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14話 落ち込むアミル

 遅くなりましてすみませんでした。あと、ブックマーク感謝です!

 リニア達の釣りは合計6匹になるまで続いた。なんでもキルアリゲーターの肉は美味しいらしく、死体を持ち帰ると高く買い取ってもらえるらしいのだ。6匹というのはアミルを含めた人数分だった。


 結果、リニア達は午後3時頃には町に向かって帰って行った。



 残った雪兎達は、リニア達が行なっていた釣りを繰り返した。餌となる肉はブルーウルフを利用し、ロープの代わりに木の蔓を利用する。仕掛けはかなり雑だったが、問題なくキルアリゲーターは釣られて雪兎の糧となっていった。




 夜はリニアが残してくれた肉をタマモの火で焼いて食べた。雪兎もいつもは吸収でお腹を満たしていたが、美味いと聞いたからには食べる事にした。



「凄く美味しいですよ、ユキトさん!」


『確かに美味いな。ワニの肉なのに臭みがまったくない。やはり自然が多いこの世界では、水が綺麗だからかもしれないな』



 雪兎やアミルはもちろん、タマモとミズチも美味しそうに肉を食べている。だが、焼けた肉の匂いにつられてブルーウルフが何体か襲って来た。


 新戦力であるミズチのスキル、<ウォータレー>は口から高圧で放たれる水弾だ。しかしミズチ自信のレベルとスキルのレベルが1なので、一撃で倒す事は出来ない。また連射は出来ないがスピードはなかなか早いので、ブルーウルフは避ける事が出来ず、小さいがダメージを受けていく。


 それでも動きが遅くする程度の威力はあったので、その隙をついてタマモの<ファイアブレス>がトドメを差す。二匹がかりで戦えば、ブルーウルフ1匹なら安心して見ていられた。


 死体がモンスターを呼んでしまうようなので、倒したモンスターは湖に蹴り飛ばし、キルアリゲーターの餌にする。



 夜はもうリニア達がいないので、雪兎が寝ずのモンスター狩りをする。アミルは交代すると言いだしたが、ガキはしっかり寝ろと言い聞かせて寝させた。


 もちろん翌朝、朝食を終えると雪兎は仮眠に入る。



 

 この日も雪兎はキルアリゲーター釣りは続け、近づいて来るブルーウルフの相手はアミルが担当した。もともと往復5日の予定で食料を用意していたので、本当なら今日はもう引き返さないといけなかったが、リニアに食事をご馳走になったので今日も滞在出来る余裕が出来たのだ。


 そのおかげもあって、雪兎のステータスを上げる事に成功した。



神社 雪兎   レベル 10


HP     151 / 151

MP      91 /  91


力      132

耐久力    104

素早さ    114

魔力      74


スペル  ヒール(LV1)


スキル  アブソープション ・ 鑑定眼 ・ 念話 ・ 嗅覚強化(LV1) ・ 耐火防御(LV1) ・ 耐水防御(LV1)




 耐水防御、火に続いて水の耐性も得る事が出来た。レベルも上がっており、上々の成果とも言えた。


 だが……アミルとタマモのレベルは上がっておらず、ミズチがレベル2になった程度だ。アミルは直接戦っていないのだから成長が遅いのは納得出来る、だがタマモ達のレベルが上がるのも遅いのは分からない。


 そのせいで少しアミルは落ち込んでいる。タマモ達が成長しないのは自分に原因があるのではないかと思っているからだ。



『いちいち落ち込むな。これは何か理由があるんだろうから、一度町に戻って調べるぞ』


「はい……」






 

 帰り道、アミルの落ち込み具合はドンドン酷くなっていく。移動にかかった2日間、タマモとミズチがメインで戦かって来たが、結局レベルはそのまま上がる事がなかった。




 町に着いて宿で一泊して疲れを癒し、次の日の朝から冒険者ギルドに顔を出した。



「おう、お嬢ちゃん、最近見なかったから死んじまったかと思ったぞ」


「……あの」


「どうした。何か悩みごとか?」



 ギルドマスターもアミルの元気のなさに気づいて、心配そうな顔をする。



「私と……こんな私に着いて来てくれた子達のレベルが上がらないんです……」


「はあ? レベルが上がらないって、まだ1のままなのか?」


「いえ、今は全員レベル2です」


「……ハァー、どうやらお嬢ちゃんは世間の常識をあまり知らないようだな」


「 ? 」



 ギルドマスターはアミルの話を聞いて、ため息を吐いて少し呆れていた。



「とりあえず言える事は、レベル2にはすぐになれるが、普通に勝てる相手を数日間倒したぐらいではその後のレベルは上がらん。それに加えモンスタートレーナーは特殊でな、直接戦わないでも経験値を得られるだが、それは自分のモンスターが得た経験値を分けてもらうからなんだ。つまり同じ1匹を倒しても、他の冒険者の半分しか経験値が得られない」


「え? でも……」



 その話が本当なら全て納得出来た。だが納得いかないアミルが向ける視線の先にあるのは、今の話を無視してレベルが上がっている雪兎だった。



『確かに俺は自分よりレベルが高いモンスターばかり倒していたからな。お前達にもキルアリゲーターやオークと戦わせれば、さっさとレベルが上がったかもしれん』



 だがそれは常識的に考えて無理な話だ。ステータスが完全に上回っている相手を、そう簡単に倒せるはずがないし、失敗=死のこの世界で試す訳にもいかない。



「だからこそチームを組んで高レベルのモンスターと戦うんだがな。ただ注意しろよ。レベルの差があり過ぎると、低レベルの方には経験値が入らないからな。組むなら目安として5レベル以内だぞ」


「……………」



 原因は分かった。そして雪兎とチームを組んでもアミル達に経験値が入らない理由も分かった。しかしそうなると、アミルには自分とその仲間だけで戦うしか方法はなさそうだ。



「あと、モンスタートレーナーは自分のモンスターの力を一時的に上乗せ出来る技術があるからな。それを上手く使えば、今のレベルより上のモンスターと戦えるはずだぞ」


「!? そ、その方法は? どうすれば良いんですか?」


「ちょっと落ち着け。俺はそういう技術があるって知っているだけだ。なにしろモンスタートレーナーはスキルの一種だからな。持ってない俺にその感覚は分からんし、教える事も出来ん」


「……そう、ですよね」



 目の前に現れた強くなる方法。それがすり抜けていくような気持ちに、アミルは俯いて落ち込んでしまう。



「……普通お嬢ちゃんぐらいの歳の子は、国の冒険者養成学校に通って技術を磨くもんなんだがな。もちろん入学には金がいるから、親からお金を出してもらうか、スポンサーを見付けて出してもらうか、独自でお金を稼ぐんだが」


「そこに行けば!? ……いえ、何でもありません」



 技術を教えてくれる場所がある。雪兎の力になれる方法を得れるかもしれないと一瞬喜んでしまったが、すぐにそれは不可能だと悟る。お金が必要だと言う事は、雪兎の所有物であるアミルにとってはどうしようもない事なのだ。

 ただでさえ自分の生活費のほとんどを雪兎が倒した戦果でまかなってもらっている。それに加えて今はタマモとミズチの食費も余分に必要になっていた。

 なのにこれ以上雪兎に負担をかける訳にはいかないと思った。


 だが一番の理由は、そこに行っても成長できず、呆れられ重荷に思われて見捨てられるのが怖かった。


 アミルは受付から離れて、ギルドから出ようと歩き出す。



『学校か……この世界にもそんな教育機関があるんだな。おい、ギルドマスターにそこの費用はいくらぐらい掛かるか教えてもらえ』


「……駄目です……もし、そこに行っても私が成長出来なかったら、無駄なお金を使った事になっちゃいます」


『何を言っている。お前のモンスタートレーナーとしても素質は最低ランクだ。そんなお前が知識も技術もなかったら、強くなれる訳がないだろ』


「ですが……」



 アミルは歩きながら泣きだしてしまった。学校に行かせてもらって成長しなかったら捨てられる。このまま足手まといのままでも見限られる。どちらを選んでも捨てられる道しか見えなく、動けなくなっていた。



『お前……また奴隷に戻されると思っているのか? ……確かにお前には才能がない。だがそんなお前にも着いて来てくれたモンスターが2匹もいるんだぞ。ビビって何もしないで、そいつ等も路頭に迷わせるつもりか?』



 アミルは何も答えれない。それも分かっているからこそ、このままFランクの依頼を細々とこなして生きていく逃げ道も視野に入れてしまったのだ。



『俺は前世の自分に関する記憶がほとんど失っている。だが俺はな、お前みたいなガキがやりたい事も出来ずに苦しんでいるのを見ていると、何故かムカつくんだ。俺はそれを打開しようとして……何かを起こして何かが起こった気がする。

 つまりお前のやりたいと本気で感じた事をやらせるのは、俺の前世で辿ったかも知れない道で、記憶を呼び覚ますキッカケになるかも知れないんだ』


「……………」


『つまりこれはお前の為だけじゃなく、俺の為でもある。だからお前は黙って費用を聞いて来て、学校に行く為の情報を集めればいいんだ』


「ユキトさん……」



 アミルは自分を励ますために言ってくれたと感じ、その優しさに泣き出してしまった。そんな彼女を見て雪兎は、ニヤリと口端を吊り上げる。



『もう泣くな。お前が学校に行っても成長しなかったら、俺が責任を持ってスパルタ教育を課してやる。クク、木に縛り付けてキルアリゲーターと戦わせたり、オークの巣でも見付けて放り込んでも良いかもしれんな』


「ちょ!? それはちょっと酷過ぎますよ!」


『なら学校でしっかり強くなるんだな。俺は特殊だがドンドン強くなっていくから、のんびりしていると置いて行っちまうぞ』


「フフ、そうですね。ただでさえ差が付いているのに、これ以上この腕輪を貰った私が足踏みをしている訳にはいきませんね」



 涙が拭かれ、アミルに笑みが戻る。まだ入学費などの問題が解決していないが、今だけでも笑ってくれたアミルを見て、雪兎も顔を隠して微笑んでいた。



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