コワれたせカイのイカいのセいブッ
数か月前、世界中の空に無数の「孔」が開いた
孔は「異界の生物」がこの世界に降ってくる出入り口となっていた
昼夜問わず無限に降り注いでくるそれら生物は不揃いで、形も歪なものばかりであった
外見ばかりか戦闘方法も全く異なるもので構成されていて、統一性が見られなかった
だが、たった1つだけ共通した特徴があった
それは、この「世界の人類を見つけると無条件で攻撃してくる」ことだった
その時期、世界を巻き込んでの戦争をしていた各国は次々と無期限の停戦条約を結び
自国の上空に開いた孔の対応に追われることになる
孔の出現場所が広範囲に渡っていたことと戦争により戦力が減少していた状況も重なり、対応が後手に回った結果、ほんの1月の間に多くの街が破壊され莫大な数の犠牲者が発生した
膨大な数の難民が王都に流入し、すでにそこが人類最後の砦となりつつあった
異界の生物は弱った人類を執拗に追い回し続ける
無慈悲に、徹底的に、いかなる犠牲も厭わずに
そしてそれは王都「リガイス」でも続いていた
「おッ、おまえ、にッ、西の門の前、見たか?シッ、死体だらけで地面が見えなイッんだ」
「気をしっかり持て!まだ魔導士様たちが王都を守ってくれている!あきらめるな」
1人の若い兵士が、膝をついて地面に崩れた兵士を励ます
そんな彼も不眠不休で戦い続けており、自身の限界が近いことを頭の隅で理解していた
王都リガイスを囲むように展開し続けている「極大防御魔法」
防御能力を示す光こそ失ってはいないが、維持に膨大な魔力を必要とするそれが「あとどのくらいもつか?」は誰にもわからなかった
もちろん、最前線で戦い続ける兵士たちにも
だから今この瞬間、極大防御魔法の光が消えることも彼らにはわからなかった
「光が、消えた」
「魔導士様?」
「なにが、いったい」
王都に逃げ込んでいた膨大な数の民の驚きの声が悲鳴に変わるまで、数秒もかからなかった
まず最初に城壁を越えて飛び込んできたのは、翼を持つ異界の生物たちだった
城壁内側の防衛が崩れると、門戸を壊して異界生物の軍団が一気に流れ込んでくる
王都の兵士たちは異界の軍団に対し、人に使うレベルではない強力な砲撃を叩き込み、禁呪レベルの魔法をぶち込んで奴らの前線を滅茶苦茶に粉砕するが、それらは怯えることなく、同法の死体を踏み越えつつ無限に近い数を活かしてさらに侵攻してきた
「もうだめだっ、終わりだッ、全部終わりだッあああああああああああああああガッ」
「押し戻せ!民が後方に下がるまでもちこた、、、」
「痛い痛い痛い痛いいたゲブゥ」
人々の絶え間ない阿鼻叫喚がそこかしこで響き渡り、王都名物の白く美しい大通りが赤く染め上げられた
道に転がるなにもかもが、異界の生物たちが作る長大な列の行軍の前に踏みつぶされ地面に消えていく
通りの先にあるのは裕福層や王宮の入り口にあたる門だが、そこはすでに閉まっていた
その門の前には多くの逃げ遅れた民が取り残されている
彼らは口々に門を開くことを門の上にいる兵士たちに願い要求するが、門は動く気配すらなかった
その場所が西門の前のようになるのは、もはや時間の問題だろう
門の上にある回廊に立ち弩弓を構えていた兵士たちの1人が、空に向かって言った
「なぁ『異世界の勇者様たち』よぉ、聞いてるか?」
「かまえーっ!」
兵士長の号令で、兵士たちは一斉に弩弓を構える
目標は眼下にいる民の向こうから迫る膨大な数の異界の生物たちであった
「撃て――――――――!!!!!!」
巨大爆発の魔法が付与された大量の矢が放たれ、肉で出来たどす黒い津波の前面に着弾するや大爆発し、相手を次々と吹き飛ばす
だが、彼らの進軍が止まることはなかった
「次弾装填!急げー!」
「早くしろ!肉の壁が時間を稼いでいる間に!早く!」
「俺」は俺にそう言った兵士の胸ぐらをつかみ、思いっきりぶん殴った