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8,ガーデンパーティー

「ようこそいらっしゃいました、レナルド様、サマンサ様。ごゆっくりお楽しみください」


今日は王室主催のガーデンパーティーの日。

室内よりも比較的フランクな雰囲気である外でのパーティーなのに加え、招かれているのは私達と年の近い人たちのみ。


そして、私はひそかにこのパーティーを楽しみにしていた。

なぜなら……


「お菓子がたくさん!!」


私は大の甘党だからである。


「あまり食べ過ぎると怒られるからな」


レナルドにくぎを刺されたものの、私はすぐにお菓子のテーブルへと吸い寄せられた。

テーブルの上には、マカロン・チョコレート・ケーキ・マドレーヌ・カヌレ・ガレット……と、とにかくたくさんの種類のお菓子がある。

どれから食べようかな……全部一つずつ食べたら後で怒られちゃうかな

なんて考えていると、聞き覚えのある声がする。


「まさか全部食べようなんて思ってないわよね?」


笑いながらやってきたのは勿論リリアだ。


「……さすがに多いかな」


「そんなに食べたら、さすがのレナルドも擁護してくれないわ」


「わかったわ。半分くらいにしておく」


ガレットとマカロンを食べたところで、横でマドレーヌを食べていたリリアが再び私に声をかける。


「あ! ダリル、今暇になったみたい。せっかくだから主催者に挨拶をしに行きましょう」


今回のガーデンパーティーの主催者は王太子であるダリルだ。

こういった行事の企画も彼の教育の一環らしい。

まだ十歳なのに、本当によくできた子である。


しかし、私たちがダリルの近くまで寄っていったところで、再び彼は他の来場者につかまってしまった。


「ダリル様! こんにちは、私……


一人の同い年くらいの女の子が彼の前に駆け寄り、自己紹介をする。

ダリルがその子に対して王子様として申し分ない態度で接するものだから、その女の子は頬を赤く染めると、彼の腕にしがみついた。


「君みたいな可愛い女の子に良く思ってもらえてうれしいよ。きっと気に入るお菓子もあると思うから、少し見てきてほしいな」


その言葉を聞いた女の子は、意気揚々とお菓子のテーブルの方へ立ち去って行った。


さてと、といった様子で私たちの方に向き直ったダリルだったが、少し年上に見える女の子が私達の間に割って入ってくる。


「ダリル様―!」


仕方なく私とリリアはもう一度待機し、ダリルはまた王子様スマイルを浮かべて対応をする。


「あいつってちゃんと王子様してるのね」


「彼、かなりしっかりしていると思うわ。あなたに対する態度以外はね」


「せっかくならそこもしっかりして欲しいところね」


そのまましばらく見守っていたのだが、彼女はダリルのもとから離れる様子はない。


「……ごめん、別の人とも話さなくてはいけないから、またね」


まだすがってこようとする彼女をサッとよけて、ダリルはやっと私達のところへやってきた。


「サマンサ、リリア、来てくれてありがとう」


そう言いながらなぜか私に抱き着いてくる。


「息をするようにそういうことするのやめて頂戴」


「えー、相変わらず冷たいな」


「そんなことするからでしょう?」


何とかダリルを剥がしていると、リリアが余計なことを言い出した。


「でもサマンサ、ダリルってちゃんと王子様しているのねってさっき褒めていたわよ」


「本当!?」


「まぁそれは事実だけど……」


「なんだ、恥ずかしがり屋なだけなんだね。僕の前でも、もっと言ってくれていいんだよ?」


「そうやって調子に乗るから言わないんですー!」


そんなことを話していると、別の招待客がダリルと話すために並び始めた。

やはり主催者は忙しいのだろう。


「じゃあこのへんで失礼するわ。主催頑張ってね」


私がそう言うと、リリアもにっこり笑って、


「今日はありがとう」


と声をかける。


「そうか、もう少し話したかったけど……また遊ぼう」


「「勿論」」


こうして私たちはダリルのもとを離れ、並んでいる人に場所を譲ろうとした。

しかしリリアが次にダリルと話そうとした人とぶつかってしまう。


「す、すみません。私がよく前を見ていなかったばかりにぶつかってしまいました」


「大丈夫だよ。僕も前を見ていなかったから……ごめんね?」


可愛い顔でにっこり笑うこの男の子の顔は、どこかで見たことがある気がする。

その男の子とリリアがお互いにお辞儀をし合っているのを見ながら、一生懸命考える。

すると、私の頭の中にボヤっと小説の挿絵の1ページが出てきた。

それと同時に、その男の子は名乗り始める。


「僕、クリス・シェルマンって言います。二人は、リリアにサマンサだよね。仲良くしてくれると嬉しいな!」


ニコニコしながらそう言った後、忘れてたというような顔をしてダリルのもとへ向かっていく。


彼は、原作小説に出てくる王子の友達ポジションのキャラクターだ。

その可愛い見た目と言動から、多くのファンがいた。

しかしただ可愛いだけではなく、頭の良さがずば抜けているため、次期宰相候補として王子と共に過ごしていたのだ。


新たな小説のキャラクターに出会えたことに感動する。


多分今世でもダリルと友達になるだろうから、自然と私とも関わることになるはず。

楽しみだなあ、と思いつつ、私はとある可能性にたどり着いた。


原作小説では、ダリル、リリア、次期宰相候補のクリスに加えて、次期騎士団長候補のエリクがメインキャラクターだ。

メインキャラクターの三人がいるなら、残り一人もきっとこの会場にいるだろう。

ここまで来たらエリクにも会ってみたい。

そんな欲がわいた私は、リリアに少し別行動をとりたい旨を伝え、会場を一人で歩き始めた。

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