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4,リリアの救出


「僕のせいで巻き込んでしまってすまない。えっと……」


「私はサマンサよ」


「……レナルドだ」


「リリアです」


「そうか、サマンサ嬢、レナルド殿、そしてリリア嬢。みんなありがとう。先ほど迎えに来てもらえるように魔法で連絡したからじきに救援が来ると思う。申し訳ないがそれまでここにいてもらえるかい? 君らが僕を追っている奴らにつかまるとまずいことになると思うから」


リリアと私がコクコク頷いている横で、レナルドは首をかしげる。


「……どうして、追われていたんだい?」


「君たちになら話してもいいかな……実は僕は王子なんだ。ダリル・ヴァ―ノン、聞いたことがあるだろう?」


レナルドは驚いたように目を見開き、リリアは口を押えた。


「お、王子だったのか」


「お、王子様……!?」


「だから、こんな状況もあるってことさ。迷惑をかけてすまないがもう少しここで待機していてくれ」


ダリル王子が名前を明かしたことで、私たちはそれぞれ詳しい自己紹介を始めた。

リリアはどうやらこの近くに住んでいて、家に帰る途中でここの物置小屋に寄ったらしい。


そのまま何時間か待つと、王室から迎えがやってきた。

物置小屋の扉を開けた執事のような恰好をした人が、安心した様子で王子を抱きしめている。


「レナルド様、サマンサ様、それにリリア様ですね。王子のことを助けていただきありがとうございます。皆さんのことも家までお送りいたしますのでご安心ください」


王子を馬車に乗せた後、私たちの方までやってきて馬車に乗るように誘導する。

しかし、リリアはレナルドと私の袖をそれぞれぎゅっと掴み、震える声で話し出した。


「私、私、家に帰りたくない。……私のことなんて道具としか見ていない親がいる家になんて! ここで初めて、人として扱われた気がしたの。……私、みんなと一緒に居たい」


リリアの心からの叫びに私とレナルド、そして王子の執事はみんな眉を下げる。

私は原作を読んでいるから、彼女が両親に虐待されていることは知っていたが、ここまでだとは思わなかった。


「……どうにかならないだろうか」


「どうしましょう……王室で一時保護することもできますが、それにも限度がありますし……」


レナルドと執事が相談し始めた。

私と言えば……一つの解決策を思いついていた。

……うまくいくかはわからないけど。


「あの……少し提案があります、いいですか?」


「はい、なんでしょうか?」


「ウォーカー伯爵の養子としてリリアを推薦するのはどうでしょうか? 彼女、光魔法が使えるんです。才能があるんです。お願いできませんか?」


原作でもリリアは、学園に入るタイミングでウォーカー伯爵夫妻に引き取られる。

そこで親の愛というものを初めて知るのだ。

原作のタイミングより十年も早いのは問題だが、人柄の良いあの夫妻のことだ。

きっとリリアを大切にしてくれるはず。


「ウォーカー伯爵家ですか。確かに家柄、派閥、人柄など問題はありませんが……あの夫妻に今後実子が生まれる可能性も考えると、少し難しいのでは?」


「きっとあの方々なら実子と養子、分け隔てなく接するはずです。それに、光魔法を使えるリリアがいたらきっと力になりますよ? 」


他の属性に比べて発現率が低い光魔法。

それに加え、どんな傷でも癒せるほどの力を持ったリリアは貴重な存在だ。


「リリアはとてもいい子なんです。私にはわかります!」


たった数時間しか過ごしていないけれど、私は『この世界の』リリアもとっても良い人だと感じ取っていた。


「お願いします!」


私が頭を下げるのを見て、リリアも同じように執事に向かって頭を下げる。

その後にレナルドまで同じように頭を下げた。


レナルドもきっと同じ気持ちでいてくれたのだろう。


「……そこまでされたら何もしないわけにはいきませんね。わかりました、一度伯爵の方に打診してみます。それまでは王宮の方で預かりましょう」


「やったー!!」


私達は手を取って喜び合う。

いつもは無口なレナルドも、さっきまで震えていたリリアも、そしてダリル王子も馬車から出てきて一緒に喜び合ったのだった。


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