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恋愛鬼ゴッカー!桃園右近!  作者: 河原ブーメラン


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2/9

あなたが好きです

「あなたが好きです!」

 それは初夏のある晴れの日。

 いきなり現れた美少女にそう言われた。

「ん~、87.3点」

 いきなりすぎて得点を計算して声に出してしまった。

 正直テンパった。

 目の前で顔を赤く染めている少女は明らかに美少女だった。

 黒髪の顔立ちの整った、不健康とも思ってしまう白い肌の娘だ。

 高校の夏服を着た清楚そうな女の子。

「有り得ない・・・・・・」

 俺が続いて放った言葉がこれだ。

 家の事情とはいえ仕方なく高校を中退した俺には有り得ないほどの、幸せな出来事。

「え・・・・・・? あの、あたしはあなたが・・・・・・」

 きっと普段は慎ましやかな娘なのだろう。

「うん! 最近は女子の間でも告白という罰ゲームがあるんだね!よく勇気を出した! おっさんは物わかりの良い子だ、幼稚園児の時に先生に言われたからな! 俺は君の勇気の証人になってあげよう!」

 と、俺は少女の肩に手をポンッと置き、逆の手の親指を立てる。ついでにウインク。

「えっ! でも、え~と、え~と・・・・・・」

 そう言って少女は顔の前で両手を交差して、慌てた様に否定する。

 気の弱そうな娘だ。

 きっと罰ゲームで適当にキモい男に告白し、『しばらくは付き合ったふりをして来い』などと言われ、どこかで一部始終全てカメラで撮影されているのだろうな。

 最近の高校生は辛辣だなあ。

 トランプ遊びとかに負けた罰で、こんな人畜無害そうな娘にもこの仕打ちか。

 それしか考えられない。

 きっとそうだ。

 彼女の事情に推測を立てると、

「わかった! おっさんは協力しよう。仕方ない、付・き・合・っ・て・や・ろ・う・!」

「えっ! あ、はい! ってことはOK? ありがとうございます!」

「うんうん、一緒に乗り越えよう!」

 季節は初夏、おっさんは無職だがこの娘の彼氏役が今見つけた仕事だ。

「では、よろしくお願いします! あ・な・た」

 と、少女は嬉しそうに俺の腕に抱きつく。

「お、おう!」

 腕に触れる少女の体が妙に熱い。

 きっと無理しているから頭がゆでだこなのだろうさ。

 可哀想な少女だ。

『君の罰ゲームの恋人ごっこが終わるまでおっさんは協力しよう』

 そう胸に決めて、

「愛してるよハニー・・・・・・」

「あたしもよ。あ・な・た」

 ・・・・・・なんか変だ。


「あれか!」

 逃亡劇の片手間、脳裏に蘇った記憶に自分で突っ込みを入れる。

 妄想逞しく、彼女に思わせ振りなことを言ってしまったのは俺だったのだ。

 と、なると彼女は逆に被害者、俺がこの状況にいるのも自業自得イコール大体の責任は俺にある。

 警察のお世話になるのは俺かもしれない。

 ってことは、逃げ切っても捕まってもそれなりの非は俺にふりかかる。

「どうしよう?」

 今後は勝手な推論で物事を考えるのはやめようと思った。

 その教訓を活かすまでに俺が無事かどうかはわからんが・・・・・・。

 脳内で走馬灯じゃない、過去を振り返っている間に少し差を縮められたか、少女は俺の後方約百メートルの位置に迫っている。

 笑顔に後光が差してるのが遠くにいても明らかに見て取れる。

 娘が美少女だからか変だからなのか、それとも一歩進むごとに揺れる胸のせいか結構大勢の行き過ぎる通行人達が彼女を振り返っていたりする。

 あまつさえ俺たちの格好は運動に適していないと思う。

 俺はジーパンにTシャツで、娘はひらひらスカートの高校の夏服だ。

 さすがに目立つよな。

 街の中心には大きな運動公園、河川沿いには球技場が設けられているスポーツに活発な街だから、当然住民は結構本格的な服装で運動に興じているのだ。

 彼女の口許が何かセリフを吐いているようにパクパク動いている。

 ろくでもない恥ずかしいことを言い放っていなきゃいいけど・・・・・・。

 結構頭を働かせながら走るのはどんなに充分鍛えてる俺であってもきついんだぞ?

 心のどこかでいっそ捕まって、洗いざらい白状して丁寧に誤解を解こうかと思うが・・・・・・。

「ある~ひ~♪ まちのな~か~♪ ウコさ~ん~に~♪ であ~た~♪」

 一気にそれが難しいと悟った。

 ちょっとこの距離でも聞こえるんだよ。

 なんでその選曲? 

 ウコさん?

 何より、小学校低学年の合唱コンクールの課題曲っぽい歌を勝手に変な歌詞に変換するのはやめろ!

 限界突破してるだろ?

 綺麗な顔の所々に血管が浮き出ているようなのですが・・・・・・。

 それにどう考えても今は歌を歌う場面ではない。

 お互い余裕がないはずなのに・・・・・・。

 会話するのさえ、ある程度距離を詰めないとままならないし、電話でも持ってればな~。

 ん? 

 電話?

 ズボンのポケットに手を突っ込み確認する。

 そうだよ、こういう時のために現代人は携帯電話を携帯してるんだよ!

 それに会話しながら鬼ごっこを続ければさすがにあいつも体力と集中力を削られるはず。

 少しでも勝ちに近づきたい。

 ポケットからスマホを取出し彼女につなげる。

 コール音が鳴る前に彼女が出る。

『はい、あなた?』

 ケロッとした口調で彼女。

 もう数キロは走りっぱなしだぞ?

 なんでこんなすぐに出るんだよ?

 待ち構えてたのか?

 器用なのが気味悪い。

 後ろを見れば彼女も電話を耳に当てている。

 掛け間違いではないようだが。

 なんかさっきまで浮き出てた血管が回復している。

 敵に塩を贈ってしまったのかもしれない。

「なあ、お前さん?」

『なんでしょう? 今はあなたを追ってこのままハワイにでも行こうかと思ってるんですが』

 本気で言ってるのか?

「・・・・・・まあ、冗談は置いといて、あのね?」

『冗談? 何を言います? どこまでも付いて行くのが真の恋人! 来世は幼馴染に生まれたいですね❤』

 海外まででもなくどうやら来世もこいつに付きまとわれるらしい。

「いや、俺は地獄に行った後、異世界に転生する予定だからそれは無理だ」

『あたしは昨晩、マクスウェル様に「あらゆる次元や並行世界で思い人を時空を超えて追いかける存在になるだろう」と神託を授かったんです!』

「へえ! すごいね!」

 盛り上がってるな、お前の脳内。

 怖いのぶっちぎって感心する仕上がりだ。

 こいつの世界はありとあらゆる要素をとり込んで大精霊の域を超越してるらしい。

 もう、この際こいつがUFOと交信するのが好きとか言い出しても疑わない。

 むしろ本質がそっち向きの方がまだ可愛げがあると思う。 

『あたしの名前は、シャンティス=リン=クインウォード! 異世界シルメリアバームの王族クインウォード家の三女! あ・な・た・を愛しています!』

 いきなり訳の解らない名乗りをあげられても・・・・・・。

 って何を言ってんだこいつは。

 中二病の節があるな。

 とりあえず。

「もう一回言ってみろ」

『なん度でも言ってあげます! あたしはクリニカ=ミィ=タゴスケ! 並行世界あんみつクロレラの王家ミィミィ家の王位継承権二位を持つ第四女! その手には宝剣みょんみょん棒』

「明らかにさっきと言ってること違うよね⁉ それに剣・じゃなくて棒・って言ってるよ! ねえ、適当に言ってるでしょ? あとネーミングがいやらしい!」

 なんだタゴスケって?

 あんみつクロレラ? 美味そうじゃないか。

『何を言ってるんですか! 我が国の国歌を聞いてビビりなさい。歌います。「俺の煮物は播磨王」! ナックル回転~煮付け~ブツ・・・・・・』

 娘が歌いだすとぷちっと俺は電話を切る。

「なんで国歌が播磨王の歌なんだよ? ナックル回転煮付けってなんだよ⁉」

 突っ込みどころが多すぎて何から手をつけたらいいか迷っちゃうんだよ!

 夢でも俺は見ているのか? 

 夢なら覚めてくれと、頬を抓るが残念現実でした。

 稀有だ、すごく稀有だ。

 電話での意思疎通は難しいと思う。

 方言とか無しに現代の日本人同士でここまで会話が成立しないのは珍しいのではないだろうか?

 原始人とだってボディーランゲージでもう少し分かり合える気がする。

 あいつはきっと名前のある精神状態なんじゃないかな。

 っと後ろを見ると、そこに彼女の姿は窺えない。

「撒いたのか?」

 目を細めても奴を目視できない。

 しまった。

 俺の計画ではあの娘が確認できる距離を維持し逃げ切る予定だった。

 鬼ごっこで相手を捕捉するのは重要な要素だ。

 見通しのいい場所では問題はないのだが、ここは小道の多い街中だ。

 視界に相手が入ってない以上、迂闊に曲がり角を曲がったりするのは危険なのです。

 道が多い、つまり追う側にしても追われる側にしてもメリットはあるのだよ。

 そしてそれは鬼ごっこにおいてはタッチすれば『勝ち』の追う側に大きくメリットがあるように傾いている。

 俺はあえて近道でも遠回りな道でもない大通りを選んで走ってきたのだが、相手の位置がつかめない、これは良くない。

 逃げ回っていて思ったが、あの娘もある程度土地勘はある気がする。

 大通りが多いとはいえこの街を衛星写真で見ると、曲線を描いてる道や直角に曲がってたり、袋小路になってる場所もかなりある、入り組んだ土地柄だとわかる。

 そこを俺は相手を誘導しながら来た。

 あの石上清香はそれに合わせて迷わずについて来たのだ。

 そう、大通りなら計算しやすいが小道をランダムに使ってくると何をしてくるか計算できないのだ。

 娘が他の道を行ったのなら、その時俺はあいつが最後に右に行ったか左に行ったかしっかり見るべきだった。

 要するに奴の動きを見定める分岐点を俺は見逃したことになる。

「策を練ってきたらヤバい」

 大通りから外れ、片一方しか歩道のない道へ入る。

 数十分ぶりに足を止めた。

「運良くここは角が少ない、少し体力を回復しよう」

 鼻から空気を一気に吸い込み肺に酸素を満たす、それから思いっきり吐き出す、それを数回繰り返す。

 息が整ったら即思考を巡らせる。

「角が無い、いきなり現れることはない・・・・・・」

 さてこれからどうする?

 当たり前だが鬼ごっこは逃げる側と追いかける側が存在してはじめて成立する遊びしょうぶだ。

 追いかけられないと逃げない、逃げないと追いかけられない。

「ここからはあいつがどう動くか読まないと・・・・・・いや、待て、今のこの道は・・・・・・」

 背の高いビルが多く各角から距離ががしばらくの間ある、つまり・・・・・・。

「籠城するのには良い場所かもしれない」

 そう、急に角から出てきたとしてもここでなら十分対応できる。

 安心して溜息すると、あることに気付く。

 捕まらなければ良い、何もずっと走り回らなくても良いわけだ。

 例えば鬼に追いかけられずにタイムアップしてしまった、これも一種の勝利の形だ。

「少しここで様子を見てもいいか・・・・・・」


 数分後。

 夕暮れを過ぎ本格的に日も陰り始めた。

 街の明かりが目立ちだす頃合い。

 キョロキョロ周りを見ても石上清香の姿は無い。

「もしかしてもう諦めて帰ったとか? そうならいいんだけど」

 しかし、俺は逆に不安になってきた。

 本心を言うと、正直ちょっと寂しいんだよ。

 子供の頃よく覚えた感情、も・っ・と・逃・げ・た・い・である。

 二十歳過ぎてこんな気分になるのは久し振りだぞ。

 不慮の事故でストーカー臭い女子高生から逃げる俺。

 テレビ番組の賞金を狙ってハンターから逃げる逃走者たちの方が全然大人っぽい理由だよ。

 自分の人間性をヤバいと実感している。

 ちょっと楽しいんだよ、このスリルのある状況。

 大規模鬼ごっこのプロリーグとかあったら、そこに参戦しない手は無いって思っちゃてるもん。

 傍から見たら今の俺は結構生き生きしてるように感じるんじゃないかな。

「あらやだ、わたしったら、もう!」

 何故か口から出たセリフがオネエっぽい。

 無意識に頬に掌を当ててる自分の仕草にさすがに軽く引く。

 ドンチャンドンチャンドンっと俺のスマホが鳴った。

 相手は石上清香。

 逆に安心しちゃったよ。

「むふふっ」

 なんかテンションが上がってる自分が新鮮。癖になりそうだ。

「はいもしもし、清香ちゃ~ん!」

 こっちもちょっと変な感じになってきたんだ、多分ノリに任せたら結構会話になるんじゃない?

『こちら、コードネーム:切り裂き王子ジャイ・ラッパー、今そちらへ向かっています』

 相変わらずだな少女よ。

「全開だな、それともフルスロットルって言おうか?」

『いえ、そこは僥・倖・でお願いします。あたしのフ・ォ・ー・ミ・ュ・ラ・―・9・1・の回収に成功しましたので、さっそくお披露目に行きますね、では・・・・・・ブツン』

 そっちから切るとは思わなかった。

 それにフォーミュラー91ってなんだ?

 F91? 

 あれか、スーパーでロボットな大戦で妙に回避率の高い機動戦士か? 

 質量をもった残像とか出すやつでしょ?

 俺も好きだよF91。

 そのチョイスは中々だ。

 世界でもハイセンスな架空のロボットを将棋の駒のように動かすのは俺は大好きだ。 

 まさかお前がスパロボファンだとは、はなまるをあげよう。

 今気づいたけど、また俺は勝手な解釈をしている気がする。

 これはいかん、いかんよ。

 両手で顔を挟むように強く叩く。

 少しは気合が入ったかな。

 これ以上強く叩くのは正直、自虐趣味のない俺には無理だ。

「それにしてもF91を回収したとはどういうことだ? 何か乗り物でも確保したのかあいつは・・・・・・」

 幼児用の三輪車を希望。まさか、自転車より速い乗り物は使ってこないと思うが、待てよ・・・・・・この曲がり角の少ない状況で俺自身より速い乗り物で来られたら隠れる場所は無い。

 つまりここは一番危険な場所になるんじゃ。

 俺は鬼ごっことは提案したが、建物の中に逃げ込んで良いとか乗り物は自由とか細かい設定をしていない。

 まずい、何でもありになったら脳天から常識をぶっ壊してるあいつの方が有利だ。

『お披露目に行きますね』

 確かに石上清香はそう言った。

 俺にF91を見せに来るのではないか?

 顔には脂汗が吹き出し、背中にジトッと汗が滲む。

「見聞色!」

 咄嗟に周りに全神経を向ける。

 目が耳が鼻が皮膚が、情報を得ようと鋭敏になる。

 帰宅ラッシュで際限なく車道を行く車のエンジン音や皮膚にあたる風が邪魔だ。

 先ほどまでより歩行者の数が増えていて騒がしくなってきたのが嫌だ。

『ファーーーーーーっ!』

 ここでそれを嘆いても俺の理不尽、咎められて当然なのは自分だ。

 状況を受け入れて対策を練りなさい、桃園右近!

 フォーミュラー91、多分エンジンの備わった乗り物だろう。

 なんかしらのエンジン付きの乗り物で来るのなら、エンジン音がして当然、でもこの帰宅ラッシュの中ではあてにならないか。

 現在地のことを考えるとどっかしらの角に近づきたい。

 乗り物に乗ってくるのなら直線での勝負は絶対避けたいことだ。

 どこの角に接近するかが賭けになる。

 少しでも勝率を上げるために特に目と耳を凝らす。

 意識を張りながら、一番近くの曲がり角へゆっくりと距離を詰める。

 一応耳にも意識を持っていく、普通は目立たないように忍んでくると思うが、何せ相手があいつだ、爆音を上げて迫ってくるかもしれない。

 集中し、なんだか街道を行く自動車やバイクが若干ゆっくりに見えてきた。

 一秒が十秒に感じ、意識が加速する。

「どう来る?」

 そして眼の端――車の群れの中に、大型トラックの陰から一台の白い原チャリがいきなり猛スピードでこちらへ接近してくるのを捉える。

 スローモーションのように流れる時の中。

 原チャリの側面に赤く『F91』とペイントされているのを確認。

「チイ!」

 思わず体を横に投げ出す。

 ついコンマ一秒前まで頭のあった位置を白い手が薙いだ。

 身体を投げ出し横に倒れたまま、その手の主を見る。

 フルフェイスのヘルメットを被った高校の夏服を着た少女。

 そいつは数メートル先に停車するとヘルメットのアイシールドを持ち上げる。

「結構やりますね、あ・な・た・」

 平然と言ってきた。

「何を言う、これでも俺は一時期トップアスリートだったんだ!」

 全身の筋肉をバネに飛び起きると、服についた砂埃を払い、簡単にジーパンのしわを伸ばす。

「さすがはあたしの旦那様。そうじゃないと面白くありません。その自慢の強靭な肉体で愛の名のもとあたしに襲い掛かってくるんですね。そしてとんでもない責めを・・・・・・よろしい! こちらも一方的に激しい快楽に溺れさせてもらうつもりはありません! ここはあたしも鋼のような肉体を・・・・・・!」

「良いから! 恥ずかしいから! 周りの人見てるから! 天下の往来で叫ぶな! それにな、鋼の肉体を持つ女性に興味のあるのは、極一部!」

 俺にとってそんなガタイの良い女性はアウトなの!

 しかもお前の脳内では俺たちの関係はどこまで進んでるんだ?

 なんかこいつは恋愛過程を飛び越えて肉体関係に拘ってる気がする。

 今更無理だが最初からお前が普通に手を繋いでデートしたいって言ってれば喜んで対応したんだからな!

 良いか少女よ? 

 最近当たり前のように増えてきた多くの草食系男子が求めるのは平凡な女性だ!

 現代の男子はあまり女性に多くを求めてはいない!

 お前も女子高生ならティーンズ誌ぐらい読むだろう? 

 結構今の高校生にはスタンダードな知識だよ?

 なんで三十路の俺が知っててお年頃のお前がわきまえてないんだよ?

「本当に魅力的な女子の前には例え草食系男子でも理性を保てないのが男の性なのですよ?」

 お前が男の性について語るのは十年早い!

 それに当たり前のように思考を読むな!

 しかもヘルメット被っててもわかる残念な人に言う感じの表情がムカつく。

 ほら、いくら端に停めても停車禁止の道では違反だぞ、クラクション鳴らされてるから。

 とりあえず清香がよちよちとバイクを退けるのを待つ。

「お前の魅力は男を間違ったことに目覚めさせると思う」

「なるほど、ところであなたはどうなんですか? 目覚めそうですか?」

 そう言いながらヘルメットをスポッと外し、ハンドルに吊るすと原チャリを降りて数歩近寄ってくる。

 頭を振って流れる黒髪が汗で湿っていて色っぽい。ちょっと良い匂いもする。

 急に雰囲気が落ち着いたな。

「若干目覚めてる。さっき感じた」

 なぜ女に迫られてオネエに目覚めるのか訳が分からない。

「具体的には?」

「SにもMにも目覚めるぞ」

「じゃあお互い変わり番こで遊・び・ま・し・ょ・う・」

 だからお前の遊・び・って言葉の使い方がいやらしいんだよ。

 でもなんか先ほどよりこいつが嫌いじゃない。

 むしろ・・・・・・。

「一人でやってろ!」

 どうした、右近?

「M的にはうれしい言葉ですがS的には憎たらしいですね。あれ? 顔が赤いですよ?」

 なぜここでニコッと無邪気に笑うんだ。

 見てくれが良いからキュンってするんだよ。

「くそ! 俺は騙されないぞ!」

「急にどうしたんです?」

 可愛く首を傾げるな。

 俺の精神が少しこいつに順応出来てきたのか?

 変な奴だってわかってるのになんか可愛いく感じてしまうんだけど・・・・・・。

「べ、べ、別に、なんでもねえよ!」

「何か言いたいんじゃないですか?」

 艶めかしい口調でさらに距離を縮めてくる清香さん。

 手を伸ばせば届く位置まで接近して、顔を突き出してくる。

「本当に?」

 誘導される感じに俺の告白展開になってる?

「な、なんでもねえって!」

「ほんと~?」

「ほんともほんと、ノーコメント!」

「・・・・・・」

「・・・・・・・・」

「ん~、そっか~」

 一度肩をすくめ、つまらなそうな表情で彼女はスカートのポケットから紫色の小瓶を取り出す。

「やっぱり安物じゃあダメか~」

 小瓶のラベルには『男メロメロフェロモン香水』と書いてある。

「それか!」

 いや、そうゆうの使ってくる女性は初めてだが、効いてる、ちゃんと効いてるよ! すごいよそれ!

 あー危なかったー!

 タネを明かされると急に醒めちゃったよ。

「近付いちゃえばこっちのもの! ラブハンド!」

「チッ!」

 口調が元に戻ってる。やっぱり演技だったか・・・・・・。

 彼女が伸ばす手をバックステップで紙一重にかわす。

「あはは、楽しいね? あ・な・た」

「十数秒前まで結構可愛かったぞ!」

 それを皮切りに俺は走り出す。

「乙女はいつも可愛いんですよ⁉ フォーミュラー91!」

 そう言って娘は口笛を鳴らす。

 鳴るや否や車道に停車していたF91が自動に歩道の段差を乗り越え、彼女の隣に並ぶ。

「!」

 原チャリにフォーミュラー91とか名前を付けるのは期待し過ぎだとは思ったが、なるほど結構なハイテクなマシンじゃないか。

「あなたなどあたしとF91の前ではナメクジ同様です!」

 ヘルメットを再び被った少女がF91に跨るとエンジンを吹かし、交通法違反お構い無しに歩道を走って追いかけてくる。

「よい子は真似をしないように!」

 頭に浮かんだ言葉を適当に叫び、俺はスピードを上げる。

 一目散に歩行者が俺とF91を駆る少女を避けて道を開く。

 滅茶苦茶やりやがるな小娘め。

 良いだろう!

 先にそのような子供も守っているルールを破ったのはお前だ。

 こちらにも考えがあるのだよ。

 なんでもありになったら俺だって結構強いんだからな!

 そう、幼き頃から磨きをかけている俺の実力、とくと味わうがいい!


ほぼ原点のコピペですが、短くなった分読みやすいはず!

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