切なさに似て
最近のあたしは、どこかおかしい。
今までなんとも思っていなかった奴を見て、ドキドキしたりどうしたらいいか判らなくなる。
「それは恋」
友達に相談すると、即答される。
「は? まっさか~」
いくらなんでもそれはない。だってあいつだよ? あたしより可愛い顔して口が悪くて、人の神経逆なでするようなことばっかり言うあいつだよ?
「いい、よーく考えてみて。ドキドキすんでしょ? 今まで普通に話せてたのに気まずい」
友達が次々挙げる項目に頷いていく。そして導き出された答えは……
「……ほら、やっぱり恋だよ、恋」
「え、それはありえないよ。うん、ありえない」
「何がありえないんだ?」
ウワサをすれば、何とやら。後ろから今話題になっていた奴の声がして、あたしは思わず「ぎゃッ」と悲鳴を上げる。
「 “ぎゃッ”って、色気ねー……」
ハイハイ。どうせあたしはこのコみたいに美人じゃありませんよ。
前なら言えたこんな言葉も、今は浮かんでこないしショックを受けてる自分がいて。
「うるさい! あんたには関係ない!」
席を立つと、教室を飛び出していた。
誰でもいい。このモヤモヤをどうにかして。
「なんだ、あいつ?」
「さあねぇ。でも残念だねぇ、せっかく話し掛けても最近は口ゲンカにすらならないもんねぇ」
「………」
「素直になっちゃえばいいのに」
ニヤニヤ笑いつつ言った彼女の言葉に反応し、奴が「それが出来たら苦労しねーよ」と赤くなったということを、あたしは後で知る。