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うそつきさる

作者: 小石沢英一

 動物だけの町、ワオワオランドに一匹のさるがやってきました


 さるの前歯は大きく突き出し、うそをつくのが好きでした。


 働き者のネズミさんの前にさるがやってきました。


「よお、いつも仕事ごくろうだな。先ほど東の木の下で、宝物をみつけてしまったよ」


 と、さるは言いました。


「へえ~、すごいですね、さるさん」


 ネズミさんは疑うことなく、さるの話を信じました。


「まだ、家には宝の地図がたくさんあるから探すのがたいへんだよ。はははっはっ」


「いいな、ぼくも宝を探したいな……」


「まあ、そのうちに宝探しを手伝ってもらうよ」


 その話を聞いてネズミさんは喜びました。


 またあるとき、さるはクマに言いました。


「この世界で一番つよいのは誰だ?」


「そりゃ、ライオンさんかゾウさんだろう?」


「ちがうね。あいつらより腕力はぼくの方が上だね!」


 さるは逆立ちをしました。


「何をしているの?」


 クマさんはさるの行動が理解できずに、首をかしげるしかありませんでした。


「ほら、この星を持っているんだぞ。こんな長く持っていられないだろ?」


 クマさんは考えました。確かに逆立を長時間をできるのはさるぐらいだが、ゾウさんより小さいし、ライオンさんのようにきばがないさるがどうやって腕力で勝てるのでしょうか。驚くばかりでした。


 またある日、町ではオオカミさんのことでウワサがたちました。


 そのウワサとは、どんな火事でもオオカミさんの吐く息で消えてしまうそうです。


 そこにオオカミさんが現れ、みんなの注目の的です。


「息で火を消したそうだね。すごーい」


 みんなは拍手しました。


 オオカミさんは照れくさそうに下を向いています。


「実は違うんです……」


 オオカミさんはボソッと言ったので声が小さく、誰も聞いていませんでした。

 

 そこで、さるは言いました。


「ぼくも息で消せるんだ」


 みんなは感心しました。


「あれは火事というより、たき火をしようとして、少し火が大きくなって、あわてて消したから……」


 誰もオオカミさんの話は聞いていなくて、注目はさるさんに集まっていました。


「それはそうと宝の地図をちょうだい?」


 と、ネズミさんは言いました。


「そんなこと言ったっけ?」


 さるの顔はみるみる真っ青になっていきました。


「忘れたの?」


「い、いや……取りに行くのがめんどくさいのさ」


「僕が家まで取りに行くよ」


「だめ! ここで待っていろ!」


 さるはそう言って、逃げるように走って行きました。


 ネズミさんはさるを追いました。


 さるのあとをついて行きますと、小さなわらの家に入っていきました。


 強い風がふけば吹っ飛んでしまいそうな家でした。


 しばらくして、中からさるが出てきました。


 さるはネズミさんが、家の前にいたので驚きました。


「こ、ここは家じゃないよ。単なる倉庫だから、なくたっていいんだ。地震で壊れようが、火事で燃えようが全然かまわないんだ」


「だよね。しかし、もっと頑丈にした方がいいよ」


「それだと、盗まれるだろう。こんなボロいところに宝の物があるとは誰も思わないだろう」


「それもそうだな……で、地図は?」


「ええっ?」


 さるは真っ青になっています。


「宝の地図だよ」


「ああ、あれね……」


「このボロ倉庫にあるんだな。探そううか?」


「いいよ。ここで待っていろ」


 さるはしばらく中に入ったまま出てきませんでした


「宝の地図あった?」


 ねずみさんは外から大きな声で言いましたが、反応はありませんでした。


「おーい!」


 さるに反応がありませんので、ねずみさんはボロ倉庫に入ろうとしました。


「あったよ」


 と、言ってさるがようやく出てきました。右手には一枚の紙切れを持っていました。


「それだね」


 ねずみさんは一枚の紙切れが宝の地図だとすぐに気がつきました。

 

「ほら、こないだ拾ったじゃなくて、これで君もヒーローだ。ほら」


「今、拾ったって言わなかった?」


「いらないのか?」


「いるよ」


「ほら」


 さるは地図をねずみさんに渡しました。


 ねずみさんはまじまじと地図を見ました。


「これが宝の地図?」


「そうだよ。けど、何もないかもしれないから」


「何もない? 宝がある地図ちょうだいよ」


「そんなの掘ってみないとわからない。最初からあるとわかっていたら、面白くないだろう?」


「それもそうだね。じゃあ、一緒に掘ろうよ」


「忙しいから勝手にやってくれ」


「それじゃ、宝が見つかったら半分あげるね」


 ネズミさんは宝の地図をもらったことがうれしかったようです。


「金持ちだからそんなのいるわけないだろう。バカが」


「そう、じゃあ、宝が見つかったら町のみんなで山分けするよ」


「どうぞ、ご勝手に!」


 そんなある日、けむりが立ち上がっていました。


 みんなで火元に行くと、わらの家から煙がモクモクとたちこめていました。


「どうする?」


「消さなくても、どこかに火が燃え移ることもなさそうだし……」


「わらが燃えて終わりだよ」

 

 みんなは火が消えるのをながめていました。


 そこにさるがあわてて戻ってきました。


「は、早く消してよ」


 さるは言いました。


「さるさんの息で消せるでしょ?」


 さるは息を吐きました。しかし、火は消えませんでした。


「どうしたの? 早くしないと燃えちゃうよ」

 

さるは何度も息を吐きましたが火は消えません。

 

「今日は調子が悪いから……だめだ」


「でも、こんなボロいから燃えてなくなっても誰も困らないよ」


「頼むから水だよ!」


「のどが渇いたの?」


「違う! 消火だよ!


 さるに言われて、ようやく消火用の水が用意されました。バケツが運ばれてきました。


 そこにねずみさんが現れました。


「それ、さるさんの倉庫だって。燃えてそんなに困らないって」


 そのひと言で、消火活動が停止してしまいました。

 

 と、その直後にさるの上に、家の柱が倒れてきました。


「わあ、重い助けて~」


 クマさんは軽々と柱をどけてやりました。


「こんな軽いのに、本当に力持ちなの?」


 そんなことしているあいだに、わらの家は燃えてなくなってしまいました。


「どうしてくれるんだ!」


 さるはもう、怒りがおさまりそうにもありません。


「でも、宝の地図が、たくさんあるからいいじゃないの?」


 ねずみさんは言いました。


「ぜんぜんよくない!」


「このあいだの地図から宝がたくさんでたよ」


「うっそ!」


 さるはまさか、道で拾ったゴミが、宝の地図とは想像もしませんでした。


「返せ!」


「金持ちだから、いらないって言ったでしょ」


「今までのは全部うそだから、宝を全部よこせ!」


 それを聞いていたみんなは怒りました。


 さるは大あわてで逃げようとして、倒れた柱につまずいて顔を地面に押しつけました。


 そのときに、前歯を一本折ってしまいました。


 それから前歯の一本ないさるはうそつきさると呼ばれ、誰からも相手にされませんでした。


おわり

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