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【完結済み】 ヤンキー GO 異世界  作者: 鳥居忍
第一章 始まりと出会いと
7/17

#7 エピローグ 

「ったく……なんでこんなことになっちまったんだ……」


 ベッドサイドにあるテーブルの上のランプに照らされた宿屋の一室。ジンはベッドに座り頭を抱えている。服装はマントのままだ。

 目の前にはベッドが2つ等間隔で並んでいる。


「どうする……いや、どうするもこうするもないよな……」


 そんな事をつぶやいていると、ドアが開いた。


「ふう、いいお湯だった。あんたも入ってくれば?」


 宿屋の貸し出す、ゆったりとした白いローブのようなパジャマを着たエルザが、茶色の長い髪を拭きながら部屋に入ってきた。手には先ほどまできていた洋服が入ったカゴを持っている。

 ジンはその姿に思わずつばを飲み込んだ。胸当てで気付かなかったが、エルザの胸は大きく、身長も高いこともあって、まるでモデルのようだった。

 その顔も、酒場でも思ったが、何度見てもジンが今まで出会ったことがないほどの美人である。

 そして、入浴後でしっとりと濡れた髪と、少し赤くなった肌も非常に色っぽい。急に恥ずかしくなったジンは慌てて目をそらした。


「なによ? あんまりあたしが美人だから照れてるの?」

「ば、馬鹿言ってるんじゃねぇよ」

「じゃあ、あたしは美人じゃないの?」


 エルザはにやにやとしながら意地悪そうに笑っている。


「なあ、一つ聞いてもいいか?」

「ん? なに?」

「真面目な話、なんでこんなに良くしてくれるんだ?」

「なんでって、助けてくれたからに決まってるじゃない」

「でも、それにしたってな……」


 ジンは腕を組みながら考え込んでいる。それを見たエルザの顔が急に真剣なものになる。


「あんた、あたしを助けるときにどう思ったの?」

「え?」

「例えば、あたしの体やお金とかが目当てだった?」

「はぁ? 馬鹿にするなよ。困ってる奴がいたら助けるのが普通だろ?」

「でしょ? だからよ。酒場とか宿屋の入り口でもそうだけど、あんたはいい人すぎるのよ。なんて言うか、年上として放っては置けないのよね」


 エルザは小さく笑う。外は静まり返り、何の音も聞こえない。


「後ね。あんたがあたしのことを友達っていってくれたじゃない。あたしね。友達とか仲間って、初めてだから嬉しかったのよ」

「なんだよ、大げさだなぁ。初めてとか冗談だろ?」

「……ならいいんだけどね」


 エルザは笑う。しかし、その目はひどく寂しそうだ。

 ジンはその目を見てひどく後悔した。


「悪かった!」


 突然、ジンは頭を下げる。


「ちょ、ちょっと。いきなりどうしたの」

「人の親切を疑った上に、そんな顔をさせちまうなんて、どうかしてた。許してくれ」


 その様子を見てエルザは笑う。ジンは頭を上げると気まずそうに顔をそらした。


「な、なんだよ。なにがおかしいんだよ?」

「いや、あんたって本当にまっすぐよねぇ。あたしの言うことを全部信じるつもりなの?」

「え? 仲間やダチの事を信じるのは当たり前だろ?」


 ジンは頬の傷を触りながら言い放つ。そこには一切の迷いは見られない。


「まったく、いつか痛い目を見るわよ?」

「まあ、そん時はそん時だ。オレの見る目が無かったって諦めるだけだからな」

「まったく」


 エルザは呆れながら髪をかき上げる。

 次の瞬間、ジンの視界が大きく揺れる。体も同様に大きく揺れた。


「ちょっと、大丈夫?」

「ああ、わりぃ、なんか急に眠気が……」

「あー……そっか、慣れない場所で色々あったから仕方ないわよね。ほら、上着くらい脱いで」

「でもな……いや、わりぃ。さすがに限界だ」


 ジンはエルザにローブと特攻服の上を脱がせてもらうとそのままベッドに横になる。

だが、ジンには、言っておきたい言葉があった。


「なあ、エルザ。これだけは言っとくけど……本当にありがとな……こっちの世界で初めてできたダチがおまえでよかったと思ってる」


 ジンは目を閉じる。


「実は不安もあったんだけど……こんなに楽しく……過ごせるなんて……思って……」


 そこまで言うとジンは眠りに落ちてしまった。


「もう、しかたないわねぇ」


 エルザはまるでは母親のような優しい声をかけながら、ジンをきちんとベッドに寝かせ布団をかける。

 そして、ジンの寝ているベッドに座り、その寝顔を見つめた。


「ジン……あたしの方こそ、本当にありがとう……」


 そう言うと、ジンの頬を優しくなでる。そして、立ち上がると、サイドテーブルのランプを消し、自分も布団に入った。



第一章 ヤンキー、異世界転移する 完

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