

https://ncode.syosetu.com/n2888ej/


「ゾンビに囲まれて」

https://ncode.syosetu.com/n3368ej/


「聖者は教えを説いていく」

https://ncode.syosetu.com/n3820ej/


「魔族の国」

https://ncode.syosetu.com/n7030ej/



 最近滞ってるけど、長編もやってます。


「なんでか転生した異世界で出来るだけの事はしてみようと思うけどこれってチートですか?」

https://ncode.syosetu.com/n3761ef/


「捨て石同然で異世界に放り込まれたので生き残るために戦わざるえなくなった」

https://ncode.syosetu.com/n7019ee/

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