勇者、兄弟仲を知る
「ふぅ、あと、どのくらい、ですかっ」
「ドラナ、もうへばってるのか?まだ全然だぞ」
「ひぇぇ」
俺たちはゲノン国軍に夜襲を仕掛けるために、ヌフィダンを進行中である。
なぜ俺も戦争に駆り出されることになったか。それは、遡ること2日前――
ドンドンドン。
「ん…」
「シンー?入るぞー」
異世界に勇者として召喚され、花に触ろうとして死にかけ、初めて魔法を使いくたびれた俺は、案内された客間のベッドで深い眠りについていた。
「朝食にも来なかったが、まだ寝ていたのか」
大きな音を鳴らして部屋に入って来たのは、この国の第二王子、オルネースだった。
「昨日…疲れた」
「いつの間にかいなくなったと思ったら、訓練場で魔法の練習してたんだってな。ユヴァトから聞いて驚いたぞ」
オルには魔法の才能がなく、諦めて剣の道に進んだそう。
貴族の大概は魔法が使えるため、第二王子に魔法の才が無いというのは周りからの非難が凄かったそうだ。
その当時の体験をバネとし、剣の訓練を人一倍頑張り手に入れた第二騎士団副団長の地位は、誇って良いものだと俺は思う。
「カノル兄さんは昔から――…」
朝、もう昼になるがオルに起こされたのは、カノルのいる執務室に俺が呼び出されたからだった。
その道中、オルは他の殿下たちの色々なことを話してくれた。
初めて会った時は少し怖いイメージだったが、本当は兄弟想いの優しい青年だった。
「レイターナ様!走ってはいけません!」
その後もオルの兄弟話を聞きながら歩いていると、後ろからバタバタとした足音と聞き慣れた声が聞こえてきた。
「おはよう!シン!お寝坊さんだね」
「ああ、おはよう」
「ターナ、兄様もいるぞ」
隣にいるオルには目もくれず、末っ子王女は俺目掛けて走ってきた。
「シン、これからターナと遊べる?」
「ごめんな。今すぐカノルの執務室に来るよう言われてんだ」
「そっか…なら仕方ないね」
「ターナ、兄様も――」
「じゃあその後は?」
隣から凄い視線を感じながらもターナと話していると、アンナから勉強の時間だと言われ、ターナは渋々帰って行った。
昨日の今日で随分と懐かれたな…。さっきのオルの話だと、この王女は人見知りでシャイだって聞いたけど。
「早く行こうか、オル」
「…」
なぜか不機嫌なオルに連れられ、無事にカノルの執務室に着くことが出来た。
トントントン。
「カノル兄さん、入るよ」
ガチャ。
廊下と同様、執務室の装飾品も必要最小限の物しかなく、書類だけが積み重なっている質素な部屋だった。
「おう、シン。よく眠れたか?」
積み重なった書類の中からカノルの声がしたが、本人の姿は確認できない。
「今そっち行…うわあ!」
バサバサバサッドサッ!
カノルの声がして1つの山が動いたかと思うと、その近くにあった山の書類も凄い勢いで雪崩を起こし始め、あっという間に床が見えなくなってしまった。
「だから整理したほうが良いと言ったのに…」
「片付けは昔から苦手なんだ。お前も知ってるだろ」
「苦手って…未来の国王が何言ってるんだよ」
「片付けは補佐に任せる」
「これが次期国王だなんて、国民が可哀想…」
「はあ!?」
「ストップストップ。とりあえず片付けようか」
口論に発展しそうだった2人を止め、床に散らばった書類の片付けを手伝う。数十分してやっと元の山々の状態に戻った。
オルはまだ片付けると言っていたが、そうなるといつまで経っても埒が明かないため、切り上げて俺への要件を聞くことにした。
応接用のソファーに腰掛け、ようやく話が始まった。
「単刀直入に言う。ゲノン国のと戦争に、シンの力を貸してほしい」
《お知らせです》
次回投稿分の原稿が出来上がっておらず、明日の投稿を来週末に延期させていただくことになりました。
完っ全にこちらの事情です!ごめんなさい!!
必ずいつか埋め合わせはしますので、ご理解くださるとありがたいです…!
最後に読者の皆様へ!
今作も数多い作品の中、お読みいただきありがとうございました!
いいねや感想など、一言でもいいので寄せてもらえると嬉しいです!!




