プロローグ
キーンコーンカーンコーン
キーンコーンカーンコーン
終わりを告げるチャイムの音が、学校中に鳴り響く。何の終わりか。それは、
「「「テスト全部終わったー!」」」
二学期の期末テストだった。
テストが終わった瞬間から、教室は既にお祭り騒ぎ。放課後にどこへ行くかの話で盛り上がっていた。
その中で1人、テストの終わりに喜んでいない人がいた。その人物とはこの俺、小暮信だ。なぜなら、
「今日からまたバイトだ…」
「やっぱりか。信も遊び誘おうかと思ったんだけどな」
俺の呟きを拾って声を掛けてきたのは、仲の良い友達の悠斗。
「悠斗、残念ながら俺にはそんな暇も金もないんだよ…」
「そうだったな」
俺がバイトに明け暮れる日々を送っている理由は、家に借金があり貧乏だからだ。
俺はバイトを3つ掛け持ちしているが、母親の仕事量はもっと多い。それでも返せきれないほどに、亡くなった父親の借金があった。
「借金返せてるのか?」
「いや全く。來乃が春から中学だから、ほとんどそっちに持ってかれる」
「なるほど」
來乃とは、俺の6つ下の妹のこと。小学6年生で、来年からは近所の中学校に通うことになっている。
「なあそれより、悠斗テストできたのか?」
「全然できてなねーわ!でも、どうせ信は俺なんかと違って、今回も1位だろうな」
「1位じゃなくても、3位以内ならいい」
「3位に入るだけでもすげーよ」
俺らの通う高校は、成績上位者数名を特待生として、学費が免除される制度がある。
家のためにも、俺はテスト1週間前からバイトを休んで、勉強に専念していた。
「それじゃ、そろそろバイト行くわ」
「おー、今日はどこ?」
「ファミレス」
「なら後で昼行くから、またな」
「おう」
悠斗と別れて、教室を出る。昼のラッシュに間に合うよう、急いでバイト先のファミレスに向かった。
「あ、先輩!お疲れ様です。今日からまた入ります」
「信くん!良かったぁ」
背後から声を掛けると、振り返った先輩は何故か涙目になっていた。理由を聞くと、風邪で休みの人が2人もいるらしく、ホールが大変なのだそうだ。
「じゃあ、俺ホール入りますね」
「うん、お願いね」
既に配置に入っているスタッフに声を掛け、自分もホールに出て接客を始める。
「よお、信。来てやったぞ」
するとしばらくして、見慣れた顔のお客がやって来た。
「悠斗、ほんとに来たのかよ」
「当たり前だろ」
「…4名様ですね、お席ご案内します」
悠斗の他にも、今日は多くの学生が来店していた。俺はラッシュが過ぎた14時頃にバイトを上がった。
「信くん、早めに来てくれてありがとね」
「いえ、混むだろうと思ってたので。お先失礼します」
遅い昼食に賄いを食べてから、今日のバイトを上がって帰路についた。
俺のもう1つのバイトは家庭教師の仕事で、家の近所の中高生に勉強を教えている。俺の成績が良いのを知って、時給1500円で近所のお母さんたちから頼まれたのだ。
「あら、信くん。今バイト帰りかしら?」
帰り途中、俺に声を掛けてきたのは、国語と英語を教えている中野稔梨さんのお袋さんだった。
「中野さん、こんにちは」
「今日ね、稔梨のテストが返ってきたのよ。次来た時、見てもらえるかしら?」
「わかりました。では、稔梨さんに、分からない所は飛ばして良いので、もう一度解いておくよう伝えてもらってもいいですか?」
「ええ!わかったわ」
道端で軽く次回の授業内容を相談してから、中野さんと別れて数軒先にある自分の家に入る。
「ただい…え?」
家に入った瞬間、俺の足元に、漫画で見るような光った魔法陣が現れる。
「なんだこれ…うわっ」
より一層強く光った時、俺は魔法陣の中に吸い込まれた。
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