表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/15

1話 シャノンの初恋

リュミエール王国の王太子、スヴェイン・ジェイ・リュミエール様を初めて見た私シャノン・ローズ・カヴェラルスは一目で恋に落ちた。輝く黄金の切りそろえられた髪に深い湖のような瞳。まるで物語に出てくる王子様のようだと父に伝えれば、本当に王子様なのだよと笑われたのをよく覚えている。


15歳になると行われるデビュタントのパーティでシャノンはすっかりスヴェインの虜になってしまった。娘の様子を見かねたカヴェラルス侯爵アルヴァンは苦笑しながら娘をスヴェインに紹介する。


「スヴェイン様」

「アルヴァン殿か久しぶりだな」

「殿下もお元気そうでなによりです。こちらは私の娘のシャノンです。シャノン、ご挨拶を」


シャノンは緊張しながらカーテシーをする。


「は、初めましてスヴェイン様。シャノン・ローズ・カヴェラルスと申します」

「どうも初めましてスヴェイン・ジェイ・リュミエールだよ。よろしくね」


そう言ってにっこりと笑うスヴェインにシャノンはますます舞い上がった。


「娘は今日がデビュタントでしてね、思い出づくりに1曲踊ってやっては貰えないだろうか」

「お、お父様!」


いきなりの父の提案にシャノンはびっくりしていた。まさかこんな素敵な王子様と踊れるなどと思っていなかったのだ。

スヴェインはまたニコリと笑うと、


「こんな可愛らしいお嬢さんの相手だったら喜んで」


と言ってシャノンの手を取りダンスホールへ向かう。

音楽が始まりスヴェインはシャノンをリードするように動き出した。


「緊張していない?」

「とっても緊張しています!足を踏んでしまったらどうしましょう」

「気にする事はないよ。実はそれ結構よくあることなんだ」


などと言ってウインクしてくるスヴェインにますますシャノンは舞い上がった。右へ左へクルクルと回りながらステップを踏む。幸せな時間は音楽が終わると終わってしまう、父アルヴァンの元に送り届けられたシャノンは「またね」と手を振る王子様にすっかり恋をしてしまったのである。


「シャノンはスヴェイン様が気に入ったのかい?」

「はい!とっても素敵な方でした」


そうかと笑うアルヴァンはこの調子ならスヴェインに婚約話を持っていけばシャノンはとても喜ぶだろうと親バカを発動させるのだった。


アルヴァンがスヴェインに持って行った婚約の話はすぐに拒絶されてしまった。

その事を聞いたシャノンはとても悲しかったが、しょうがない事だと若干諦めていた。シャノンはデビュタントの時に踊ってくれた時にしかスヴェインとの接点がなかったからだ。

シャノンだって一度踊っただけの相手からの婚約話など気にもとめない。誰だったっけと思ってしまうことすらあるだろう。


(それならば、接点を作ればいいわ)


息巻くシャノンは、とても積極的なご令嬢だった。

それからシャノンは積極的に王城に登城した。表向きは勉学の為、淑女教育の為といったものだったが、その目的がスヴェインであることは誰の目から見てもあきらかだった。


スヴェインが騎士舎で訓練をするのであれば応援に行き、スヴェインが図書館に行くのであれば、一緒に行って本を読みと、誰から見ても明らかな付きまといを始めたのだ。

優しいスヴェインは笑いながらシャノンが挨拶をすると挨拶を返していたが、周囲から見ればシャノンの鬱陶しさは一目瞭然だった。


当のシャノンはスヴェインと接点を作るという目標のために一生懸命に動いているだけであってスヴェインが迷惑に思っているだなんてちっとも思っていなかった。

スヴェインが優しくシャノンに接していたのもその考えを助長する一端になっていただろう。



そんな日々がしばらく続いたある日シャノンはスヴェインからお茶に誘われる。スヴェインからの誘いにシャノンは浮かれきってしまった。いっぱいいっぱいおめかしして約束の場所に向かうと、優しい王子様は暖かくシャノンを迎えてくれた。


「ようこそシャノン。来てくれて嬉しいよ」

「は、はい!スヴェイン様!本日はお誘いいただきありがとうございます」


座ってと促され席に付くとスヴェインは世間話から始めた。シャノンは細心の注意を払いながらスヴェインとの会話に臨む。


「ファーソン領では魚料理が美味しくてねこんどの視察を楽しみにしているんだ」

「まぁ。そうなのですね。ファーソン領といえば先日は土砂災害の被害に遭って大変だったとか。慰問に伺われるんですか?」

「そうだよ。シャノンはよく知っているね」


次から次へと移り変わる話題はまるで時事の問題でも出されているかのようで、シャノンはテストでも受けている気分だった。

しばらくそんな話が続いたあと、スヴェインは本題だと言わんばかりに真剣な表情になった。


「ねぇシャノン。君は私の事が好きなんだろう?」


いきなりのどストライクな質問にシャノンは顔を真っ赤にしながらはいと頷いた。


「だったら私の婚約者役をやってみないかい?」


スヴェインはそんな事を言うのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ