2話 アブソープション
とりあえずアミルが登場するまでは投稿していくつもりです。
どうやらこの辺りにはブルースライムしかいないようだ。数時間散策してモンスターと戦い続けていたが、他のモンスターを見掛けた事がなかった。
それとスキル<アブソープション>について分かった事がある。このスキルでモンスターを吸収すると、お腹も満たされる。
調子に乗って連続で吸収したら、食べ過ぎた時のようにお腹が苦しくなってその事に気付き、後悔した。
そして同じモンスターを吸収し続けていて分かったが、1匹目で力が1上がったとして、次は2匹倒して1上がるとステータスの上昇量は下がっていた。今のところはまだ上がり続けているが、ブルースライムだけを倒していてもその内限界が来るかもしれない。
そして最後にブルースライムを倒した後にステータスを確認すると、もう一つの変化があった。
神社 雪兎 レベル 2
HP 21 / 21
MP 5 / 5
力 15
耐久力 11
素早さ 9
魔力 5
スペル
スキル アブソープション ・ 鑑定眼
レベルが2になり、今までスライムをいくら吸収しても変化が無かった他のステータスも上昇していた。まさにレベルアップだ。
(これなら吸収しないでも、モンスターと戦う意味があるな)
すでに力は初期の2倍以上になっており、ブルースライムを蹴り倒すのが楽になっている。しかし、何故が拳による攻撃の時は、いまだ「ポフ」と鳴って攻撃力が少ない。
その事は不思議だったが、そういう種族だと自分を納得させ、モンスターを倒すのに困らないので気にしない事にする。
(そう言えば、今の俺はどういう生物なんだろうな? おそらくモンスターの一種だと思うけど……。それにしても、俺の知識にある日本人にしては、やけに戦い慣れている気がするな。普通ならもっと命懸けの戦いにはビビって動けなくはずなんだが……)
だがその問いに対する答えは誰も返してはくれない。
その後もモンスターを探し彷徨っていると徐々に周囲は薄暗くなっていき、月明かりだけが頼りの夜になった。
薄暗い夜。モンスターの発見が遅れ、危険かとも心配したがそんな事はなかった。ブルースライムは姿を消し、代わりに赤い人魂のような明りがフワフワと漂い始める。
《レッドソウル レベル 1》
名前とレベルが表示されたところを見る限り、この人魂もモンスターのようだ。これを倒すとどのステータスが上昇するのか興味が湧き、すぐさま攻撃する。もしかしたら物理攻撃は効かないかもしれないと思ったが、それは杞憂に終わり、簡単に霧散してしまった。
だが、あまりに早く消え去ってしまったので、吸収する暇がない。なので次は蹴りと同時に手を伸ばす。
神社 雪兎 レベル 2
HP 22 / 22
MP 6 / 6
力 16
耐久力 11
素早さ 9
魔力 5
スペル
スキル アブソープション ・ 鑑定眼
(こいつはMPが上がるのか。とくにMPを使うスペルもスキルもないけど、上がるなら上げておくか)
そのまま夜の時間はレッドソウルを狩り続ける。
こいつはステータスの上昇値は少ないが、攻撃をして来ないので安全に戦える。しかし経験値も得られないようで、一向にレベルアップはしなかった。
身の危険がない安全な場所を確保出来ていないので、寝ずに戦い続けていると辺りが明るくなっていく。
(もう朝か……。徹夜明けだが、まだ意識はハッキリしているな。緊張の糸が切れる前にモンスターの習性を確認して、休める場合を確保しないと……詰むな)
今はまだ新しい体に慣れる事と強くなるという目標があるので、適度の緊張状態を維持出来ている。しかし戦いがマンネリ化してしまうと、気が緩み、一気に睡魔に襲われるだろう。モンスターがいる森で、無防備に寝るのは死ぬ可能性がかなり高い。
人が生きるために必要な衣食住の、衣は毛皮があるから大丈夫。食も〈アブソープション〉でまかなえる。あとは住む場所の確保だけだ。
今日も朝からスライムを狩り続ける。
あてもなく戦い続けていると、雑だが誰かの手で整備された道に出た。道があるって事は、その先には知能のある生き物がいる場所に続いているはずだ。まだこの世界に来て人を見た事がない。なので道があるからと言って、人が存在すると短絡的な考えは出来なかった。
それでも俺は迷わず道にそって歩いた。だが、進みやすい道、移動距離もだいぶ増えたが見通しも良いので、未知のモンスターと出会ってしまう。
《ブルーウルフ レベル 2》
名前の通り青い狼だ。余程お腹を空かしているのか、よだれをダラダラ垂らしてこっちを見つめていた。
ブルーウルフが仲間になりたそうにこっちを見つめている。
そんな展開になるはずもなく、ブルーウルフは口を開けて襲いかかってきた。
(レベルは同じ2。あとは種族の違いによる基礎ステータスをどこまで埋めれたか、だな)
向かって来るブルーウルフのスピードは、スライムよりも早く、恐らく俺と同じか少し速いだろう。つまり逃げるという選択肢は初めからなかった。
完全に餌だと思って油断している初撃。正面から大きく口を開けて噛みつこうとしたところを下から蹴りあげる。ブルースライムを吸収し続けて上がった力。その力を使って死角からの全力の蹴りで、顎は割れ、牙も砕け、口は血だらけになって空中で半回転して背中から地面に落ちる。
会心の一撃だった。しかしまだ息はある。戦局は完全に雪兎に傾いたが油断をする余裕はないので、すぐさま倒れているブルーウルフの脳天を蹴り砕く。
戦いは終わった。結果だけを見れは雪兎の圧勝だったが、警戒されて一撃で決めに来なかったら……そこで寝ているのは逆になっていたかもしれない。
しかし結果は結果。雪兎は動かなくなったブルーウルフに手を当てて、<アブソープション>を使う。
神社 雪兎 レベル 3
HP 28 / 28
MP 20 / 20
力 20
耐久力 15
素早さ 14
魔力 8
スペル
スキル アブソープション ・ 鑑定眼 ・ 念話
念話 ・・・ 物言えぬ魂の魔物が思いを告げる為のスキル。対象の脳に自分の言葉を直接伝える事が出来る。
夜に倒したレッドソウルのおかげでMPがだいぶ上昇しているのは知っていたが、新しいスキルを覚えていた事に驚いた。途中でステータスを見た時はこのスキルがなかったので、一定数のモンスターを吸収した事で得たのだろう。複数のモンスターを吸収して、見えないスキルの経験値が貯まった時に覚えれる物もあると知った。
(だが、ブルーウルフを倒した事でレベルアップしたし、吸収でステータスもだいぶ上がったな。今度はブルーウルフをメインで狩るか)
スライムでは上昇値が頭打ちになってきたと感じていたので、一度道からそれて森の中にモンスターを求めて入る。この場所にはブルーウルフ1に対してブルースライム3の割合で遭遇したが、それでも今まで以上に効率が良いので戦い続けた。
そしてブルーウルフを10体ほど倒した時、新たなスキルを覚える事が出来た。
嗅覚強化(LV1) ・・・ 嗅覚を強化し、周囲の匂いをかぎ分ける事が出来る。レベルが上がればその効果も上昇する。
このスキルを手に入れた事で、周囲のモンスターの種類と居場所が何となく分かるようになった。ここから先は効率の良いブルーウルフのみを狙って戦い続ける。