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4,結界の管理者

「レイモンド先生が……学園の結界の管理をしていると?」


ダリルがもう一度聞き直すと、学園長はふむ、とうなずいた。


「しかし引継ぎが上手くいっていなくての……ここ数か月はレイモンド先生には大きな負担をかけてしまった。体育祭で魔物が出てきてしまったのもその引継ぎのミスによるものだったのだ」


「そういうことだったのですね」


リリアは深刻そうな顔で学園長の話に相槌を打っている。


「そして今日、裏庭に魔物が侵入していただろう? それも一匹ではなくかなりの数が。その異変を察知した私とレイモンド先生がここに駆けつけたら……」


「駆けつけたら……?」


私が言葉を繰り返すと、学園長は眉を下げる。


「水晶の一つが無くなってしまっていたんだ」


「えっ!?」


管理が杜撰すぎやしませんか? と思ったものの、さすがに口には出さなかった。


「今は私達がいるから部屋の防護はしていなかったが、普段は入れないようになっている。だがそれにもかかわらず、水晶が盗まれてしまった。このままでは学園の建物内にも魔物が現れるようになってしまうだろう」


「そんな……!」


「だから、その水晶探しを協力してほしいのじゃ。そうであろう? レイモンド先生」


「……はい。頼るのは不本意だが、仕方ない。私からもお願いする」


なんとあの数学教師が私たちに向かって頭を下げたのだ!

これにはあまり表情の動かないレナルドの顔にも驚きが見えた。


「生徒にこんなことを頼んでしまってすまないのう、お願いできるかい?」


「勿論!」


私が即答すると、他のみんなも了承して頷く。


「迷惑をかける」


「水晶は学園外に持ち出されると自動追跡信号が送られるようになっているのじゃが……今のところその信号は届いていない。おそらく学園内のどこかに隠してあると踏んでいる。だから君たちには学園内の捜索を頼みたい」


「了解しました……ところで」


私はレイモンド先生の方へ向き直って話しかける。


「レイモンド先生がここの立ち入り禁止区域に出入りしていた理由はわかりました。ではなぜ私やダリルに……なんというか……きつく当たったんですか?」


私がそう言うと、学園長はあきれたような顔でレイモンド先生を見つめる。

先生は答えたくないのか口を引き結んでいたが、やがて観念したかのように話し出した。


「それは……」


丁度話し出したその時、学園長のローブに入っている魔道具が震える。

彼は急いでそれを取り出し後ろを向くと、誰かと通話を開始したようだ。


「……エマ先生……誘拐!? ……西の……岩場の……」


とぎれとぎれに聞こえる単語からは何やら不穏な雰囲気を感じる。

そのまま通話が終わり、学園長がこちらに向き直った瞬間、レイモンド先生が学園長の方をガシッとつかんだ。


「エマが誘拐だって!?」


「……」


「西の岩場の町……オリオンシティか?」


そう呟くと、先生はドアを蹴破る勢いで部屋を飛び出していった。

結局私が先生に聞いた質問の回答は得られなかったが、今はそれどころではない。


「エマ先生が誘拐されたんですか!?」


「かなり聞こえてしまっていたか……大変なことになってしまった。水晶探しもしなくてはならないし、エマ先生の捜索もしなければならない」


「そんな……エマ先生、今日は彼氏とデートに行くって楽しそうにしていたのに……あっ」


うっかりリリアがエマ先生の個人情報を流してしまっている。

それに反応することなく、ダリルが話し始めた。


「水晶を探すグループと、エマ先生を救出しに行くグループに分かれよう」


流石、こういう時はいつもと違って冷静沈着な完璧王子だ。


「私はエマ先生の様子を見に行きたい……それにあの数学教師……レイモンド先生の様子も変だったしなんだか心配だから」


私がそう言うとリリアもうんうんとうなずく。


「もしもけがをした時のために私も救出班のグループに回った方がよいかと思うわ」


「リリアとサマンサが行くなら俺も救出班の方に参加したい」


と言いつつ、レナルドはちらりとリリアの方を見た。

……リリアが行くから行きたいだって!?

これはリリアのことは俺が守るぜっていうこと?

こういう時に考えることではないのだけれど、そのわずかなレナルドの言葉にも私は反応してしまう。

ダリルはそんな私の少しの変化に気が付いたのか、わかりやすくあきれた顔をする……が、次の瞬間顔に緊張の色を走らせた。


外からこちらへ駆け寄ってくる足音がする。

なんの音だ、と私達と学園長は警戒していたものの、現れたのはクリスだった。


「やっほー、何かあった感じ? なんかレイモンド先生が鬼みたいな顔でこの辺から走ってくるのとすれ違ったから、気になって来てみちゃった」


立ち入り禁止区域なんてものはなかったかのように堂々と入ってくるクリス。

その平然とした様子はもはや彼の長所でもあるのかもしれない。


私たちはクリスにも現状を伝えると、彼はとても驚いていた。


「なるほど、結界に不具合があったから最近魔物が学園内に居たりしたんだ……エマ先生のことも心配だね」


クリスも水晶探しとエマ先生の救出に参加することとなり、ダリルを中心に役割分担が行われた。

その結果、私・リリア・レナルド・ダリルはエマ先生の救出とレイモンド先生の様子を見に、エリク・クリスが学園に残って水晶を探すこととなった。


クリスは一人でも探せると言っていたものの、ダリルに「一人に押し付けるわけにはいかないよ」と言われしぶしぶエリクとペアを組んでいた。

まぁ、彼の人脈をもってすれば一瞬で探せそうな気もするけれど。


そんなこんなで私たちは、馬に乗って学園を出て、オリオンシティへ向かうのであった。

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