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第五話―今日からわしも冒険者じゃ!


 その街は活気に溢れていた。客を呼ぶ声が飛び交い、たくさんの冒険者や旅行者などが道を歩いている。ここは西区、商業地区だ。大きな道には露店が立ち並び、飲食店や雑貨屋をはじめ、武器屋、防具屋、様々な店が軒を連ねている。


「これはすごいのじゃー!ここは武器屋かのぉ。こっちからはおいしそうな匂いがするのじゃ!おお、あれはなんじゃ?何かのアイテムか?」


「ほら、あまりはしゃがないの。一緒に歩いてる私達が恥ずかしいわ」


「すまんすまん、こんな活気に溢れた街に来るのは初めてでな」


 前世も己を鍛えるか、引きこもってゲームするかだったからの。


「とりあえず服飾店に行きましょ。いつまでもローブ一枚のままじゃカイルみたいな奴に襲われるわよ」


「それもそうじゃな。しかし可愛い服を着たら余計危ないのではないか?」


「お前ら……いつまでそのネタ引っ張るんだよ。まぁいい、俺とフォルクはギルドに報告に行くからここまでだな。昨日は一晩世話になった。俺らは中央区のギルドによくいるから何かあれば声をかけてくれ」


「そうか、こちらこそ色々と世話になったの。また会おう」


 さて、確か服飾店はあちらの方じゃったな。いやー、それにしてもゴーゴルマップは便利じゃな。まさか異世界でも使えるとは。


「何見てるの?何この変な模様」


「ん?ただの地図じゃが。目的地を言うとそこまでの道を示してくれるのじゃ」


「地図!?なんであんたがそんなもん持ってんのよ!」


「……クレア、声が大きい」


 なんじゃ?もしかしてまた、わし、やらかした?……ああ、なるほどそういうことか。確かに地図なんぞこの文明レベルで持ってたらまずいかもしれん。下手したら国家機密になるような物じゃからな。


「すまん、わしが迂闊じゃったな。このアーティファクトの機能の一つなんじゃ。今後は気を付けよう」


「とことん常識知らずね……下手したら他の国からのスパイとして国家反逆罪で捕まるわよ。それを見ただけで地図とわかる人はまずいないでしょうけど、用心するに越したことはないわ。使うなら私達しか周りにいない時にしなさい」


 本当に気を付けねばいつの間にか牢屋にぶち込まれてそうじゃな。前いた世界とは違うんだという事をしっかり認識しておかねば。


「いらっしゃいませー!」


「この子に合う服が欲しいのだけれど、見繕ってもらえるかしら」


「こ、この子ですか?本当に私なんかが、こんな可愛い子の服を見繕ってもよろしいんですか?お任せください!私が腕によりをかけて最高の服を見繕ってあげます!!はぁはぁ……」


 こやつ、只者ではない。その獲物を狙う鋭い眼光、細くはあるが全くぶれない重心からわかる鍛え上げられた肉体、何より全身から漂うオーラは絶対強者のそれである。そこらの獣など姿を見ただけで逃げ出すだろう。これはまずい。わしの脳が全力で逃げろと警鐘を鳴らして……ガシィッ!!


「お客様?どこへ行くのですか?そちらは出口です。お客様に合うサイズはこちらですよ」


「い、いやじゃ~!殺されるのじゃ~!」


「大丈夫よ。皆同じこと言うけど殺された人はいないから。この街に可愛い服を売ってる店は他にないの。皆が通る道だから我慢なさい」


「……ご愁傷様」


 それから数十分……ずっと着せ替え人形にされたわしは疲れ果てていた。


「これはどうかしら!やっぱり銀髪には黒が合うと思うのよね!ああ、でもこっちの白も捨てがたいわね……こっちのドレスはどうかしら!」


「そうね、私はこの赤と黒のドレスがよく似合うと思うわ」


「……こっちの青いの」


「動きやすい服でないと困るんじゃが……」


「大丈夫です。冒険者用の動きやすい可愛い服も一通り揃えてありますのでご安心ください。なお、お客様は可愛いので今回のお代はサービスさせて頂きます」


 つまりまだまだ着せ替えショーは続くということか……それは全然大丈夫ではないんじゃが。というかこの店はそんなにサービスして経営は大丈夫なのか?まぁ貰える物はありがたく貰うが。


「つ、疲れたのじゃ……」


 結局クレア、ラピス、店員さん、それぞれが一着ずつ、計三着選んでくれた。ちなみにわしが動きやすそうだからと選んだ服は全て可愛くないと却下された。クレアが黒いフード付きパーカーに白いワンピース。ラピスが暗い青と黒のゴシックドレス。店員さんがゴスロリカーディガンに白のアンダーウェア。確かにどれもスカートは短いんだが……こんなにフリルだらけで本当に動きを阻害されないのじゃろうか。


「大丈夫ですよ。残念ですが服に魔法がかかっていて多少動いたところで下着が見えたりはしないようになっています。鉄壁の防御です」


 そんな心配はしていないのじゃが……

 なお、今着ているのは店員さんが選んでくれた服だ。誰が選んだのを最初に着るかで口論が始まりそうだったので、じゃんけんで決めた。


「ありがとうございましたー!またご利用ください、サービスしますので!」


「それじゃあ次はギルドに登録しに行きましょ」


「……私は宿をとってくる」


 ラピスとは一旦別れ、クレアと二人でギルドに向かう。


「ほら」


 クレアが手を差し出してくる。……?握手か。


「違うわよ!あんたが危なっかしいから手を繋いであげるって言ってるの!」


 もしかして、わしを妹と重ねておるのか?だからあんなに悩んでいたのかもしれんな。あとデレるのも早かった。

 途中で色々な店に釣られそうになる度にクレアに手を引っ張られ、無理やりギルドに連れてこられた。「初めての街なんじゃから、ちょっとくらい寄り道してもよいではないか」と言ったら見たこともないお菓子を買ってくれたので、満面の笑みで「ありがとう、お姉ちゃん!」と言ってやると、真っ赤な顔で思いっきり頭を叩かれた。サービスしてやったのに。

 ギルドの中はかなり広かった。待ち合わせをしつつ食事もできるようになっているようだ。屈強な男達が酒を飲んでいる。


「ん?ここは冒険者登録用の受付だぞ。依頼の申請は向こうのカウンターだ」


「失礼ね、見た目で判断しないでちょうだい。私は冒険者よ。何度か来ているのだけど、見覚えないかしら?今日はこの子の登録に来たの」


「おい、嬢ちゃん。冒険者は遊びじゃねぇんだぞ。そのカードを見ると確かに冒険者みたいだが、本当に危ねぇんだ。自分ひとりで無茶して死ぬなら自己責任だが、妹まで巻き込んで死ぬのはやめろ」


「えっ、私達、姉妹に見えるのかしら。えへへ、むさい顔してるクセにいい事言うじゃない。でも私達なら心配いらないわ」


 めっちゃにやけている。そんなに姉妹に間違われたことが嬉しいのか。


「顔は関係ねぇだろ!いいからやめておけ。もう少し成長して鍛えてから出直すんだな。すぐに死ぬのがわかっていて登録させるわけにはいかない」


「なら試してみる?うちの妹は強いわよ?」


「ふむ……なら俺に一太刀でも浴びせられたら認めてやろう」


「望むところよ!」


 わしの意見は聞かないんじゃな……そしていつの間にか妹にされている。

 受付のおっさんに案内され奥にある修練場に向かう。


「武器はそこから好きな物を選べ。刃は全て潰してあるから安心しろ」


 剣に槍、斧や鎚など様々な武器が置いてある。


「むぅ、さすがに刀は置いてないか」


「刀?ああ、東方の島国の者が使う片刃の剣か。さすがに置いてねぇな。なんだ、嬢ちゃんは東方の出なのか?」


「まぁ、そんなところじゃな。刀がないとなると……これじゃな」


 一応どの武器も一通り扱えるが、小さな体躯を生かして短剣を使うことにした。小さな体で超重武器というのも浪漫があるが、まだ新しい体に慣れてない内から大きな武器を使うのはやめておく。


「決まったようだな。ルールは簡単だ。時間内に俺に一太刀浴びせれば合格。十分経過するか、お前さんが参ったと言えばその時点で終了だ。質問はあるか?」


「そうじゃな……お主が参ったと言った時も終了。とした方がよいのではないか?倒してしまっても構わんのじゃろう?」


「随分な自信だな。これでも俺は昔はAランク……ほう、言うだけの事はあるみてぇだな」


 わしが構えるとおっさんの目つきが変わった。Aランクか、この世界の実質最高ランクじゃな。自分のこの世界での実力を試すには申し分ない。

 おっさんは両手で大剣を構える。では、少々本気で行かせてもらうとするかの。


「では、()くぞ」


「なっ……!」


 開幕縮地で一瞬にして距離を詰め、背後から逆袈裟に斬り上げるが、間一髪大剣で防がれてしまう。

 さすがAランク。一閃では決めさせて貰えぬか。しかし、ここはもうわしの間合いだ。一度懐に入ってしまえば、大きな武器は振る事ができず盾にしかならない。右に左に、左右にフェイントを織り交ぜながら連撃を繰り出す。おっさんは必死に大剣を盾にして防ぐ。


「くっ……そ、離れろ!」


 それでも大剣を前に押し出すようにして無理に距離を取ろうとするが、それは愚策だ。大剣を潜り足元に一撃。そのまま背後に回りつつ足を払い、背後から喉元に短剣を突きつける。


「ま、参った……俺の負けだ」


 ふむ、まぁAランクと言っても冒険者が相手をするのは魔物だからな。対人戦に慣れている訳でもなかろうし、こんなところじゃろう。短剣じゃ大きな魔物に斬りつけたところで致命傷には程遠いしの。

 クレアが呆然としている。そういえば戦闘しているのを見せたのは二回目だが、前回はほぼ防戦に徹していた。ここまでとは思わなかったのだろう。


「ちょ、ちょっと、強いとは思ってたけどこんなに強かったの!?このおっさんAランクって言ってたわよ!」


「ああ、見た目で判断して悪かったな。合格だ。まさかこんな子供があそこまでできるとはな」


「しかし、不意をついただけじゃからな。もう一度やればわかるまい。それにお主は対人はあまり慣れておらぬだろう?」


「だが、勝ちは勝ちだ。登録してやる。ついてこい」


 ロビーがざわついている。「剛剣のゴルドから一本なんて取れるわけねぇ、どうせ色仕掛けでも使ったんだろ」とか「ガキが倒れて手を差し伸べたところに隙をついて一本入れられた」だとか色々言われている。まぁ、この見た目じゃ無理はないかもしれんがな……


「黙れてめえら!この嬢ちゃんの実力は本物だ!文句があるのなら俺に言いやがれ、相手してやる!」


 おっさんが叫ぶとギルド内が静まり返る。

 仮登録でもらった板をおっさんに渡すと後ろの壁にある箱に板を差し込んだ。あれで何かを読み取っているのだろうか?


「今ギルドカードを発行している。あの板に書いてあるデータの他に、ギルドで使うデータと身分証明用の個人情報が必要だ。この紙に書いてくれ。魔法で自動的に変換されるので言語は問わない」


 そう言って渡された羊皮紙に名前、出身、得意な武器や魔法などを書き込んでいく。何も言わないところを見ると異世界の言語でも問題ないようじゃな。


「書き終わったか?それじゃあカードに情報を入れてくるから待ってろ」


 ふぅ、今日は疲れたのぉ。後は宿に行って寝るだけじゃ!

 しばらくして、血相を変えたおっさんが裏から出てくると完成したギルドカードをこちらに突き出してきた。


「おい、これは何の冗談だ?ちょっと話を聞かせてもらうぞ。ついてこい」


 そのギルドカードにはこう書いてあった<種族:吸血鬼>と。

 まだ長い一日は終わらないらしい。


最近忙しくてマイクラをする時間がないのじゃ……

小説に登場する街とか作ってみたいんじゃがな


早く魔法ぶっぱするシーンは来ないものかのぉ

厨二詠唱考えたいのじゃ

心躍るのじゃー


17/9/26

・無駄な空白を削除

・言い回しなどを細かなところを微妙に修正(物語に影響はなし)

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