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バス停・オブ・ザ・デッド ~ボクはゾンビゲームにTS転生した!  作者: どくどく
三章 二律背反 ~生者と死者 男と女 虚(げーむ)と実(げんじつ)
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ボクは今回いいトコなし!

 洋子ボクが囮になり、福子ちゃんがバリケードを無視するように移動して警察ゾンビに攻撃を加える。


 当たり前だが、これでいきなりゾンビが瓦解するわけがない。数体は倒したがゾンビの数は多い。加えて恐怖などの感情のないゾンビはダメージを恐れずにこちらを振り向く。二秒後には洋子ボクも福子ちゃんもソンビの総攻撃を受けるだろう。


「どんどん行くよー!」


 大上段にバス停を振りかぶり、一気に振り下ろす。バス停の重さと純粋な洋子ボクの技量。それが加わったハンマーフォールならざるバス停フォール。この一撃で倒れるほど脆い警察ゾンビではないけど、それでもダメージは与えられる。


 当たったという感触が脳に伝わるころには、既に洋子ボクの重心は動いている。スニーカーでしっかり足を踏みしめ、腰をひねってバス停を振り回す。横なぎに払われたバス停の駅名表示板が警察ゾンビの胸を割いた。それがとどめになったのか、崩れ落ちる。


「闇に生きる蝙蝠の舞、腐ったその目で追いきれますか?」


 福子ちゃんは言うと同時に欄干からパトカーの上に移動し、そのままパトカーで形成されたバリケードの上を走り抜ける。黒のドレスが翻り、ふわりと宙を舞う。それはまさに蝙蝠の舞。黒い姫のダンスが如く。


 移動しているので眷属への命令はできないが、そのことを考慮に入れて一〇匹のコウモリには防御命令をしていた。移動途中で何体かのゾンビが福子ちゃんに発砲するが眷属が受けたらしく、福子ちゃんに弾丸が当たった気配はない。


 いい感じで攻撃のタイミングが乱れてきた!


 ゾンビは人間のように思考しない。一定の判断基準に則って動く。


 推測だけど、このゾンビに命令したのは『バリケードに近づく敵を撃て』『Xm以内に近づけば警棒で殴れ』というモノだろう。後はグループ分けか。この状況だと理に適った命令だ。


 だけどそれは『近づいたハンターを優先的に狙う』ことだ。最初は近づいた洋子ボクを、そして次に近づいた福子ちゃんを。


 こちらにある程度の注目がむいているのなら、伏兵を仕掛ける余裕が生まれる。


「な、何とか来れたデスよ……! バス停の君はなんであんなのホイホイ避けれるデスカ!?」


 バリケード付近までは知ってきたミッチーさんがそんなことを愚痴る。洋子ボクと福子ちゃんがゾンビ達のターゲットになっている間に走ってきたのだ。当然ミッチーさんにも銃弾が飛んだのだろうが、その数は洋子ボクよりも少ない。それでもノーダメージというわけにはいかなかったようだ。


「弾丸を見て避けるんじゃないよ。銃口とか視線とか腕や足の向きを見て弾道を読み切るんだ」

「人間の言葉を喋ってほしいデス!」


 むぅ、折角コツを教えたのにばっさり切り捨てられた。解せぬ。


「じゃあ、行くデスヨ! えたーなるふぉーすぶりざーど!」


 言ってミッチーさんはガス噴霧器のノズルをバリケードの向こう側に向ける。白いガスが一気に噴霧され、そこに陣取っているゾンビを低温で包み込む。凍結による行動制限と徐々に体力を奪われる状態となった。


「あいてはしぬ!」

「いや、死なないから。ゾンビだから元々死んでる? でも密集しているところに広範囲ガスは効果的だね!」


 グループごとに陣取っていたゾンビ達は、範囲を襲う凍結ガスをまともに受けてしまう。密集していたこともあり巻き込んだ数は多く、目に見えて相手からの弾幕は減った。


 知恵が少しでもあるのなら、ここでいったん散開するだろう。あるいはミッチーさんを脅威と感じて銃口を向けたかもしれない。


「どりゃー!」


 洋子ボクはバリケードになっているパトカーにバス停を叩き込む。派手な音と共にフロントガラスが割れ、派手な音と共にボンネットがへこむ。それを聞いたゾンビ達は『バリケードに近づく者』と認識したのだろう。銃口をこちらに向け、警棒を構えて殺到する。


「マジでバス停の君の言う通りデスネ。命令を聞く()()みたいデス!」

「そういうこと! 脳みそが腐ってるから、碌な思考が出来ないのさ!」


 AI制御されたゾンビの知能。思考しないゾンビは単純なルーチンにはまりがちだ。優先順位を使ってコントロールすればこういう芸当も不可能ではない。


 洋子ボクと福子ちゃんでターゲットをコントロールし、決定打を打てるミッチーさんを攻撃範囲内まで誘導する。あとはミッチーさんがガスをばら撒き、バリケード付近のゾンビを止めていく。


 ミッチーさんが凍結で相手を止めれば止めるほど、洋子ボクや福子ちゃんを狙うゾンビの数が減り、動きやすくなる。洋子ボクは好きを見てはパトカーを攻撃し、バリケードを壊していく。そして――


「この数なら、ひとりで十分。『吸血妃ヴァンピーア・アーデル』の活躍をご覧あれ、先輩」


 ある程度数が減ってくれば、パトカーの上に乗っていた福子ちゃんも攻撃に参戦できる。浮遊ブーツの効果でふわりとバリケードの向こう側に降り立ち、シルバーソードと眷属を用いて戦端を切り拓いていく。


「あー! ずるい福子ちゃん! バリケード破壊と同時って言ったじゃないか!」

「ふふ。ヨーコ先輩が出るまでもありません。そこで指をくわえていてください」

「ボクも無双で暴れたーい! ああ、もう!」


 凍結が解除されたゾンビ達が福子ちゃんを襲う。しかし浮遊ブーツとなれた動きで位置の優位性を保ちながら眷属を放ち、時には目を見張るような動きでゾンビをを切り裂いていく。悔しいけど、バリケードを破壊するより先に決着がつきそうだ。


「もー。二人とも互いにいい所見せたいからって張り切りすぎデス」

「べべべべべべ別に私はいい所を見せたいわけではありません! その、ヨーコ先輩の好敵手リヴァーレとしてその差を示そうと!」

「えー。ボクは色々見せたいし見てほしいな。最強無敵で天上天下なボクの戦う姿を! バス停で戦うセーラー服マフラー戦乙女って感じで!」

「……なーんでこう、バス停の君は真逆方向にすれ違うデスカネー」


 どっと疲れた、という表情でミッチーさんが肩をすくめる。何のことやら。


 ともあれ、戦いの主導権は確かにこちらが握っていた。数の上ではゾンビ側が多いけど、戦いの流れは洋子ボク達が掴んでいる。このまま一気に攻めれば――


「陣形ヲ整エロ!」


 銃声と共に、カタコトの言葉が響く。警察ゾンビの一人が空砲を打ち、ゾンビに檄を入れた。こちらがコントロールしていたゾンビの動きが、あちらに奪われていく。


「あのゾンビがこの部隊の統率者か――!」


 統率者リーダー。前にも言ったゾンビ部隊を統率する存在。おそらく警察の上官(と言っていいのかどうかよくわからないけど、とにかく上の立場)なのだろう。命令共に警察ゾンビに強化バフがかかっているのも分かる。攻撃力とバッドステータスへの耐性増加あたりか。


 どこかのボーナスステージよろしく車を破壊し、バリケードの向こう側に踊り込む洋子ボク。少し遅れてやってくるミッチーさん。


 しかしほぼ戦端は開けていた。福子ちゃんがあらかた片付けてくれたのだ。凍結して陣形が乱れて居たりしていたとはいえ、三〇を超えるゾンビをこの時間で倒すのは、流石だ。


「遅かったですわね、お二人とも。もうダンスの時間は終わりですわ」

「そーだね。今回はボクいいところなしかな。段差がある場所だと、浮遊ブーツが際立つなあ。ミッチーさんのガスもすごかったし、何よりも――」


 ため息と同時に銃声が響く。


 警察ゾンビの統率者。その頭が吹き飛び、地面に倒れたのだ。


統率者リーダーは音子ちゃんに奪われちゃうし」

「あ。マズかったですか? ごめんなさい音子空気読めなくて」


 統率者リーダーがいた背後には、黒猫フードに身を包んだ音子ちゃん。道が出来たと同時に隠密で近づき、背後から暗殺効果を持つデリンジャーで頭を撃ったのだ。


「いいえ。ヨーコ先輩は拗ねてるんです。気にしないでください」

「むしろグッジョブよ。バス停の君、結構被弾してるから。これ以上無茶させたら危険領域ネ」


 む。まだまだ大丈夫だい。……後二発ぐらいは。


「まあいいさ。それじゃあ残りを倒そうか。後片付けはしっかりとね!」


 ――それから一〇分も経たずに、大橋入り口のゾンビ達は掃討された。


拙作を読んでいただき、ありがとうございます。

気にいっていただけたのなら、評価をいただければ幸いです。


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