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恋愛鬼ゴッカー!桃園右近!  作者: 河原ブーメラン


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3/9

ごっつぁんです娘

 俺が生まれる五年前、父は草野球で脚を痛めた。

 ちゃんと治そうと思えばそう出来たらしいが、自営業の手前、全治するまで時間をかけられなかったらしい。

 仕入れから配達、自動車運転免許を持っているのは父のみ、父がいないと店が機能しない。

 店の大きな収入源である配達だって市内から出たり当たり前にするので自動車を運転できる人間がいることは必須だった。

 よって俺は記憶に無いほど幼いころから父の手伝いをしていたと母が語る。

 そういえば俺が生まれる前のケガだから一度も父が全力で走っているところを見たことがないな。

 同い年の友達がいなくて、年上の兄ちゃんたちといつも鬼ごっこをしていた。

 俺はわがままで暴れん坊で小学生の頃は友達の親に煙たがられてたっけ。

『あんな馬鹿な子とは遊ぶな』ってさ。

 当然そんな子供だったから勉強は全然できなかった、しなかった。

 出来の悪い俺に対して先生はつらく当たってきた。

 よく怒鳴られたり頬を叩かれたりしたっけ。

 事情も知らないのに・・・・・・。

 ハブられて育った。

 小5で突然足が速くなって運動会で一等賞、それまで褒められたことがない。

 祖父も父も足が速かったらしい。

 才・能・という言葉を初めて周りが俺に使った。

 友達とは建て前の関係で中学生になるまで特別仲の良い友人はいなかった。

 小学校の学区にはお坊ちゃまばかりで、中学で素行の悪い連中の多い地区と合流した。

 似たような境遇の友達が結構いてほっとしたものだ。

 陸上部に入り、本当に楽しい友達がいっぱいできた。

 鬼ごっこをした。

 一緒に心から笑った。

 校内陸上競技大会で短距離で優勝。

 それから逆に走るのが嫌いになった。

 ハードな練習に一緒に耐えてる友達を置いて、自分ばかりが著しい成長をしていく。

 地区大会で優勝。

 気持ち悪かった。嫌悪した。ズルしてる気がしたから。

 才能なんて無くて良いからみんなと同じにしてくれ、そう思った。

 せっかくできた部活仲間の何人かとも気まずくなった。

 部活を辞めて帰宅部の友人とでっかい公園で鬼ごっこばかりした。

 運動をして気持ちいい、久しぶりに実感した。

 鬼ごっこが大好きだった。

 そんな心に余裕が戻ってきた二年生に進級する時期。

『頭が良くなったら周りはどう反応するだろう?』

 ふと思った。

 一度もちゃんと勉強したことが無かったから、それが妙に気になって・・・・・・。

 その興味でサボりがちだった塾にもちゃんと通うようになり、家でも毎日予習復習。

『すげえな右近!』

 一学期の中間テストで5位になった。

 結果がすぐ出て驚いた。

 やればできる子だったことに自分が一番驚いた。

 才能が無かったことで認められ嬉しかったんだよ。

 自分の学力がどこまで通用するのか試したくて勉強に打ち込み続ける日々。 

 三年生になり、気付くとしばらく父の手伝いをしていない。

 父の脚は悪化していた。

 学生兼従業員。

 勉強の合間にできるだけ時間を作って手伝う。

 学校では受験の話題が増えてきて、深海魚にならないようにすこしレベルを落として学区で三番目の進学校を第一志望。

 合格。

 なんか盛り上がらない。

 この高校の陸上部は練習の一環で鬼ごっこを取り入れているらしい。

 迷わず入部。

 気合を入れて部活初日に臨む。

 先輩との交流ってことで早速鬼ごっこ。

 しかし、誰も俺を捕まえれない、逃げれない。

 またこいつさいのうか。

 鬼ごっこ目当てに部活に通い続け、一年生で国体の表彰台。

 トップアスリートの仲間入り。

 嫌になった。

 不本意に周りに称えられるのが――期待されるのが辛い。

『店の手伝いがあるから』

 嘘を吐いてるわけではないけど、口実をつけて逃げる。

 店の手伝いを本格的に始めた。

 ある日、両親に頭を下げられ修学旅行をキャンセル。

 なぜかホッとした。

 そのまま休学し、三年生になる直前に高校を中退。

 その時の俺の顔は能面のように感情が無い表情だったと母は語る。

『これで良いのか?』

 疑問に思いながら働いた。

 あっという間に時は過ぎ、二十歳になった。

 この歳になるときには運転免許はさすがに持っているだろうと想像したが、講習を受ける金が無い。

 近所にできた大型スーパーに客をとられていく。

 それを突き付けるように景気の悪化で店の運営にひびが入る。

 日に日に夕飯のおかずが減っていく。

 さすがに危機感を感じた。

 高校中退で資格なし、絶望した。

 そんな時に見たニュースの一節、盛り上がってる大学生の飲み会を見たとき、頬を水が伝った。

『自分にもあんな楽しそうなことがあったのかもしれない』

 高校を強制的に辞めたときだって涙を流さなかったので、てっきり感情が無いと思ったが俺も『人間』なんだな、と少しホッとしたのを覚えている。

 店は閉店、一度泣いた後の俺は強い、普通落ち込むところが俺は違った。

『もう、俺を縛る店は無いのだ』

 求人広告を見るのが楽しくて、目が輝いて――。

 学歴不問の職場を一年やって向いてなかったら転職を続けた。

 そして――


 現在に至る。

 頭の中を過去の映像が流れて止め処無いほどだった。

 走馬灯ではないように願う。

 本当だ! 本当にそう思ってるんだからな!

「我ながらよく頑張った」

 全速力で走りながら小さく呟く。

「早く捕まっちゃえばいいんですよ! あ・な・た!」

 フォーミュラー91ことF91を駆る少女――石上清香との死闘は続く。

 誰か歩道をお構いなしに原チャリで爆走するこの娘をどうにかしてくれ!

「それは俺にとっては人生終わりを意味するんだ、バーカ!」

 数歩後ろに娘は迫っている。

 下手にF91の速度を上げさせないために歩道を右へ左へジグザグに走り、揺さぶる。

 原チャリと人間の脚ではどう考えても分が悪いので工夫をしなければならない。

 しかし、こんな工夫をしても原チャリ相手には長くは持たないだろう。

 っというわけで、現在ある地点に向かっているのだが、

「あたしがあなたを捕まえたら人生が終わるほどの快感を与えてあげましょう!」

「違う! 変な方向に捉えるな!」

 それもある意味終わりだとは思うけど!

 それにちょっと魅力を感じてはいるけども!

 ある種の性癖の持ち主なら大金払ってでも手に入れたい幸せな状況かもしれないけども!

 そういうやつにはお前が魅力的に見えて堪らないはずだ!

 俺たちが首尾よく結婚しても奇天烈な雰囲気のまま爺さん婆さんだ! 断言できる!

 お前自身の人生のために変態同士夫婦路線へ進路変更した方が良い!

「変な方向? 生物にとって一番純粋な快楽なんて決まっているでしょうに⁉」

 変人を見るような目で見るな!

 なんかわからないけどヘルメット被ってるのにお前の表情を感じ取れるんだよ。

 お前の方が世間一般では変人なんだぞ! 馬鹿!

「そういう考えを持ってる時点で純粋じゃない! 偏ってる!」

「偏ってるのはあなたの方! 稀に見る『彼女とお花畑で追いかけっこ』に憧れてる男性なんじゃないですか!」

「そこで意見が食い違っちゃってるなら、俺たちは相性が悪い! 夫婦喧嘩は避けられない未来!」

「ふ、夫婦げんか・・・・・・?」

 そう呟いてヘルメットの隙間に見える目元の血色がよくなるこいつ。

 そこに引っ掛かるのかよ。

 なんで快楽がどうこう平然と叫ぶお前が、夫婦喧嘩って言葉で顔を赤らめる?

 こいつの羞恥心の定義が解らない。

 俺とお前はどういう段階の関係なんだ?

 キュピーン!

 ひらめいた俺は探るようにこう言ってみる。

「お手てつないでピクニック、ハニーのサンドイッチは美味しいなあ、小川を眺めて笑いましょう。見ろよハニー夕日が沈むよ。お互い家に帰ったら、電話で愛を語ろうか」

「は・・・・・・恥ずかしい! やめてください、そんな淫らな・・・・・・」

 F91が少し傾いた。

 これに反応するのか?

 純愛と不純の位置が逆かこいつは!

 さらに続ける。

「夏は海へ行きたいね。照りつける日差しが歓迎してる。波に逆らい泳いだら、水鉄砲で遊びましょう。昼は海の家で焼きそばさ。疲れて電車に揺られたら、眠ってしまうのも夏の思い出」

「ななな夏に海みみ・・・・・・? や、ややや焼きそばば・・・・・・! 夏のおーもいで!」

 お? 効いてるのか?

「紅葉の季節になったなら、一緒にカフェでモンブラン。図書館行ってお勉強しましょ。少し寒い夕方に、二人で星を数えましょ」

「カフェででででで、ももモンブラン? おおおおお、お勉強ウううう、ほほ星いいい?」

 こういうのってなんていうんだっけ、ゲシュタルト? そう! ゲシュタルト崩壊を始める、清香。

「冬は二人で雪だるま、クリスマスにはプレゼント、ケーキを一口頬張って、聖歌を歌って祝いましょう。ああ、こんな日々が続けばいいのにイイ~~」

「雪だるまま、クリスマッスルるる、ケーキング! せセセ聖歌あああああん!」

 クリスマッスル? ケーキング?

「以上『ラブ~愛の春夏秋冬~』どうだ?」

 F91が不安定になり、これ以上は(歩行者に)危険だと俺は判断したのでこう言う。

「少し止まろうか?」

「はい・・・・・・」

 F91を降りヘルメットを取って収納にしまう。

「はあはあ、ゼーゼーッ」

「なんでお前F91に乗ってたのに息が切れてんだ」

 どっちかっつーと俺の方が疲れてるはずなのに・・・・・・。

「気にしないでください、昇天しそうなだけです」

 昇天ってなんだ?

 変なこと言わないの!

「・・・・・・」

「はあはあ、良いですよ。どうぞ、続けましょう。できれば歩きでやりましょう」

 歩いてする鬼ごっこってなんだ? まあいいや。

 俺だって結構体力削られてんだもん。

「では、ファイ!」

 仕切りなおして再び開始のゴングが鳴る。

「このののノノ変態! 悪夢のような発言は禁止! 本当にスケベ! ラブソウルポイントから減点七億五千二百八十四万六千九百二十一点!」

「ラブソウルポイントってなんだ! あと俺の持ち点はいくらあるんだ⁉」

「無限大数です」

「!」

 即答するなよ。

 その上、中二病全開みたいなネーミングセンスだ!

 あと桁が多い! やけにリアルな点数をつけるな!

 無限大数から七億何点引かれても大して影響ないぞ。

「そもそも愛に点数をつけるのは純粋じゃありませんよ。愛というのは無償で与えあうものです。あたしたちもそうでありたいものですね。ほら、あなたの中のラブソウルポイントは何点ありますか?」

 宣教徒口調で言ってるのがムカつく。

「点数をつけるなって言ってる傍からラブソウルポイントって形で勘定してるんだけど・・・・・・」

 矛盾してるよ?

 やっぱり適当に言ってるでしょ? 思いついたこと片っ端から言ってるんだよね?

 お前が開いた教えなんて誰も聞く気にならねえよ、ていうか聞く気ねえ人の方こそお前の教えに添ってると思うぞ! 

 無視されたらそれはそれで発憤するんだろうな、きっと。理不尽。

「揚げ足を取るなんて愛が無いですよ!」

「だから無いんだよ」

「・・・・・・」

「・・・・・・・・」

「うそ! あなたの一挙手一投足にあたしは愛を感じます!」

「気のせいだ、無いから、全身全霊をかけて無い」

「・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・・・」 

「愛を感じます!」

 無理やり都合の良い方へ持ってくな!

 何度も言うけどルックスはドストライクなんだよ。

 でもその変な思考とのギャップにビビっちゃってんだって、歩道を原チャリで爆走する女子は俺の守備範囲からかけ離れてる。

 ルックスで補えるレベルのヤバさじゃないんだよ。

 ほら、また手で押してるF91が塀にぶつかりかけてる。

 ここまでくると容赦なく捕まるから、俺もお前も牢屋行きに王手をかけてると思うよ。

「ヘッドロックをかけて落としたいくらい愛を感じます!」

「ヘッドロックをかけられて落ちたくないくらい愛がありません」

「ツンデレですか?」

「ツンツンのツンです」

「ツンツンデレデレですか?」

「違います」

 ちょっとずつ扱いが解ってきた気がする。

 これは将来役にた・・・・・・つかな?

「ツンツンツンデレデレデレですか?」

「知らねえ・・・・・・」

 しつこいんだよ。訂正、やっぱり解らなかった。

 と、ここまで来て息が苦しくなってきた。

 丁度良い、ようやく目的地が目の前だ。

 大型商業複合施設!

 現代で遊園地を超えるほど安上がりでテンションの上がる場所!

 数少ない友人が経営するショッピングモール!


『大納言ジェネレーションシティー裏海馬』

 地元じゃ知らない人はいないくらいに生活に根差したショッピングモールだ。

 スーパーマーケットにホームセンター、ゲームセンター、映画館、書店、トイストア、数々の飲食店、アパレルショップ、カットスタジオ、宝石店、質屋etc.俺の知らない店もいっぱいあるし医療施設に市を横断するモノレールの駅だったりする化け物施設。

 上がったことは無いけどモールの上には四十階建てのタワーマンションとかも兼ねてたりする。

 いろいろ詰め込み過ぎて、例えばスーパーマーケットでも衣服やアクセサリーを取り揃えているのでアパレルショップとか宝石店と扱う品物が重複してたりして、ほとんどのテナントが競うように頻繁にバーゲンとかやってるから大体毎日騒がしい。

 結構儲かってる感じがすぐそばにある廃れた商店街の人たちには受け付けないみたいだけど、喧騒に混じりたいときに行くとあれやこれやとお祭り騒ぎなので、そのキャッチ―なところが俺は好きだ。

 再び再開した全力逃走劇。

 と言っても、走る(奴は運転)のを再開して数分しかたってない。

 ズザザーッ!

 俺こと桃園右近は急ブレーキで靴底を焦がす。

「やっときた!」

「ペンタゴン!」

 真後ろに迫っていた石上清香とその愛機F91がタイヤから煙を立てて横滑り。

 態勢を崩して慌てたのはわかるがペンタゴンは無いだろう。

 五角形? 国防総省?

 多分この娘は大した意味も知らずに口から出したのだろう。

 ボキャブラリーは豊なようだがその大半の意味をこいつは曖昧に覚えてる気がする。

「急に止まるなんて危ないじゃないですか!」

「危ないのはお前の深層心理だ! ふふん、ノコノコとついて来たな! 作戦通り! ここでお仕舞にしようか!」

 勝利を確信した!

 この地にお前の墓標を立ててやろうじゃないか!

 自然と笑みが溢れる。

「ラブホテルじゃないですよ? ここ」

「なんで俺がお仕舞いな感じになってんだ?」

 俺がお前に捕まった場合は付き合うだけだろ?

 勝手にそんな発展したとこまで視野に入れるな!

 その子供に言って聞かせるような口調はやめろ! 

 イラッとくるんだよ、ビッチめ!

「ってことはお仕舞いなのはあたし?」

「そうだよ、お前はここで潰れる!」

「潰れる! そこまで激しいプレイを? こんな人が多い場所で求めてくるんですか!」

「違う! お前の勝利がなくなるんだよ! お前の敗・北・確定だ!」

 これを聞いてもなんでそんな満面の笑みしてんだ?

 さらに続ける。

「ここでなら延長戦とかあってもいい」

「喜んで! 何時間にします? 3時間? それとも休憩?」

「3時間とか休憩言うな! リアルな数字だからみんな変な顔してこっち見てる!」

「今のはあなたに言わされた気がします!」

「違う! 断じて違う!」

 この状況で少し言わせてみようと魔が差しただけです。

 気を取り直して、

「延長はしません!」

「ブーブー」

「可愛い感じに頬を膨らませてもダメ、めっ!」

「・・・・・・」

 清香は無言でフォーミュラー91を降りて駐車する。あ、そこ駐輪場なのね、偉いえらい。

「・・・・・・ゴホン。では、さっそく俺はここで逃げるから捕まえてみなさい」

「はい! あ・な・た。ごっつぁんです!」

 俺は照明がウザったいくらい煌びやかなショッピングモールに突入した。

 残りタイム一時間弱。

 ごっつぁんです?


改めて見ると拙い書き方だ。ちょっと微調整入れるかもしれませんが読んで頂けたら幸いですm(_ _)m

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