魔女の警告
「署名を持ってきました」
「わかってる」
不機嫌な声色をだしたのは、巨大な窯で何かを煮込んでいる全身黒づくめの小さな魔女
言葉を向けられたのは、美麗で豪華な衣装に身を包んだ見た目麗しい金髪の少女である
「魔女、様?」
「だから!全部わかってると言ってる!」
相変わらず少女に向かって顔も向けないまま、不快な感情だけ言葉と共に飛ばす魔女
「『特別』を求めたのはお前たちだ!その『罪』を決めたのもな!」
「違います!私たちは!」
「くどい!」
振り返った魔女の目には少女に向ける明確な殺意が浮かんでいた
少女の後ろから付いて来ていた兵士たちが一瞬で身構える
「お前の頭だけ王国に帰してさしあげてやろうか!?ニールセン、王女様風情が」
「貴様ァアガアアァツ!」
ニールセン王女と呼ばれた少女が「やめなさい!」と兵士を制す間もなく、兵士の首から上が消えた
数秒遅れでその切り口から血が噴き出させながら、兵士は倒れた
魔女は「フンッ」と小さく鼻を鳴らすと、大窯に向き直り調合を再開する
「ポルタ様への無礼は私も赦しません。何があっても決して動かないでください」
動揺する兵士を制しながら、ニールセンは持っていた「署名書」を魔女に向かって広げる
「ポルタ様、聞いてください。私たちはあなたに責任を問うために来たのではありません」
ポルタの手が止まる
「今の世界の代表として、あなたに助力をお願いに参ったのです」
「小娘が『世界の代表』ねぇ?」
「きさっああ、ああ、あああ、あああああぁぁぁ」
兵士の頭半分が瞬時に消え去ると、兵士は手足を異様にバタバタさせて地面に倒れた
他の兵士は恐怖のあまり微動だに出来なくなっていた
「今の、世界に」王妃が恐怖を抑えながら口を開き始める
「今の世界に、逃げる王はいません。だからこそ、私がここに遣わされたのです」
いつの間にか魔女の視線が、彼女が持っている署名書の文面を追い続けていた
「何もかも不問とする、ねぇ。なるほど、あのババァが考えそうなことだ」
「では?」
「話を聞いてからだね」
ポルタはそう言うと一瞬で、とある王宮にある玉座の間に移動した
ニールセン王女と兵士全員も一緒に