16 アレは気にせずBBQ
「ちょっと、なんであの二人がいんのよ!?」
「えええん、ごべんなさァァい!!」
あれから週末になり。
なんとわたし達は、楓くんのお姉さんである佑月さんの運転で別荘へ向かっていた。
外泊とゆうことでもちろん両親の心配するところもあったけれど、あくまでもお姉さん主催だということ、そして菜那ちゃんも一緒ならとゆうことで許しを得た。
そしてめでたく楓くん達が毎年行っているとゆう別荘へ一泊の旅行が叶ったのだ。
けれどもそのメンバーは…………
「たまに顔出した部活で先輩に旅行先を訊かれてさ、それをさらに櫻井に聞かれちゃって………で、連れてけってゆーから断ったら、先輩が面白がって瑠生とテニスの勝負して負けたら連れてってやれと………」
「で、負けたワケ!?」
「え〜んごめんよォォ!だってアイツら卑怯なんだよ、朝の六時に勝負を挑んできてさァ!そんなの起きれっこないじゃん!不戦敗とかさァ!」
「こォの、、馬鹿たれがッッ!!」
………とまあ、いつメンであるわたし達に加えて、瑠生くんと、そして蓮水くんの片想い相手である赤ピアスこと櫻井さんも一緒だった。
「うるっさいわね、アンタ達静かにしなさいよ」
「誰かさんがいなければ声を荒げることもなかったんですけどねぇ」
「はあ!?」
「まあまあ二人とも仲良くさァ」
「「あんたは黙ってな!!」」
「ぴえん」
彼女と犬猿の仲である菜那ちゃんが圭介くんへ悪口雑言並べ立てることはあったけれど、道中特に問題なく別荘へ到着し、佑月さんはテキパキと部屋割りを決めた。
男三人一組と、わたしは菜那ちゃん。佑月さんは赤ピアスとだ。
「私としては星来ちゃんとお喋りしたかったんだけど、なぁんかねぇ?ほか険悪な女二人で殺人事件が起きてもなんだしー?かといって私の一存で男女ペアにして、人数が増えて帰ったらことだしー?」
ケラケラ笑いながら、すごい台詞をこともなげに言う破天荒さは流石だ。
また楓くんが頭を抱えた。
夜には花火大会があるそうで、昼間は近くの綺麗な河原でBBQをすることになり、わたし達は男女に分かれてそれぞれ準備を始めた。
楓くん達は日除けのためのタープテントを張り、火起こしを。わたし達は食材を切って下拵えをした。
「星来ちゃん、この間はありがとねぇ。おかげで間に合ったわー」
と、佑月さんが野菜を切る手を止めて言った。
「いえ、間に合ってよかったです」
「まぁ今回も私に見合う男はいなかったけどね………良い経験にはなったわ」
ダンッ!!と彼女は包丁を切る必要のないカルビ用生肉へとブッ刺す。
何があったかは訊かないでおこう。
「………で。あの子はなぁに?」
その包丁を今度は手伝いもせず楓くん達の方にいる赤ピアスへ向けた。
「アレは気にしなくていーです。親が政治家だからって高慢チキな性悪女なんで」
菜那ちゃんが一蹴すると、佑月さんは察したように息を漏らした。
「あ〜政治家ねぇ。うちの親が知ったらどんな顔するかしら」
そう言われて、わたしは初めて彼の家柄というものを意識して、火起こししている楓くんとその隣にいる赤ピアスを見た。
大病院の息子と、政治家の娘………普通に考えればそれはお似合いなんだろう。完璧なヒーローの隣にいるのはわたしなんかじゃない。
――――い、いかんいかん落ち込むな自分
楓くんの想い人はわたしではないのだから。応援するモブであろうと決めたのだ。
「星来ちゃんは手先が器用ね」
「そーなんです、星来ちゃん洋服も自分で作っちゃうこともあるんですよ!キャラ弁なんかも!」
「あらー、それはすごいわぁ。フェルトでマスコットなんかもお手のものなんでしょうね」
「言われるほど上手には出来ませんけど、作るのは好きなので簡単なものだったら」
「そんなことないわぁ。上手よ」
佑月さんは見てもいないのににこにこと褒めてくれた。楓くんに似て美人でなんとお優しいのだろう。
「あらあら圭介、肉ばっかり食べて。私の前でいつからそんな厚顔な態度が取れるようになったのかちょっと教育が必要かしら」
「そうですよね、明日は早起きして掃除でもさせましょうか?」
「ぴえ〜ん!辛辣ゥ!!」
お肉も焼き上がりやっとこご飯の時間。
コンビネーションで圭介くんへ牽制する佑月さんと菜那ちゃんを尻目に、わたしはコソッと瑠生くんの隣へ移動した。