勇者、殿下と話す
いくつか誤字がありました。すみません!
報告してくださった方々、ありがとうございました!!
「もうすぐ着きます!」
角を曲がると、大勢の人がバタバタと慌ただしく出入りしている部屋に着いた。
「ひ、人が多いですね…」
「お部屋入れない…」
執事服やメイド服の人、ラーゲル神官長みたいな白いローブを着た人…なんか、めっちゃ異世界って感じする。
人の流れが速くて、そのまま出入口付近で立ち往生していると、俺たちに気付いた第一王女が声を掛けてくれた。
「ターナ!勇者様!」
「セノン姉様!」
「2人とも、こちらにいらしてください」
セノン王女殿下に手招きされるも、人が多くて通れるところがなく、なかなか部屋に入れない。
その様子を見ていたセノン王女殿下が、近くにいる執事服の人に声を掛けた。
パンパン。
「レイターナ様が通ります。皆様、端に寄ってください」
その人が手を叩き、他の人に指示を出す。
すると、扉の周りにいた人たちがすぐに端に避けて、あっという間に中に入れる道ができた。
「ありがとう、ゼロ」
「いえ、私どもはこれで失礼します」
ゼロと呼ばれた人が一礼して部屋を出ると、その人に続くように、他の執事やメイドさんも礼をして出ていった。
そして、部屋の中には、俺と王族の人々だけになった。
一応扉の外には、護衛の騎士が2人いるらしい。
「お父様、大丈夫…?」
俺の側にいたレイターナ王女殿下が、花を手に持って、国王陛下が寝ているベッドに近づいて行った。
「ターナ、ああ、大丈夫だ」
「このお花、勇者様と選んで、ガロンヌに貰ってきたの。お見舞いよ」
「ありがとう。勇者殿も、先程はすまなかった」
「いえ、あの、何かの病気…とかですか?」
他人の俺が聞くのは良くないと思ったが、目の前で吐血して倒れられて心配だったため、恐る恐る聞いてみた。
「医者には、過度なストレスによる胃の病だと言われた」
「ストレス性の病気…何かストレスが?」
「…この――」
「勇者様、私から説明します」
国王陛下の言葉を遮ってきたのは、カノルと呼ばれていた第一王子だった。
「この国、トート国は農業国なのですが、近年実りが良くないのです。そのため、国民は皆飢餓問題に悩まされています」
カノル王子殿下はそう言い切ってから一息つき、また口を開いた。
「その他にも、近頃起こる魔物のスタンピード問題など、なるべく早く解決しなければならない問題が山積みで…」
なるほど、国政によるストレスか。国のトップは大変だな…。
「それで、藁にもすがる思いで勇者様を召喚させてもらったんです」
「俺を?」
「勇者がいること、イコール国の強さになりますので」
まあ、歴代の勇者ならそうなんだろうけど、俺は役に立てるかな?あんまり期待しないでもらいたい…。
「これで、隣国のゲノン国やオークレー国も攻め込んでこないと思います」
「攻め込んでくる!?」
え、戦争ってこと?戦争が普通にある世界なの!?いや、日本が平和過ぎなだけか、他国は戦争してるもんな…。
「戦いになったら、貧乏国家のうちに勝ち目はありませんので…」
俺の思った通り、この国は貧乏だったらしい。城なのに、全然装飾品が無いのにも納得がいった。
「あ、私のことはカノルとお呼びください。敬称はいりません。うちではあまり豪華なことは出来ませんが、精一杯のおもてなしをさせていただきます」
そう言った後、カノルは深々と頭を下げた。
「俺もシンで良い。言葉遣いも、普段と同じで大丈夫だ。勇者って言われても、16歳の普通の高校生だからな」
「わかった、シン。改めて、トート国に来てくれてありがとう」
カノルから差し出された手を、俺も握り返した。
「ターナも、ターナで良いよ!」
俺とカノルの手の間に、ターナも手を出して言ってきた。
「ああ、わかった。よろしくな、ターナ」
その後、カノルやターナ以外の殿下たちの名前も、敬称なしの愛称で呼ぶことに決まった。
部屋で穏やかな空気が流れる中、外からドタバタという大きな足音が聞こえてきた。
「外が騒がしいな」
バンッ!
「し、失礼します!国王陛下、大変です!ゲノン国が攻め込んできました!」
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