表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/8

黄昏


――――――目が覚めるとそこは誰もいない教室だった。日もほとんど落ちていて、教室は不気味に薄暗い。

「あ、起きた?」

急に後ろから声をかけられ、思わず身を竦ませてしまうが、その人物が見知った顔だったので少し安堵する。

「なんだ、朝姫か…」

「なんだって何よ、なんだって」

桐生院朝姫。学校一の美少女と評判である。

しかし昔からの幼馴染で本質をよく知る俺に言わせればこいつ以上に厄介なヤツを俺は知らない。

我侭と好奇心をそのまま体現したような性格。

しかし外見は良いから(悔しいが、それは認めざるを得ない)何をしても大概許されてしまう。理不尽にも。

ちなみにコイツが俺に絡んでくるときは大抵変なことに巻き込まれたりする。おかげで万年帰宅部のくせにそこいらのオカルト研究部員より超常現象に見舞われている。

何も有難くないが。

…幽霊屋敷に行って本当に『出た』ときは本気で泣くかと思ったが、それは別のお話。

というか俺の口からは語りたくない。朝姫に聞いてくれ。

「で、どうした?また厄介事なら遠慮してくれ」

「残念、もう手遅れでした♪」

「なんでやねん」

ほらきた。俺に選択肢なんてないのだ。

事情を聞くと、

目が覚めたら朝姫と俺以外誰もおらず、

教室から出られない。(窓も扉も開かない)

携帯も繋がらず、電気もつかないとのこと。

確認のため携帯を見ると圏外と表示され、電気はスイッチを何度押しても反応しない

窓は鍵も開かないし思いっきり殴ってもビクともしない。扉も同様。

完全な密室。しかも美少女(見た目)と二人っきり。

って俺は朝姫相手に何考えてんだ。

「……ばか。すけべ」

「心読まれた!?」

「地の文に見せかけて思いっきりしゃべってたわよっ!」

朝姫はかなりギリギリな発言をしつつ教室の対角線側までにげる。…傷つくなぁ。

「これは100%あんたが悪い」

そんな訳でしばし落ち込んでいると不意に、間延びした音がスピーカーから流れ、放送が入る。

『えー、学校内にいるみなさん。これから《とあるゲーム》に参加してもらいます。まず、教卓上にある黒い箱を開けて、中に手を入れてください』

教卓を見てみると、大きめの黒い箱が二つ並んでいた。

特にだれがどっち、と指定されていないようなので適当に左側にあったやつを選び、机に置いて開けてみる。

中は丁度手が入る程度の大きさ。言われるがままに俺はその中に右手を入れる。

「コレ、言われた通りにして平気かしら」

「さあ?ま、他にどうしようもないし」

躊躇いがちに朝姫も箱の中に手を入れる。

すると、箱の中で何かが手に…正確には、手首に絡みつく。

いや、絡むというよりも、噛み付くように腕に何かが食い込んでくる。

「れ、蓮!?」

「…!!」

無理矢理箱から手を引き抜く。すると、痛む手首に黒い、鎖のような紋様が浮かび上がっていた。

『さて、全員つけたようなので説明をします。これから《殺し合い》をしてもらいます。今つけたのは呪いの刻印。一緒にいる人間とペアで同じものが刻まれています。

これは殺した相手の刻印に触れると相手の刻印を吸収し、すべてを集めるとここから脱出する鍵になります。

しかし、ペアの片方が死ぬとリンクしてもう片方も死にます。

ゲームが開始されると全ての教室の黒板に現在残っているペアの名前が表示されます』

さて、ゲームとかではありがちな話だけど実際に殺し合いをやらせたところで誰か得するのだろうか?などと、現実逃避気味な思考をしていると、それに答えるかのように放送が続く。

『殺しあう理由はゲーム終了後にでも、ゆっくり聞かせて差し上げあげましょう』

つまり、負けた人間は理由すら知らず殺されるのか。えらく理不尽だな。

『それでは、健闘を祈ります』



放送が終わった途端、教室の電気がついて、廊下やほかの教室も明るくなっていた。

そして、黒板にはいつの間にか白いチョークで13組、26人の名前が書かれている。

知らない24人の名前に混じって、自分たちの名前を見つけた。

…間違いではないようだ。

「ねえ、蓮」

「どうした朝姫、っておま…なにしてんだ!?何処からそんなもの……」

呼ばれて振り返ると彼女の手には黒光りする大型拳銃が。おもわず両手を上げる。

「何処からって、さっきの箱から」

「さっきの箱って…アレか?他に何も入ってなかったと思うんだが」

そう言いながらも、箱をもう一度開けてみる。

箱の中には拳銃二つ、ナイフ、替えの弾倉…最低限の武器らしいものが入っていた。

さっき手をいれたときには何もなかったのに…?

「ミステリーね」

朝姫は楽しそうに言うが、常識的に有り得ないだろ。

しかし、制服と拳銃ってえらくシュールな組み合わせだな。

「こんな状況でそんなこと言ってられないでしょ?」

そんなこと言ったらミステリーだってそうだろ。

「…む。そんなことよりこれからどうするのよ?」

とりあえず、ふざけてる場合じゃないな。

「そうだけど、私が言いたいのはどうやって生き残るかって言うこと!!」

いや、ワカッテマスヨ?ええ。

銃弾も弾倉も抜いているとはいえ銃を突きつけられるってのはかなり怖い。

額に当てられた冷たい感触に身震いする。

「とにかく、殺されるのは勘弁だけど人を殺すのもな…」

「そうね。でも、なんだかんだ言っても結局『ほかの12組のペアが死なない限り』私たちも生き残れないわよ」

朝姫の声はいつものままで。

なんとなく、背筋が冷たくなった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ