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バス停・オブ・ザ・デッド ~ボクはゾンビゲームにTS転生した!  作者: どくどく
三章 二律背反 ~生者と死者 男と女 虚(げーむ)と実(げんじつ)
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ボクらは装備を整える

 待つこと三時間。ついにそれは完成する。


 ……まあ、完成すると言っても『流体金属』に刺激を加え、特定のアイテムに変化させるわけだから厳密にはコピーなのかもしれない。


「人間は不便だな。俺に任せてくれれば、どんな武器でも一瞬で作ってやるのに。

 どうだ、任せる気はないか?」

「それ、任せたら流体金属で新しい身体作って逃げるフラグだよね?」

「そ、そそんなことはないぞ!? お、俺は、そうだ、お前達に俺の凄さを教えようと!」


 待っている間、そんな会話をぬいぐるみ(カオススライム)としていた。こいつ、分かりやすいなぁ。


「お前達だっていろんな武器を瞬時に切り替えられるとか強いと思わないか? ほら、魔法少女のような変身も可能だぞ!」

「あー。それはそれでいいかも。っていうかキミ、そう言うアニメの趣味があるの?」

「魔法少女なら街中日常解決系から美少女戦士なバトル物まで全網羅できるぜ。ポーズも変身シーンのバンクBGMも完璧だ」

「……いや、そこで熱くならなくてもいいから」


 改めて、こいつが元人間なのだと理解する。そして少しドン引きする。


「魔法を使って人助けをする人情系は、魔法少女にキャラクター性を加えることで少しずつコケティッシュになり、対象の年齢層も少しずつ大人をターゲットとし始めた。そう、魔法少女多様化の走りだ。

 そして多様性の中から戦う魔法少女が生まれ、そこから『バトル』と『キャラの関係性』という柱を軸に魔法少女モノは発展していく。同時にスピンオフやダークな展開も取り入れられ、魔法少女闇鍋時代に――」


 ……少しじゃなく、ものすごくドン引きした。相手するのがメンドくさくなったのでぬいぐるみをカバンに押し込み、ふたを閉める。


「洋子おねーさん。出来たみたいですよ」


 そのタイミングで音子ちゃんが声をかけてくる。


 その手のひらに握られた者を見て、洋子ボクは感嘆の声をあげる。


「おー。再現度高いねー」

「本物見たことないんですけど、これ凄いんですか?」


 音子ちゃんの手のひらに収まっているのは、どこか時代を感じさせる銃だ。木の台座に真鍮製の銃口。火薬を銃口から入れるタイプだ。


「うん。 フィラデルフィア・デリンジャー。暗殺効果を持つ銃だよ」


 曰く歴史上偉大な大統領を暗殺した銃として名高い フィラデルフィア・デリンジャー。この銃は単発しか撃てず、かつ一発撃ったら弾を込めるのに時間がかかるのだが、特殊な条件を満たせば高確率で敵を一撃で葬り去る『暗殺』効果が生まれるのだ。


 その条件は『隠密状態で気付かれずに』『背後から撃つ』ことである。暗殺効果がなければ、拳銃としてもあまり火力がないので敬遠されがちだが、音子ちゃんならこのスペックを十全に生かすことが出来る。


「音子、あまり戦闘とか……背後から撃てば、いいんですか?」

「そそ。まあ選択肢の一つとして思っておいて。出来ることが増えればそれだけでいろんな世界も見えてくるから」


 使い勝手の悪さもあって、これから毎日レッツ暗殺というわけにもいかないが、もしもの時に出来ることを用意しておくのは悪くはない事だ。


「えたーなるふぉーすぶりざーと!」


 そして歓喜の声をあげるミッチーさん。


「むぅ、こういったんだから死んでくれないと困るデス。日本のことわざでいう所の様式美ってやつデスよ」

「いや死なないから。やっぱりそれにしたんだ。ミッチーさん」

「イエス! えたーなるふぉーすぶりざーと、ゾンビはしぬ!」


 ミッチーさんが背負っているガス噴射器。『EFB』とサインされたそれは、名前の通り『凍結』のバッドステータスを持っている。凍結の効果は『時間ごとにHPが減少』『動きが鈍る』と言ったかなり有効的なバッドステータスだ。


 なお手に入れたのはそのガスの配合レシピという形だ。なので噴霧器の中のガスがなくなっても、補充できる。


「死ぬんですか、洋子おねーさん。お悔やみ申し上げます」

「死なない死なない。『EFB』の説明文フレーバーだから。まあ、実際攻撃力高いから雑魚掃討にはうってつけだね」

「ああ、念願の武器が……。これでもう引退するね。お疲れさまデシタ!」


 念願の武器が手に入って、歓喜するミッチーさん。いや、引退されたら困るんだって。


「引退するんですか、美鶴おねーさん。今までありがとうございました」

「しないデスよ。でもMIKADOに通う理由は消えましたネ。日本のことわざでいう所の燃え尽き症候群デス」

「でしたら思う存分使えばいいのです。武器は使ってこそ、ですわ。使わない武器は宝の持ち腐れですわ」


 言って現れたのは福子ちゃんだ。いつものゴシックドレスだけど、黒のブーツを履いている。洋子ボクがお勧めした浮遊ブーツだ。その名の通り地面から少し浮かんで移動できる。で、この真価は――


「これでいつでも高い所を陣取ることが出来ますわ」

「オゥ! つまり高い場所から高笑いして現れることが出来るのデスネ! 悪の吸血貴みたいデス!」

「……まあ、それに憧れたのは事実ですが」


 このブーツの真価は、ジャンプできる高さが強化される。障害物などを高さを無視して移動できることだ。空を飛ぶことはできないが、壁近くでジャンプすればその壁の上までジャンプできる。よほど高い壁――ゲーム的メタな事を言うとエリアを阻む壁とかは無理だけど、障害物ぐらいは普通に超えられる。


「ヨーコ先輩に言われてこれにしたんですけど……強い武器や防具じゃなくていいんですか? 火力を高めた方が皆さんに貢献できると思いますけど」

「いやいや。場所の確保は重要だよ。殊、福子ちゃんみたいなスタイルだと特に」

「はあ……。まあヨーコ先輩の言う事ですから信じますけど」


 不承不承ではあるが納得してくれる福子ちゃん。


「……それで先輩は、やっぱり()()にしたんですか?」

「もちろん! これ以外に選択肢なんてないよ!」


 言って洋子ボクが見せたのは、小さな人形だ。使用者のDNA情報を入れれば、人形内のソンビウィルスがそれを増幅し……。


「ででん! ボクのコピーの完成だ!」


 洋子ボクの隣には洋子ボクそっくりの人型がいた。名前はシャドウワン。自分とそっくりの等身大人形を作ることが出来るのだ。服や装備までコピーするのは、御愛嬌。喋れないけどポーズやダンスなどの簡単な動きもできる。


 戦闘力は皆無だけどキャラ一人分程度の硬さを持つ障害物になってくれる。一日一回しか使えないけど、やられても勝手にカバンの中に戻ってくる便利仕様だ。……もしかして、呪いの人形なのかも?


 そしてなによりも、


「ボクの可愛さをここまで再現できるのはイイよね! この柔らかさも、このキュートさも、このぷにぷにさも! あーん、ボク最高!」


 洋子ボクのシャドウワンに抱き着き、その感覚に喜ぶ洋子ボク。これだよこれ! 自キャラを抱きしめる! こんなことが出来るなんて夢にも思わなかった! あああああああん、僕もう死んでもいい! 転生しているんだから死んでるんだけど!


「控えめに言って、キモいデス。バス停の君」

「じ、自分に自信があるのは、いいことですよ。エヘ、エヘヘ……」

「……うう、まさかアイテムに嫉妬することになるとは思いもしませんでした……!」


 ミッチーさん、音子ちゃん、福子ちゃんが呆れたような、ちょっと悔しそうな声をあげる。


「他の加工品で武器や装備も強化できたし。心機一転で頑張るぞ!

 今朝こんなニュースも届いたしね!」


 洋子ボクが手にしたスマホに表示されてるのは、ハンター用のニュースサイト。

 そこには今朝届いたばかりのニュースがあった。


『北区警察の警察ゾンビ、大量増加! 街を占拠!?』




拙作を読んでいただき、ありがとうございます。

気にいっていただけたのなら、評価をいただければ幸いです。


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