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3話 イアンの心配

イアン・エル・クレイヴァンは心配していた。

妹であるライラは王太子であるスヴェインと恋仲である。それは密かに知られている事実であり、イアンもその実態を知る数少ない者の1人だった。

イアンの心配事はただひとつ。王太子の婚約者であるシャノン・ローズ・カヴェラルス侯爵令嬢だ。

彼女はそれはそれはスヴェインを愛してやまないのだと有名だった。王城に足繁く通い、スヴェインの付きまといをした挙句、婚約者にまで上り詰めた活発なご令嬢。

そこまでするご令嬢がスヴェインとライラの仲を疎ましく思わないはずがない。


イアンはシャノンがライラに危害を加えたりするのではないかと危ぶんでいた。


スヴェインは昔っからライラ、ライラとライラを追いかけ、ライラ一筋だ。そんな彼の寵愛を受けるライラはシャノンにとって煩わしい存在でしかない。

大人しい妹が、感じの悪いいじめでもされていないかと心配だった。


それとなくライラにシャノンの事を聞いてみると、


「シャノン様はとっても良いお方よ。私と殿下の幸せを願ってくれているの」


などと返ってくる。

シャノンがライラに危害を加えるのではという心配をスヴェインに話せば、


「シャノンは私の事をおもってくれているんだ。そんなことするわけが無い」


などと返ってきて話にならなかった。


そんなはずないだろうとイアンは信じられなかった。

自分の婚約者の想い人など女は排除したがるものだと、イアンはシャノンの観察を始める。


ライラとの入れ替わりの後でライラと会話するシャノンを観察する。


「今日のドレス少し身がきついのよね。大丈夫でしたか?」

「はい。シャノン様のドレスはピッタリですよ」


そんな会話をしながら出てくる2人はまるで仲の良い姉妹のようだった。



ライラとスヴェインのデートが終わり、スヴェインと帰るシャノンを観察する。


「今日はどちらまで行かれたのですか?」

「王都の西の方だよ視察もかねていたから少し入念に回ってきたよ」

「まぁ」


そんな会話をしながら帰りの馬車に乗り込む2人は、普通の婚約者と言っても差し支えないだろう。



スヴェインとライラがデート中のシャノンを観察する。


彼女は1人で個室のあるカフェに篭もり静かに本を読んでいた。


怒るでもなく、ヒステリックになることもなく、ただ淡々とスヴェインとライラの隠れ蓑になるシャノンに、イアンは段々と同情するようになった。


(本当にシャノン嬢は忠臣なのだな)


スヴェインに話しかけられて笑うシャノンは恋する乙女そのもので、それでいてスヴェインの望みを叶えようと奔走していた。


スヴェイン、ライラからシャノンの話を聞き、自身も観察した結果、彼女はほんとうにスヴェインを想っており、それ故にスヴェインのために最善を尽くしているのだとイアンは結論づける。


(そうなってくると、あまりにもシャノン嬢が可哀想ではないか)


一人でライラの格好をして静かに本を読むシャノンを想う。

その姿はどこか寂しそうだった。

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